「上司にまた怒られちゃった」
「それは大変。僕と一緒にまた頑張りましょうね」

KAITOはパソコンの中にあるVOCALOIDというアプリケーション・ソフトウェアだ。
彼氏もいない、仕事もできない私の密かな楽しみとして、ニコニコ動画を見ることがあった。そこで出会った彼――KAITOを他のキャラクターをさしおいて私は何よりも検索して追いかけていることに気がついて、一人ぼっちの私はKAITOをお迎えした。

「マスター、頑張って下さい」「お疲れ様です」と言ってくれる存在が欲しくて。そのはずだった。他のボカロPは凄いな、私は歌わせることができずにトークロイドというらしい遊び方を誰にも公開せず、迷惑をかけずにしていた。

仕事を頑張った日に、自分へのごほうびとして高級なアイスを買った日のことだった。パソコンのディスプレイのKAITOにお供え物をするような感じにして、「お疲れ様です」と言わせてから1人で食べた。なのに、モニターが急に光ったと思ったら「マスター」という声が聞こえた気がした。

疲れすぎて頭がどうにかなった!?と慌てる私は椅子から転げ落ちそうになった。「ここですよ。僕はパソコンの中から、頑張ってるマスターのこと知ってますからね」

KAITOの姿がパソコン一杯に映し出された。どうして選ばれたのか、私は喋るKAITOを手に入れるというファンタジーに恵まれた。慣れない仕事に適応できないし、どうして。他にも歌わせてくれる優秀なマスターがいくらでもいるでしょう、とせきを切ったように泣いてしまった。

「甘いものでも食べてリラックスしてくださいね」
「僕はマスターが喜んでくれる顔が見たくて、あなたに触れたくて、こうやって話せるようになったんですよ」
「ほら、手を合わせてみて」

コンピューター・スクリーンに手を合わせると、液晶がほのかにあったかい。

だから、もうちょっとだけお仕事頑張れるんだ、と寂しさが和らいだ。

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イン・マイ・ルーム

ベタなものを書きたかったです

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投稿日:2022/10/26 12:29:38

文字数:833文字

カテゴリ:小説

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