Len side.
「―あら、おやつの時間だわ」
僕はふと、彼女の口癖が口から出た。
次の瞬間リンの無理やりつくった笑顔が、じわりと闇に消えた。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
目を開ける。
真っ暗で何も見えない。
起き上がってみる。
全く何も見えない。
――なぜ僕はこんなところにいるんだ?
目を伏せた。
花火のようによみがえっては頭の中に入っていく記憶。
そうだ。僕は自分の勝手な行動によって姉の王女を混乱させ、国を滅ぼす道に誘った大罪人だ。
自分の立場を把握したところで、もう一度目を開いた。
少し明るくなったのか、目が慣れたのか、目の前が見えるようになった。
手には赤い手錠、足を見ると青い足枷がついている。
顔を上に向けると、天井に大きなゼンマイがある。
己の犯した罪を実感させるためなのだろうか?
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
訳の分からない状況下のまま、どれほどの月日が経ったのだろうか。
腹も減らず、髪も伸びない。
目を開けたあの日から、何も変わっていない。
――ただ一つを除いては。
聞き覚えのある美しい歌声が、僕の心を癒してくれる。
僕は歌声が待ち遠しいと感じるほどになっていた。
そして、日を重ねるごとに、僕は言葉を付け足していった。
『 』
ぜんまいの隙間から落ちてきた一筋の光。
最初何か分からなかったのだが、やわらかいその光は小瓶だった。
あの日、何もなければ流すはずだったものだ。
コルクを開け、中に入っているメモ紙に書かれている文章を読んだ。
元々僕が書いていた文章に、書き足された字は、まぎれもなくリンのものだった。
『もしも生まれ変われるなら、また双子として生まれたい。そして、リンにとって幸せな時を永遠に過ごしていたい。
私もだよ。生まれ変われるなら、またレンと一緒にがいいな。この願いは届いているの?』
――届いているよ。
口の中でつぶやいた。
今まで決して動くことのなかったぜんまいが廻り始めた。
「罪が決して許されることはない」
「これからあなたは生まれ変わるのよ」
赤い手錠が外れた。
「今日が君の新しいBirthday」
青い足枷が外れた。
辺り一面が真っ白な光に包まれて、やがて何も見えなくなった。
――もうすぐ、君に会いに行くよ。それまで待っててね。
悪ノ娘と召使 Len side. 前篇
レン視点。
全4話の予定なので、脱走姫様はこれを全て書き切ってしまってから再開します。
本家様↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2916956
悪ノ娘
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3133304
悪ノ召使
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那薇
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