終わりがあれば、始まりもあって。
始まりがあれば、終わりもあって。
始まりの鐘は、終わりの鐘。
僕たちの時間は、当の昔に始まっていたのかもしれない。
ならば、今からでも歌いだそう。
――僕たちが唄うのは、始まりのうた。
☆
「♪~」
緑色のとても長い髪、蒼く透明感のある瞳。
鼻歌を歌って、スキップする。
少女は、学校に来た。昇降口に入って、靴を履き替える。履き終えると、教室に行くために階段を上り始めた。階段の踊り場へ来たとき、放送が流れた。少女は、ふいに立ち止まる。
『初音ミク、登校していたらすぐに職員室まできなさい。』
そんな放送だった。
少女は首をかしげ、せっかく上り始めた階段を下りた。
「よっと。」
軽々と、最後の2,3段を飛び降り、廊下を進む。
――少女の名前は初音ミク。音楽の学校に通う、16歳。
ある部屋の前で立ち止まり、ドアをノックした。その部屋は、職員室。
コンコンッ
「失礼しまーす……。」
控えめにドアを開け、多分放送をしただろうと思われる先生のところへ行く。
「先生、呼びました?」
「あ?ああ、やっぱいるな。」
やはり、その先生だった。少女――ミクの目の前にいる男勝りな口調の女性の先生は、足を組んで椅子に座っている。
「いきなりだが、初音、お前は特別教室行きだ。」
その先生は、平然と言う。
「……は?」
思わず、ミクは聞き返す。
「だから、お前は特別教室行きだ。教室にあった荷物は運んであるから、そのまま教室にいっていいぞ。じゃ。」
じゃって……。
納得なんかしてなかったけど、何故か自然とその〝特別教室〟に向かっていた。
「失礼しましたー。」
特別教室は、職員室の先。この真っ直ぐな廊下を進めば、そこにたどり着く。
「先生、アバウトなんだからぁ。」
そう、文句を言っていると、特別教室の前に来た。
とりあえず、教室の後ろのドアから入る。
「失礼しまーす……。」
静かな声でそう言って、できるだけ音を立てないようにドアを開けた。
少し開いたドアの隙間から中を見ると、中には4人いた。
廊下側の一番前の席に、黄色い髪の似たような感じの2人が座っている。多分、双子。何か、二人で話していた。
ミクから一番遠い、窓側の一番前に座っているのは、茶色い髪の、ショートカットとボブカットの中間地点のような髪型の子。体つきから、女の子だと思う。頬杖をついて、空を眺めている。
窓側の一番後ろにいるのは、青い髪の藍色の瞳の男の子。水色のマフラーをしている。ミクに気がついたようで、こちらを向いたけどすぐにそっぽを向いてしまった。
ミクは部屋全体を見回すと、自分が入れるだけの隙間を開けて、教室に入った。……が。
「あいひゃッ!」
ドアに左足を引っ掛けて、顔面から見事にずっこけた。
叫んでしまったせいで、そこにいた全員が、ミクに気がついた。
「いた……。」
起き上がると、視線を感じる。
黄色い髪の双子と思われる子が、ミクを見てクスクスと笑っていた。茶色い髪の子は、冷たい目でミクを見る。青い髪の子は、最早完全無視だった。
「そこッ、笑わない!!」
ミクは、とりあえず反応を示してくれた双子に突っ込んだ。
「だって、アンタ見事なこけ方だったんだもん。」
右側にいた子が、そう言った。そこで初めて気がついたけど、その子は男の子だった。それで、左側の子が女の子。女の子は、お腹を抱えて笑っている。
「バカらし……。」
奥の茶色い髪の子は、そう呟いた。
「うるせー。」
青い髪の子は、そう言って伏せてしまった。
……なんなの、このクラス。
それが、その特別教室の第一印象だった。
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