「美紅、変わったわよね」
「そうですか?」
瑠加は湯気の立つコーヒーを混ぜながら言った。
「何かあったのかしら?」
「うーんと、・・・あ。そういえば」
「どしたの?」
「そういえば、最近、子猫と鬼ごっこというものをやっているんです」
「ほう・・・・・・鬼ごっこ・・・・・・子猫と?」
瑠加は目を細めた。
「はい」
「意外ねぇ」
私は、少しだけ眉をしかめた。
「意外?どういう意味です」
瑠加は「あっちち」と呟きながら続けた。
「そりゃあ、もう・・・・・・・この間まで、君は事務処理的回答しか
できなかったろう?私以外の生物に興味を示すなんて、
本当に驚くべき変化なのさ」
「そういうものなんですか」
「うんうん、まあね。・・・・・ん~、やぱりコーヒーは淹れたてがいいねぇ」
「・・・・・・・・・話、聞いてますか」
呆れる私に、瑠加は陽気に笑って見せた。
「うふふ、あんまり聞いてなかった」
私は小さくため息を漏らして、立ち上がった。
「では・・・・、朝食の用意をしてきますので」
そういってその場を立ち去った。
昼食を済ませた私は、
子猫といつも追いかけっこをしている畑に足を運んだ。子猫がいた。
今日も子猫と運動をすることになりそうだ。
今考えると、何故私は子猫に興味を持ったのだろうか。
何時の間にか、子猫に対する私の何かが変わっていたようだ。
「こういうとき、どういう表現をしたらいいんだろう・・・・・?」
そう呟いているとき、ちょっとしたことに気がついた。
ほんのちょっとした、本当に小さなことだが。
「あれ?」
子猫が、体を掻いているのだ。いつもなら、そんなことはないのだが・・・・。
しかも、妙に体を掻きすぎではないだろうか?何故だ?
私は子猫を抱え上げた。
子猫はまだ体を掻いている。
「博士に聞いてみれば、分かるかな」
子猫は私を見上げ、小さく鳴いた。
「只今戻りました」
瑠加は私に気付き、開店椅子をくるりと向けた。
「よっす。おかえり・・・・・・ん?その子猫は、例の?」
私は頷いた。
「さっきからやけに体を掻いているのですが、原因は何なのでしょうか」
そういうと瑠加は、きょとんとした顔つきになってしまった。
「こりゃ・・・・・普通に体を洗ってあげれば直ると思うけど」
「じゃ、博士。洗ってください」
私は抱いていた子猫を瑠加の目の前に差し出したが、逆に突き返された。
「なっ・・・・・」
「拾ってきた人が洗うもんでしょ」
子猫は、足で耳を掻き始めた。
「・・・・・・ちっ。わかりました、洗ってきます」
「今、舌打ちしたかしら?」
聞こえない程度にしたつもりだったのだが、
どうやら私はミスをしたらしい。
ばっちり聞こえていたようだ。
「い、言ってませんよ。ほら、おいでっ」
瑠加の逆鱗に触れぬ前に移動しないと面倒なことになる。
そう思い私は、子猫と一緒にそそくさと風呂場に向かった。
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