私は、静かに903号室の病室のドアノブに手を掛け、ドアをノックした。
三回叩いた後、向こうから静かな声が「どうぞ」と答えた。
ドアは、驚くほど軽く開いた。
その向こうには、
「やぁ、よく来たね。‘私’」
やせ細った女性――未来の私の姿があった。
「――未来の、‘私’」
その女性は、とても未来の私とは思えないほどに弱っていた。
酸素マスク(?)をつけ、心電図の機械から伸びるパイプが、細くなった腕に繋がれている。
それでも、自分だということは分かっている。
未来の私がどれだけ変わっていようが、自分のことなのだから。
「ねぇ…」
私は未来の自分に言いたいことが沢山あったはずなのに、いざこんな形で対面となると、何を言えばいいのか分からない。
「…何も言わなくてもいい。」
「え…?」
「自分が何を言いたいのかは分かっているさ。
元の世界に、50年前の世界に帰りたいんだろう?」
「…うん、でも」
「そう、今私がすべてを教えればきっと…今日死ぬ運命だって、変えられるだろうさ。」
「…」
「でも今の私には、そんな長い話をすることはできない…
私はもう、永くはない。もうすぐ死ぬんだ」
「…おばあちゃん…」
「そうかたくならなくてもいいさ。自分のことなのだから。
でも、一つだけ、語らせてもらうよ」
そう言うと未来の私は、ゆっくりと話しだす。
「これから‘君’は、何度も辛くなる。
何度も何度も後悔し、傷つき、泣くだろう…。
でもね、その一つ一つを大事に噛みしめていけば、時が経つほどに手放しがたくなるんだよ。
どんなことがあろうが、自分の人生、貴重なものだからね。
だから…何も知らずに、このまま帰りなさい。
今の私は…これでもちゃんと、幸せだから」
「…本当に、それが幸せな人生なの?
夫は先に死んで、歯並びは悪いし、誰にも見守られずに、独りで死ぬなんて」
「…この先、いろいろなことを君は経験する。その時に、自分の人生は幸せだと、感じることができるよ」
「…」
「それに、タイムスリップなんて、やろうと思ってできることじゃないよ。
他の人には無い、自分だけの誇れる経験になる」
「…」
だんだん、未来の私の声が、途切れ途切れになり、小さくなる。
「だから、決して自殺しようなんて、悲しいこと思ってはだめだよ。
不治の病で、死にたくなくても…死んでしまう人だって、居るんだから、命があることに、ありがとうって思いなさい」
「…お、おばあちゃん…」
「大丈夫…さ、‘私’は平気だ。独りじゃない。
それに、‘君’には――沢山の仲間が、居る、から…
孤独…では、ない、から…」
その言葉を最後に、――未来の私は、動かなくなった。
‘私’しか居ない病室に、
命の終わりを告げる無機質な音が、静かに、それでも長い時間、響きわたった。
クワガタにチョップしたらタイムスリップした10 【解釈小説】
次回が最終回。
本家様 http://www.nicovideo.jp/watch/sm14991849
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ご意見・ご感想
姉音香凛
ご意見・ご感想
うわああああああああああああああ(ry
お、おばあちゃああああああああんn←
クワガタチョップって何回聴いてもおばあちゃんの台詞で感動する(´;ω;`)ブワッ
ってか夫が死んだって曲の中にあったっけ?((おい
え、これ最終回じゃないの?←
・・・最終回楽しみにしておるぞい!
2011/10/22 07:26:34
ゆるりー
香凛さんメッセありがとうございます!
おばあちゃんがーーーーーーーーーーーーーーー←
おばあちゃんのセリフでバスタオルいりますよね(ぇ
夫が死んだっていうのは私のオリジナルです。
ほとんどオリジナル設定です☆←
これまだ最終回ではないですよ。
だって「こぼした涙がクワガタに」ってまだですし。
それに、元の世界のがくぽさんたちとの問題もまだ片付けてはいませんし((
…なんか凄いプレッシャー。
2011/10/22 09:02:23
アストリア@生きてるよ
ご意見・ご感想
ああああああああああああああああああああああああああ←ww
未来の私っ!てかグミっ!!
さりげなく「歯並びも悪いし」って言ったのは笑った…ww
最終回楽しみにしてるよっ!!頑張ってねー!!
2011/10/21 20:48:22
ゆるりー
アストリアさんお久しぶりです。メッセありがとうございます。
未来のグミさんがーーー!
タイムスリップしたグミさんがーーーーー!←
さりげない「歯並びも悪いし」で笑っただと…?だってコンプレックスだから気にしてるじゃん。
今回、笑いの要素は無いと思ってたのにww
最終回がんばります。いつになるかは分からないけどねっ!←
2011/10/21 21:06:58