「もぉ、リン!?どうして僕のマフラー持ってくの?」
ソファにいるリンを見下ろし溜め息をつく青い髪の青年、カイト。
怒り気味だ。
と言ってもカイトは本気で怒ってる訳じゃなく…正しくは『困っている』だ。
「あたしが巻くからに決ってんじゃん」
ニヤッと笑い、奪ったマフラーをクルッと首に巻くと、リンは颯爽とソファの背からジャンプした。
着地のポーズもバッチリだ。10.00。
リンはカイトが振り返る前に部屋へと廊下を疾走した。
(大体、カイ兄は隙があり過ぎるのよね~。特にアイス食べてる時。ボヘーッとし…あ、間違った。
めちゃくちゃ嬉しそうに食べててさ。まるで…)
自室の机の下に隠れて考え事をしていると、自分と同じ黄色髪の少年が居るのに気が付いた。
「リン、何やってんだよ?カイ兄のだろ、それ」
早く返せよな、と又もや上から見下ろされる。
本日二度目。
同じ視線でも自分と同じ年のレンからだと腹が立つのは何故だろう。
見上げてきたリンのムっとした顔に一瞬怯んだが、
ツンとして言葉を続けるレン。
「そんなのリンが巻いたって、変わんないよ。無駄無駄~」
「うーっ…レンのバカバカっ」
「バっ!?…言ったな~。そんなの無駄ムダ無駄っ」
「!バカバカ馬鹿」
延々繰り返される言い合いに腹を立てたリンは立ち上がり、
つかみ合いへと発展…しそうになったところへメイコが現われた。
笑顔で拳を振りかざしている。ヒートアップしていた二人はその姿を見て凍りついた。
「リン?どうしたの」
「あぁ…ほっといていいよ」
仲裁に入ったあと、リンはベッドに伏せた。
心配するメイコの言葉にレンは素っ気無い返事をして部屋を出て行った。
何かある、直感したメイコの目が光った。
すぐさま振り返り、レンの首根っこをつかんだ。
--*--*--*--*--*--
「リン、部屋に入るわよ」
ドアは開いているが、一応マナーとして軽くノックをして入る。
リンは自室のベッドに突っ伏したまま。ふてくされている模様。
「な~にをそんなに焦ってるの?」
伏せたままだったが、リンの頭上に結ばれたリボンが揺れた。返事は無い。
「レンに聞いたわよ?早く大人になりたいって??
理由は知らないけど…いいじゃない、急がなくたって。
リンはリンのペースで行けば。
今の自分は『いま』しかないんだから、大事にしないと。」
二人だけの空間にメイコの声が優しく響いた。リンはゆっくり顔を上げた。
バツの悪い表情ではにかむ。
「…あたしやっぱりまだまだ子供だよね。焦っても急に大人にはなれないし。カッコわるい…」
「ううん、成長してるから悩むのよ。カッコ悪くない。」
笑ってメイコはベッドの脇に腰掛け、リンの頭を撫でた。
「あたし、マフラー巻いたら考え方が少し大人に変わるかと思って。メイ姉の好きなお酒は未成年だから飲めないし…」
では、カイトのアイスは?
メイコは心の中で思ったが、あれは今のリンでも食べられるから論外なのかもしれない。
「カイトは見た目大人だけど、表情もクルクル変わって喜怒哀楽が分かりやすいし、私達の中で一番子供っぽいかも?、て思う時があるわよ。」
笑って腕組みしたまま人差し指を上に向け、説明する仕草をした。
アイス食べてる姿を思い出すとうなずける…リンは寝返りを打ち、天井を見上げた。
「…メイ姉やカイ兄に分ってあたしに分らない歌詞の感じ方があったりするんだもん。」
メイコはキョトンとした顔をリンに向ける。
「例えば『好きなのに離れる』とか、意味分んない。でもカイ兄はその歌詞みて理解してた。ずるいよ。」
___歌詞をちゃんと理解したい。だから大人になりたかったのか…
「あー…私もさ、分らない時ってあるある。心配しなくても、そのうち分かるようになるから大丈夫!」
ホントに?とベッドから起き上がり
何度も聞き返すリンに頷きながら、二人リビングへと歩きだす。
レンはリンの行動とその理由、すべてお見通しだったのだろうか。
よくよく考えると、もしかしたら私達よりずっと大人なのかもしれない。
メイコはさらに考える。
軽く相槌を打ったけど、実は私もそういうの雰囲気しか分かんないのよね。
…好きならいつも側に居たいんじゃないかしら…あぁ、リンと同意見になりそう…私もまだまだ子供っぽいってこと!?
メイコは考えを書き消すように頭をクシャクシャにした。
--*--*--*--*--*--
「はい、カイト。マフラー」
「ありがとう!メイコさん」
さっきまで半泣きだったカイトはあっという間に上機嫌に。
メイコが今度手ぬぐいにすり替えてみようか、と思うくらい嬉しそうだ。
隣りでリンは何か言いたげにモジモジしている。謝りたいようだ。これは皆が分った。
レンはその後のカイトの言葉も予想できるので、ふっと笑って冷蔵庫へ足を向けた。
『じゅあ、一緒にアイス食べよう!』
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