「離れてく運命を受け入れて君を最後に強く抱き寄せた」


俺は、窓から見える変わらない景色をずっと眺めていた。
右手には、握りつぶした一枚のカルテ。
「分かってたけど・・・案外、ショックなもんだな・・・。」
独り言をいいながら、つい10分前の出来事を思い出す。

「・・・カイト先生、僕に言うことがあるんなら、早く言ってください。・・・まぁ、大体予想ついてますけど。」
「・・・っ」
まだ下を向いたまま唇をかみしめるカイト先生に、俺はあきれ顔で言った。
「・・・先生知ってますか?後悔すれば後悔するほど、それは消えなくなるらしいですよ。
・・・だからもう、いいです。話してください。」

今、俺は14歳。
普通なら中学校にも行って、勉強だとか、部活だとか、恋だとか。
そういう「青春」ってやつを謳歌する頃だけど、僕は病院の一室から出ることはできない。
それは、俺の心臓が「がらくた」だから。
満足な体に生まれなかった俺は、5歳の頃からずっと病院暮らしだった。
自分が不幸だとかそういう風に思ったことはないけれど、ただ、あいつ・・・リンの側に居てやれないことが何よりも辛かった。

「レーンっ」
ふいに、扉が開く。
反射的にカルテを布団の間に隠す。
「・・・リン」
幼馴染みのリンだった。
「どうしたの?レン。・・・なんか、元気ないよ?」
「・・・いや、なんでもないよ。」
「・・・そう?あ、これ、お花!綺麗だったから買って来ちゃった。」
そういって腕に下がるバスケットの中の色鮮やかな花を見せる。
「ああ、綺麗だね。」
にこっと笑って、花瓶に花をいけるリンの後ろ姿を、俺は見つめる。


言わなくちゃいけないことは分かってる。
いつかこういう時が来ることだって、分かってたはずだ。


・・・それでも、その言葉を飲み込んだ俺は、我が儘でしょうか。


俺はいつの間にか、眠りに落ちていた。
まだ、入院する前。
リンと、遊んでたころの・・・。

「・・・っ」
「レン?大丈夫・・・?」
「・・・うん、大丈夫。大丈夫だよ。」
「本当?よかった!」

リンは何時だって、後ろ向きに歩いて、俺を見守っていてくれた。
転んでも、「平気だよっ!レン、大丈夫?」と、笑っていた。
気付いてたんだ、僕だけは。きっとあの頃から。
この先、2人でいけないことに。



「君は前を向いて、歩いて。僕はずっと、この場所から、見守っているから。」


離れてく運命を受け入れて君を最後に強く抱き寄せた

言葉にはできない思いは涙になって

僕らの時間を

ゆっくりと

止めた





「え・・・」
「・・・お聞きになって、いませんでしたか?」
「は、い・・・」
「そうですか・・・。」
私は、カイト先生と別れたあと、廊下の長イスに腰掛けた。
廊下は怖いほど静かで、うっすら暗くて、私の心をかき乱した。
「レンが・・・死ぬ・・・?」
その言葉の意味を、パニックになっている頭で必死に理解しようとするよりも先に、涙が溢れた。
違う。信じない。だって、さっきだって元気だったもの。笑ってたもの。レンはいなくならない。絶対・・・!
「レンッ・・・」

それから数日後、私はとある新聞記事を見つけた。
『冷凍睡眠』
私は今までで一番早く走った。
ハイヒールで足が痛くて血が出てきても、行き交う人々がじろじろと見てきても、私は病院のカイト先生の元へ走った。

「っせんせ・・・カイト先生!」
そう叫んだ私に、カイト先生は驚いた様子で振り返った。
「リンさん・・・?」
「っこれ・・・っ、これなら、れ、レンを・・・」
私はぐしゃぐしゃになった新聞記事を、カイト先生に見せた。
「冷凍、睡眠・・・。」
戸惑いながら、新聞記事に目を通していくカイト先生。
荒い呼吸をなんとか落ち着かせた頃、カイト先生は走り出した。
「っリンさん、これ、お借りします!」
「・・・っ!はい!」


「うれしい気持ちの半分を分け合えたらいいな。微笑んでくれるだけで、心、近づくの。」


約束なんてしなくていいよね信じているからこれでいいよね

君のことをいつも眺めているだけで

たくさんの夢を見ていられるから

君を

明日へ

連れて行くから




そして、その日。
十数年ぶりに病院を出た俺は、思い切り外の空気を吸い込んだ。
すこしヒンヤリとした空気が、胸の中に入ってきて、心地良い。
「・・・レン」
振り返ると、泣きはらしたのだろう、目を真っ赤にさせたリンがいた。
「リン。・・・ありがとう。」
俺はリンを抱きしめた。
「俺さ、リンのこと・・・」



進んでいく時間のその先で、君を

見つけるその日まで待っていて



独りでも行けるよ君が、いてくれるから

最期は笑って手を振るよ

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

運命が2人を巡り合わせるその時まで、君をずっと待っているよ。

一発で好きになってしまった・・・!
涙腺崩壊・・・!


http://www.nicovideo.jp/watch/sm8004240

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投稿日:2011/02/16 13:07:20

文字数:1,971文字

カテゴリ:小説

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