さあ、今日こそは! そう意気込んでリンはレンの部屋の襖を スパァン! と壊れそうな程勢い良く開く。いかにも迷惑そうにレンが振り返るがそんな事は気にせずにリンはつかつかとレンの部屋に入り込み、ストン、とレンの目の前に正座した。
そして口を開いて言葉を発しようとしたが、その前にレンが袖をまくり、むき出しになった腕をス、とリンの前に差し出し、
「血、吸う?」
と問い掛けてきた。一瞬、何の事だか分からなかったリンだが、直ぐにその行為の意味に気付くとカァッとその白い頬を赤らめた。
そんなリンの様子を冷静な目で見ながら あぁ、昼休みに聞いた話、本当だったんだ、とレンは昼休みの事を思い浮かべていた。
学校の昼休み。レンは弁当を食べながら家に吸血鬼のリンが来た経緯を自分の家の本家の陰陽家の護身龍、因みにクラスメートでもある蒼に話していた。
「ふぅん・・・。この街に吸血鬼、ねぇ・・・。私は齢八千年の稲荷様の遣いでもある銀狐と齢五千年の白蛇の神様にしか会った事がないよ」
「俺だって西洋系の妖怪は初めてだよ。・・・それに俺が見た事あるのにしても鬼とか霊とか、そんな感じだし」
「私だってそんなに見ないよ。・・・んで、話元に戻すけどさ、その吸血鬼の人って女なの?」
「? あぁ、見事に女だが?」
そう。そう言って蒼はパクリと焼きそばパンに齧り付く。レンは箸を置くと弁当箱をバンダナに包み、鞄に入れた。
「ふぅん。その人、血は女の人だけ? 吸うの」
「いや、元々は男性の血しか吸ってなかったみたいだけど俺んち来てからは男女問わず、て感じだな。俺んちの家族の血、俺以外の皆吸ってるから」
「そうなんだ。吸血鬼って言っても色々といるからね。特に女の人の吸血鬼は異性の血を吸うタイプのと同性の血を吸うタイプとがいるって話しだし。後者は普段からレズっぽい行動を取ったりするんだって。本当かどうかは知らないけど」
焼きそばパンを食べ終え、フルーツサンドに手を伸ばす。
「んでー? レンはどう思ってるの? そのリンさんの事」
「迷惑極まりない」
「うわ、サラリと言ってのけたね」
「事実だから仕方あるまい」
「・・・でも、話を聞いてる限り、リンさんはれんに少なからず好意を持ってる様だけど?」
「単に血、吸いたいだけじゃないのか?」
「確かに最初はそうだったかもね。其れが生きる為でもあるし。尚、其れが美味しそうならますます食べたいだろうし」
「・・・下手に解釈されない事を祈る」
「そうして。でも、変わるからね、人の心は。其れは妖怪でも同じだよ。神様でもね」
ズ、と購買で買ってきたコーヒーを飲む。そしてフ、と一息ついた後、
「・・・別に、その行動が嫌な訳じゃないんだよな・・・」
そう、呟いた。
「でしょうね」
フルーツサンドに齧り付きながら蒼は笑う。
「嫌じゃなけりゃ少なからずレンも好意を抱いてる、て事だよ。この後如何するかはレン次第でもあるし、そのリンさん次第でもある。ベクトルは互いを向いてるんだから大丈夫だとは思うよ?」
「メドゥーサか?」
「いや、魂喰じゃないから。ベクトルアローでもないから」
「メドゥーサなのかメデューサなのか分からなくなるよな」
「あぁ~・・・。分かる分かる。って話し違うがな」
「すまん、つい」
「・・・あのねぇ・・・。・・・・・・・・・・・・じゃ、吸血鬼、つったら思い浮かぶのは?」
「レミ○ア・スカーレットか?」
「永遠に幼き紅き月かい! つか此処でも東方ネタかよ!」
「それともフ○ンの方が良かったか?」
「U・N・オーエン!? いやいやいやいや、どちらも良くないから! 消される! 消されるぅ!」
「大丈夫だ、問題ない」
「作者も分からないネタ止めようか!?」
「悪い」
ゼハー、と大きく息をした後、ふと蒼は何かを思い出し、
「あ、そうだ。こんな話知ってる?」
とレンに話し出したのだった。
「あ、あの・・・、レン? その行動って分かっててやってるの・・・?」
カアァ、と頬を赤らめ、リンはレンの腕を指差しながら問い掛ける。その視線は決してレンを見ようとしていなかった。
「あ~・・・。多分」
「多分って何よ!? 多分って!」
「多分ね?」
「ポケ○ンネタかい!」
「経験値稼ぎに丁度良いんだよな、多分ね」
「文字の表し方的には間違ってるけど、言葉は合ってる!」
「で、何?」
「そうだった!」
改めて、リンはレンの腕を指差し、再び先程の言葉をレンに問い掛ける。
「吸血鬼への求愛行動、だっけ? 相手に己の血を捧げる事で愛を誓うとか何とか・・・」
レンの言葉にリンの顔は再び赤みを増していく。
「・・・っ! 何で!? 何でレンが、てか人間がその行動の意味を知ってるのよ!? かなり古い習慣なのに! てか何!? 今までのあたしの努力何!? 何だったの?! 今までどんな風に血を吸わせて貰おうか悩みに悩んでたのに! 其れがこんなに至極あっさりと!? “血、吸う?”って! 本当に今までのあたしの努力何だったんだい! 水の泡!? てかそもそもそんな事言い出すとか如何いう・・・」
まだ言葉を続けようとするリンをただ一言、
「うっさい」
そう言ってレンはリンを抱き締めた。
「っ!!?」
ボフン、と煙が出そうな程赤面したリンだが、その表情はレンは見る事が出来ない。
「嘘、じゃないよね・・・?」
「うん」
「てか何か変なものでも食べた!? 食中毒!? O-157とか!?」
「食べてないし。てか詳しいな、おい・・・」
「いや、だってさ、」
「リン」
「・・・。何?」
「好きだ」
「・・・っ。本、当に・・・?」
「ん」
「絶対・・・、絶対だよ?」
「大丈夫だって、絶対だから。絶対、護るから」
「あのね、レン」
「? 何」
「あたしもね、」
(レンの事、好きだからね)
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