7 8年前:10月4日

「実行委員会か……本当、忙しいんだね」
「未来、本当は実行委員会じゃなくて、生徒会なんですけどね」
 学園祭のお昼過ぎ、あたしは海斗さんにおごってもらったたこ焼きの最後の一つをほお張りながら、そう告げる。
 ついさっきまで未来があたしの隣に座ってて、再会した海斗さんを前にどぎまぎしていたのだ。
 未来はあたしと違って、生徒会の……学園祭実行委員会の仕事の応援で大変らしくて、海斗さんと再会したのもつかの間、すぐに仕事に戻っていっちゃった。
「へぇ。そうなの?」
 あたしはこくりとうなずく。
「結局、やってることは一緒なんですけど」
 そう言って、あたしは改めて海斗さんを眺める。
 ……うん。なかなかのイケメンだ。
 襟つきの白シャツに無地のスラックスを履いてて、清潔感のある服装だし、下手に髪をいじることもしてなくて、整った顔立ちをしている。いい意味で真面目一辺倒、といった感じ。ラフさとかワイルドさみたいなものは感じないけれど、どちらかというとこういうスマートな人の方が未来にふさわしいように思える。
「それはそうと……未来を助けてくれてありがとうございます」
 あたしが頭を下げると、海斗さんはちょっと驚いたみたいだった。
「君は……その、知ってるんだね」
「……はい。たまたまなんでしょうけど、海斗さんが通りかかってくれて、本当によかったです」
 二日前の夜のことだ。
 塾が終わって、夜遅くに暗い帰り道を未来は一人で歩いていた。
 彼女はそこで、三人組の暴漢に教われかけた。そこを通りかかった海斗さんが、未来を助けてくれたのだ。
 それは未来と海斗さんが初めての出会いで、未来が海斗さんに一目惚れした瞬間だった。
「本当、偶然だったけど……助けられてよかったよ。じゃなきゃどうなってたか……」
「未来は、自分が美少女だって自覚が無いんですよ。自分のことなんか誰も見向きもしないに決まってる、なんて思ってて。そんなわけないでしょーがって話ですよ!」
 ダンッ、とテーブルを叩いて力説すると、海斗さんは心の底から可笑しそうに声を漏らす。
「くっくっくっ……いやほんと、二人は仲良しなんだね」
「いっそのこと、未来と姉妹になりたいくらいです」
「……そこまでか」
「んー。それでも足りないですね。未来をお嫁さんにほしい」
「そ……そうか」
 あたしのごく真面目な回答に、なんていうか……返答に困ったみたいだ。
 ドン引きされてるって言っても……いいのかも。
 ……ま、いっか。
「だから、海斗さん!」
 再度テーブルを叩いて、向かいに座る海斗さんに詰め寄る。鼻先が触れてもおかしくなさそうな距離だからわかったけれど、そのほほはちょっと引きつっていた。
「え。は、はいっ!」
「未来を泣かせたりしたら……タダじゃおかないですからね」
「わ……わかりましたっ!」
 海斗さんはなぜか敬語になっていた。
 そこでそもそもの重要なことを確認してないって気づいて、あたしはふと冷静になる。
「……てか、海斗さんは彼女いないんですよね?」
「え? ああ……うん。いないよ」
「ならいいですけど。浮気とかダメですよ?」
「いや、そんなことしないけど……って、いやいや、そもそも前提がおかしくない? まだ未来ちゃんとはそんな関係じゃ――」
「――え、未来で不満なんですか? 未来より可愛い子じゃなきゃダメなんて、ワガママ過ぎますよ」
「そうじゃないから! 逆だから! 未来ちゃんがそうなりたいって思ってるかどうかわからないだろ? 俺なんかよりもいい男なんてたくさんいるし」
「……海斗さん」
 それ、本気で言ってるの?
 って言うのをなんとかこらえて、あたしはジト目で海斗さんを見る。でも、海斗さんはなんでそんな目で見られてるのかわかってないみたいで、頭上にクエスチョンマークが浮かんでるのは明らかだった。
 嘘でしょ……?
 男って……なんでこんなに鈍感なのかしら。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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私とジュリエット  7  ※二次創作

第7話

学園祭の時のこと。
愛視点だと、海斗さんに会ったのはこれが初めてになりますね。

「ロミオとシンデレラ」がうろ覚えの状態で書いていて、今回全部読み返したらちょっと忘れてることも多くて、すでにやった会話を繰り返してしまっていたりしました。
こういう話を書くと修正が大変ですね。

閲覧数:106

投稿日:2017/08/31 00:34:29

文字数:1,643文字

カテゴリ:小説

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