タグ:私とジュリエット
13件
13 現在:同日
頭が真っ白になった。
なんてことを。
まさか本当に言ってしまうなんて。
未来の顔を直視できない。
ありったけの罵詈雑言を“彼女”へとぶつける。が、当の“彼女”はどこ吹く風だ。
『言わなきゃいけなかった。だけど言えなかった。だからあたしが代わりに言った。ただそれだけよ。これ...私とジュリエット 13 ※二次創作
周雷文吾
12 現在:2日目
「……」
朝食から帰ってきて、あたしは部屋のバルコニーの安楽椅子で外を眺めていた。
昨夜の夜景とほとんど同じアングルで、山間から市街地と別府湾を見下ろす。宝石のきらめきだったそれは、蒼穹と建物群に様変わりしていて、別世界から現実へと移り変わっていた。
これはこれですごくいい...私とジュリエット 12 ※二次創作
周雷文吾
11 8年前:同日
ロミオとジュリエット。
シンデレラ。
白雪姫。
銀河鉄道の夜。
小さい頃、そんな物語の劇を見に行っていた。
もちろん、両親につれられてのことだ。
生前、休みがなかなか合わないパパとママが珍しく一緒に休める時は、劇を見に行く、っていうのが我が家の一大イベントだったのだ...私とジュリエット 11 ※二次創作
周雷文吾
10 8年前:10月21日
「あ……愛、ちゃん?」
「あれ、海斗さんじゃん。あたしの未来ならここ何日か休んでますよー」
学校が終わって帰ろうとしていた矢先、あたしは海斗さんに校門で呼び止められた。
「メールも返信来ないんで、ちょっと心配してたんですけど」
「そう……か……」
「……?」
なんだか...私とジュリエット 10 ※二次創作
周雷文吾
9 2ヵ月前
「あれ。愛先輩って旅行とか好きでしたっけ?」
深夜、会社のデスクで息抜きに広げていた雑誌に写っている、旅館の若女将に目を奪われていたら、後輩に声をかけられた。
「んー。たまには……いいかなって」
「ウチ、かなりブラックですしねー。休める時にそういう息抜きするって大事ですよね」
「そー...私とジュリエット 9 ※二次創作
周雷文吾
8 現在:2日目
「あれ、おねーさん一人? こんなところで美人に会えるなんて思ってなかったなぁ」
「はいはい。あんたみたいなのに興味ないから、ほっといてくれる?」
未来と深夜まで家族風呂に入った翌日。朝食後にロビーでくつろいでいたら、知らない男に声をかけられた。
コーヒー片手にソファに座ってぼん...私とジュリエット 8 ※二次創作
周雷文吾
7 8年前:10月4日
「実行委員会か……本当、忙しいんだね」
「未来、本当は実行委員会じゃなくて、生徒会なんですけどね」
学園祭のお昼過ぎ、あたしは海斗さんにおごってもらったたこ焼きの最後の一つをほお張りながら、そう告げる。
ついさっきまで未来があたしの隣に座ってて、再会した海斗さんを前にどぎ...私とジュリエット 7 ※二次創作
周雷文吾
6 7年前:5月11日
「ううー……」
「未来、どしたの? 海斗さんとケンカ?」
「いや、そーじゃなくて……」
教室で、そう言いながら未来が机に突っ伏す。
あたしの「海斗さん」という言葉を耳ざとく聞きつけた周囲の男子が、かすかにざわついた。
未来は未だに自分が美人だっていう自覚がない。海斗さん...私とジュリエット 6 ※二次創作
周雷文吾
5 現在:1日目夜
脱衣場から外に出ると、湯気の向こうに圧巻の情景が待ち受けていた。
「ホントだ。きれー……」
「でしょ?」
ちょっと自慢げな未来の言葉も、あんまり耳に入らない。
家族風呂は檜風呂で、小ぢんまりしているとはいえ、二、三人くらいならゆったり入れる大きさだ。上から楓の木も葉を繁らせ...私とジュリエット 5 ※二次創作
周雷文吾
4 10年前
『パパとママに対する気持ちなんて、その程度だったのかしらね』
まさかと思い、婦警さんを突き飛ばして離れようとした。けれど、婦警さんはそもそもあたしがなんで泣き出したのかもわかってなくて、きょとんとしたままだった。そこでようやく、婦警さんと違う声だって遅れて気づいて……でも、じゃあ誰の...私とジュリエット 4 ※二次創作
周雷文吾
3 12-10年前
あたしの両親は、あたしが中学一年の時に死んだ。
交通事故だった。
アクセルとブレーキを踏み間違えた軽自動車が歩道に乗り上げ、周囲の通行人を七人も轢いたあげく、街路樹に衝突して止まった。
七人のうち、未就学児の男の子とそのお祖母ちゃん、そしてあたしの両親の四人がこの世を去っ...私とジュリエット 3 ※二次創作
周雷文吾
2 8年前:10月22日
あたしは、隣で眠る未来の髪をすく。
しばらくお風呂にも入っていなかったみたいで、ついさっきあたしと一緒に入ったのが一週間ぶりくらいだったらしい。その一回くらいじゃ髪質は全然戻ってなくて、あたしが羨ましくてたまらなかったサラサラツヤツヤのストレートだったはずのそれは、今す...私とジュリエット 2 ※二次創作
周雷文吾
私とジュリエット ※二次創作
1 現在:1日目
『次はー、始音温泉。始音温泉でございます。お降りのお客様は、お近くのボタンでお知らせください――』
バスの車窓に流れる山林をぼんやり眺めていたあたしは、運転手のアナウンスにハッとして手近のボタンを押した。
運転手はすごく渋い声で次のバス停での停車を...私とジュリエット 1 ※二次創作
周雷文吾