ビリビリと言う感電音。風穴が開いた。
「見事だ、ミク」
卑怯にも飛び道具をしかも一対一で戦っている相手の背後から狙い撃ち。卑怯戦隊の流儀である。
当事者達は何が起こったのか分からずしばしフリーズ状態になった。
「ア…アカイト…?」
「チッ、ロクな事しねぇ連中だ…」
バタッ
アカイトは倒れた。背から受けて貫通し、腹を突き破った凶器の葱が生々しく飛び出ている。
「アカイト…?…何するんだ!」
「何って、見ての通りだが?」
シレッと言う隊長。睨み付けるカイトの方が弱々しい。
隊長は動かなくなったアカイトを掴み上げて肩にかけ、帰ろうとした。
「待てっ…!」
「戦闘で躊躇いは禁物だ。ミクが葱を投げなかったらこうなっていたのはお前だ」
隊長はカイトを見ないで一言。言葉に詰まるカイトを無視してそのまま帰投した。
マスター宅―――
カイトが帰った時には既にアカイトはマスターの部屋のベッドに寝かされていた。マスターは枕元に腰掛けてアカイトを見つめて愛おしそうにその赤い髪を撫でていた。
「マスター…」
「…お帰り、カイト。早かったね」
マスターはカイトを見なかった。ただひたすらアカイトの髪を撫でていた。
「綺麗な顔でしょう?これでもう動かないなんて考えられない。私の自慢の子。最初で最後の…」
マスターは言葉を切った。寂しそうな横顔を辛そうに見ていたリクが椅子から立ち上がってそっとマスターの背を抱いた。
「何でこんな事になってしまったの?この子に罪はなかったのに…」
泣き出しそうな声、涙を堪えて震える肩はマスターの気持ちを言葉以上に周囲に伝えた。
「リク、どうして?アカイトは何で死ななきゃいけなかったの?この子は大切な、私の…」
ピクッ
リクの手が一瞬何かを躊躇うように動いた。
「泣くな…」
「…」
「泣くなって。死ぬとか、言ってるなよ…」
元気づけようとしているのか、気安めにもならないリクの言葉だけが虚しく部屋に響いた。
「っ…」
リクは無反応のマスターを置いて部屋を出た。カイトはリクの後を追った。
「待って下さい!」
「?」
リクは立ち止まってカイトを待った。
「リクさん。僕はアカイトに言えませんでした。マスターがあなたに伝えたかった事…」
「俺に、伝えたかった事…?」
カイトは静かに頷いた。
「マスターはアカイトを愛していました」
「何が言いたい。お前らは所詮アンドロイド、人間にはなれないんだよ」
強い視線、刺すように鋭い。冷酷な瞳は熱を持ち、嫉妬の炎で燃えたぎっている。
カイトはくじけそうになる心を奮い立たせ、勇気を持って言った。
「あなたは、マスターを本当に愛していますか?マスターが何を思っていたのか、考えた事がありますか?あなたは…」
「っ!!お前に、お前なんかに何が分かる!俺はあいつのために何でもしてきた!俺は、俺だけがあいつを本当に愛している!お前らみたいな作り物とは違うんだよ!」
リクの怒声が辺りに響いた。萎縮してしまいそうな自分を懸命に抑えてカイトも強気に粘った。
「僕らは確かに人間に作られた存在です。でも、心は持っているつもりです。だからわかるんです、マスターが…寂しがっていたと言う事も…」
カイトは悔しさに身を震わせた。
「アカイトは、あなただったんですね…」
「!!」
カイトがカイトに戻った時、最初に弄った端末にマスターの書き残したデータが存在した。そこにはアカイトの秘密が書かれていた。マスターしか知らないアカイトの秘密だった。
「リクさん。あなたはあなたの分身を作り、マスターに渡しましたね?マスターは気付いていましたよ。彼があなたの分身で、所有権があなたにあった事も」
謎解きをする名探偵が如くカイトはリクを追い詰めた。
「彼はボーカロイドを模して作られた、似て非なる存在でした。彼が奏でるのは僕のマスターの歌ではなく、あなたの囁く愛の詩。あなたの声を聞かなくなったマスターに、自分の想いを届けるために用意したクッションだったんですね」
ビクッと震えるリク。俯いて黙ったかと思えば開き直るように笑い出した。
「ははっ、話はそれだけか?名探偵。アカイトって奴は確かに俺が作ったプログラムだ。お前らオリジナルとは違う紛い物だよ。でも、あれを欲しがったのはあいつだぜ?俺は求められたから作ったに過ぎん。変な言いがかりはやめて貰おうか」
「言いがかり、ですか…それならお話しましょう。あなたの知らないマスターの真実を…」
カイトはカイトに戻った時最初に弄った端末に残されたマスターのブログデータの話をした。そこにはリクの知らないマスターの闇が書き綴られていた。
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ファントムP
勘違いばかりしていたそんなのまぁなんでもいいや
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鈴宮ももこ
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