沢山沢山、言葉を知っていても。
使わなければ何にもならない。
黙っていても判るなんて言うのは都合のいい錯覚で
自分の中にただ閉じこもっているのと同じ事。


もっともっと、話しておけばよかった。
失った後でそう思っても遅いのだと今更気づく。
もっともっと、喧嘩をしておけばよかった。
些細なことでも何でも、思い浮かぶままに。


少し前まで手の届くところにいたその存在。
今はもうそこにはなく、
残された事さえもまだ実感できていない。
傍に在ればいいのにと願う空しさも
まだ悲しみを伴わない。

何から昇華していけばいいのか、
それすらも思い浮かばず
ただぼんやりと時の過ぎるに任せている。


泣けばいいと、泣いていいのだと言われても。
そうする事は当たり前のことなのだと諭されても。
泣かないのではなく、泣けないのでもなく。
どうしたら泣けるのかが判らないのが本音で。
立っているのか座っているのかさえも時々判らなくなる。
それはまるで、泡沫の大地に立っているよう。
足元から全てが消えたとしてもきっと気づかない。
そんな不安定な感覚が続いている。


そんな日々の中で、君の事を想う。
浮かぶのは君へのいくつかの問いかけといくつかの言葉。
それらは全て君が隣に在った時に聞かなければいけなかった事柄。
言わなければいけなかった言葉。
何一つ聞けず、言わず、失って初めて紡ぎだされたもの達。
伝えておかなければいけなかったもの。


今更だろうか?
それを口にしようとするのは。
言葉に乗せようとするのは。
君に届くのだろうか?
それを口にすれば。
言葉に乗せれば。


『愛しています』
今も。誰よりも、何よりも。


『愛してくれていましたか?』
あの頃。君は俺を。


『幸せでした』
君と過ごした時間全てが。


『幸せでしたか?』
俺と過ごした時間全てが。


返らない答えを待つのは我侭だろうか。
届かない声を届けようとするのは無茶なのだろうか。
それでも。
伝えなければならなかった言葉と、
訊ねなければならなかった言葉を抱え、
泡沫の大地に立って。


ただひたすらに。


君を想う…………。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

――――――― キ ミ オ モ フ ―――――――

3年前の旦那の一周忌目前に気持ちの整理も兼ねて書いて、自分のサイトに載せてたものです。書いた本人は女ですが男性視点なのでKAITO兄さんをテーマキャラにしてみました。
絵があったらどうだろう?曲がついたらどうなるだろう?そんな好奇心もあって、若干修正をしつつ、こちらに転載させていただきました。思い入れが結構ある作品ですので、改変についてはメッセージ等でご相談ください。
使っていただければ幸いです。

閲覧数:184

投稿日:2008/10/17 10:18:41

文字数:907文字

カテゴリ:その他

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  • すぐるや

    すぐるや

    ご意見・ご感想

    読んでいて思わず涙が溢れました。
    思いが詰まったとってもとっても大切な思いが詰まった詞だと思います。
    ブックマークさせていただきます。
    がんばってください、笑顔ですごしてくださいね。
    素敵な、って言葉は違うかもしれませんが、良い歌をありがとうございます。

    2011/03/13 14:36:56

    • そうげつ&紅月なお

      そうげつ&紅月なお

      すぐるや様

      背景画像を拝借させていただいているのにブクマまで…Σ
      こちらこそ美麗画像を使用させていただき、ありがとうございます。

      この詞を最初に書いてから、6年が経過しようとしています。
      今でも亡くなった旦那が一番、当時幼かった子供達も、今は17歳、14歳、13歳になり、笑いながら旦那の思い出話をしている次第です。

      また画像をお借りする事もあるかと思いますが、その折はまたよろしくお願いします。

      2011/03/14 22:09:58

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