紺と白を基調にした、王道のセーラー服を身にまとい、少女はベットに座っていた。
赤いタイを胸の前で結わえ、スカートを膝上に。その制服以外にも、少女の周りには様々な、一般的には「コスプレ」と呼ばれる服が散乱していた。
今回の相手はコスプレをさせることに悦びを感じる、というタイプだったどうしてなのかは少女には見当もつかなかったが、おそらく倒錯的な気分に陥るのだろう、と自己解釈して満足する。
「やあ」
「お久しぶりです。」
数分してスーツを着た、サラリーマン然とした男が姿を現した。
二人はその短い言葉だけで通じる程の回数あっているのか、そのまま男は少女の隣に腰掛ける。
男は中小企業で平社員をやっているという。不況のせいかボロアパートで貧乏生活を送っているらしいが、少女は自分に渡す金があるならそれを使えばいいのに、と至極当然のことを考えていた。
男は少女の首筋に顔を近づけると、そのままあざを付けるように吸い付く。
ん、と声を漏らし身じろぎしながらも、少女の思考はいたって冷静だった。
「ちょっと……がっつきすぎ、ですよ」
唇を話した後、少女は艶やかにほほ笑む。それは少女、というより女性のものだった。初々しさやかわいらしさとはかけ離れた、人を惑わせ虜にする笑み。
その笑みに惑わされるまま、ゆっくりと溺れていこうとして、
「……あれ?」
溺死する前に、男ははたと止まった。
「これ……彼氏からの?」
「え?」
男は少女の首筋に光る指輪に目を向けた。首に下げれるように加工されたそれは、金属ではあるが本物には到底届かない。けれど、それは少女にある忌々しい約束を思い出させるに等しい品物だった。
かつて自分がおにいちゃん、と慕ったひと。
いわゆる初恋、というものだ。
自分にも幼い、無邪気で純粋な心を持っていた時期があったのか、と懐かしむとともに、じくじくと何とも言えない感情が同時ににじみ出てくる指輪を、今まで意識的に見ないようにしていた。
―-子供の頃がうらやましい?馬鹿馬鹿しい。
「……外して」
「え」
男が、呟く。
その目は氷山さえ一瞬で溶かす様な激しい敵意と、水さえ一瞬で凍てつくような冷たさをもつ――危険な瞳だった。
ぞわ、と少女の背筋に悪寒が走る。
男はもう一度、少女の首筋に近づける。
今度は唇でなく、手を。
そして、力の全てをもって、
ブチリ、とそれを引き裂いた。
引き裂かれたペンダントはあっけなく少女の膝の上に落ちて、少女は身動き一つしなかった。
身動き一つ、取れずにいた。
―-こいつ、は。
少女は呆然とした頭で考える。
――まさか私に、本気で恋しているのか?
初めての事態に、少女の思考は追いつかない。
この仕事に情はない。
愛はない。
愛情なんてない。
あるのは悦楽だけだ、と割り切って。
インモラルアクトレス
第2弾。
ちょっと置いていきます。
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