「そうだよ、わたし、かわいくないもん。」

瞬間、ボーカロイドたちに流れる空気が止まったのだった。


リンとレンが言い合いをしていた。レンの牛乳をリンが飲んだ。ただそれだけのこと。いつものことなので誰も気には止めない。メイコはテレビを見ていたし、カイトは隣に座っていた。ミクは双子を視界にとどめながら楽譜を見ていた。
売り言葉に、買い言葉。
いつしか言い合いはお互い引っ込みのつかないところまできていた。
レンが「おんなのくせに可愛くないやつ!」と言った時点で空気はピンと張り詰めていたのだ。ただ引っ込みがつかなかっただけで。
そして、リンは冒頭の台詞を吐いたのだった。
涙声で。
レンは棒立ちだった。

メイコとミクが俊敏にレンを囲んだ。
カイトはリンの前にしゃがんだ。
「リンは可愛いよ。」
「うそつ、け。かわいくないよわたし、乱暴だし。なんか、かわいくないよ。」
「女の子はね、女の子っていうだけで可愛いんだよ。」
「…」
リンは何も言わなかった。でも、目に浮かぶ涙は落ちることなくすっと吸収された。

「(…カイトにいはかっこいい)」
メイコとミクの間から二人を盗み見ていたレンはそう思ったけど、口には出さなかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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女の子はなにでできてるの?[ss]

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投稿日:2008/08/15 00:49:11

文字数:514文字

カテゴリ:その他

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