第十二章     

少しずつ涼しさを感じ始める季節になっていた頃。
私は、全てに対し「生きる」事にも「死ぬ」事にもなんとも思えなくなっていた。
あんなに「生きよう」と決心した筈の心も、日々の疲労で、
「どうでもいいや」なんて思う様になっていた。
どうしようもない程の卑屈な考えだが、私にはどうする事も出来なかったのだ。
外の景色も段々と秋色へと染まっていく頃、私はYouTubeで海の音を聞いて
眠ってしまっていた様だった。
私はその音の中で夢を見ていた。
海の中の深く深い場所で私は「孤独」に生きていた。
どこまでも、どこまでも私に付き纏う「孤独」。
私は、その音に恐怖を感じ起き、涙が頬を濡らしていた事に驚きしかなかった。
前世があるのかは分からない、只「現実」と同じ様な「孤独感」に
何故だか、納得する他無かった。
私は何度もきっと「輪廻転生」をし、その度に「孤独」だったのだろう。
心臓が抉られそうな程の「孤独への恐怖」に私は戸惑いを隠せなかった。
呼吸は乱れ、声を押し殺し、只々流れる涙を抑える事に必死になっていた。
それと同時に、途切れ途切れになっていた「孤独感」が一つの線へと繋がっていた。
そうか、私はずっと「孤独」に生きていたのだろう、と。
一つの線へと繋がった私には「絶望」と「現実」のみが残されていた。
どう「生きれば」私は「孤独」を感じなくて済むのか考えに考えた挙句、
「無」でいよう、そんな風に思う様になっていた。
それからだったのかも知れない、私が笑わなくなったのは。
「無理」が出来なくなったのが真実だったからなのか、私は無理に笑い繕う事をやめた。
私の生きている意味も「無価値」であり、常に「無表情」で過ごし、
「無気力」に一日が終わっていく。
そんな日々の中で、私に待っていたのは
「共依存」という名ばかりの「都合の良い」dmを貰った事だった。
好都合の「共依存」というのは相手にとっての「都合の良さ」であり、
私にとっては「共依存」している感覚すら与えないものだった。
今、思えば私は「無」になっていたからこそ、きっと「どうでも良かった」。
誰にとって「好都合」であろうとも、「なんでも良かった」それがきっと本心だろう。
そんな関係が一か月近くは続いている。
その人が「寂しい時」にだけくれるdm。
私の「寂しい」には一切答える事のない、そんな「共依存」。
「共依存」とも呼べない様な関係だったが、「無」になった私には
大事な「私の気持ち」を無視し、全ての事に「どうでもいいや」と思わせる事しか
出来なかったのだ。
私は「私自身」を大事に出来なくなっていた。

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月は嗤い、雨は鳴く

「無」になっていく日々の中、自分自身を大事に出来なくなっていく主人公。

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投稿日:2024/06/01 22:31:07

文字数:1,098文字

カテゴリ:小説

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