「君は、やっぱり少し違うね」
ある日、戦闘訓練後の調整中のことだ。立体型ディスプレイをタップしながら、僕の調整担当官の科学者が言った。
「違う?」
クッションのひとつもない、硬くて冷たいベッドに横たわっていた僕は、唐突なその発言の意味を察しかね眉を顰めた。
「他の“調整”された奴らと比べてってこと」
もしかして自覚してなかったかい? そう付け足して机に置いてあったステンレス製のカップを手に取る名も知らぬ科学者。……もしかしたら名前を訊いたかもしれないが、少なくとも今は知らない。
「よく分からない。どういうことだ?」
自分が特別に他の奴らより優秀だという自覚もなければ、変わった身体的機能を持っている心当たりもない。何も違いはないだろう。そういう意志が伝わったのか、科学者は肩をすくめた。
「君が考えてるような項目じゃあない。そうだね……。一言で言えば人間らしさ、かな? 君は自分の意志を持って戦闘に参加しているように見えるんだ。そこが少し違う」
僕は何か言おうとして、止めた。上手く言葉が出てこなかった。否定したい気も、肯定したい気もした。咄嗟にどう答えたらいいか分からなかった。
「イメージがあるだろう? このために、っていう」
ぎしっと椅子を鳴らして立ち上がった彼は、カップを手にベッドの傍に歩いてくる。
「仕方なくとか、命令だからじゃなくって。じゃなきゃそんな眼にはならないと思うんだ」
体を起こした僕の目を覗いて、微かに微笑んだ。それから一口、こくりと喉を潤して、
「個人的にはとても理由を訊きたいけど、調整対象と過度に親密になるのは良いこととは言えないからね。残念だけど。君もあまり言いたくなさそうだし?」
人によっては愛嬌を感じるだろう悪戯っぽい笑みを浮かべる。その瞳の中に、滅多に見えない本気の色を見た気がした僕は、思わず声を発してしまった。
「いつか」
「うん?」
「気が向いたら」
一度躊躇い、しかし僕は続ける。
「話すかもしれない」
科学者は珍しくきょとんとした顔をして、
「ああ、是非とも頼むよ」
少しだけ嬉しそうに言った。
コメント0
関連動画1
オススメ作品
【頭】
あぁ。
【サビ】
哀れみで私を見ないで
(探したい恋は見つからないから)
振られる度に見つけて
いまは見えないあなた
【A1】
儚い意識は崩れる
私と言うものがありながら...【♪修】スレ違い、あなた。
つち(fullmoon)
彼女たちは物語を作る。その【エンドロール】が褪せるまで、永遠に。
暗闇に響くカーテンコール。
やむことのない、観客達の喝采。
それらの音を、もっともっと響かせてほしいと願う。それこそ、永遠に。
しかし、それは永久に続くことはなく、開演ブザーが鳴り響く。
幕が上がると同時に、観客達の【目】は彼女たちに...Crazy ∞ nighT【自己解釈】
ゆるりー
それは、月の綺麗な夜。
深い森の奥。
それは、暗闇に包まれている。
その森は、道が入り組んでいる。
道に迷いやすいのだ。
その森に入った者は、どういうことか帰ってくることはない。
その理由は、さだかではない。
その森の奥に、ある村の娘が迷い込んだ。
「どうすれば、いいんだろう」
その娘の手には、色あ...Bad ∞ End ∞ Night 1【自己解釈】
ゆるりー
雨のち晴れ ときどき くもり
雨音パラパラ 弾けたら
青空にお願い 目を開けたら幻
涙流す日も 笑う日も
気分屋の心 繋いでる
追いかけっこしても 届かない幻
ペパーミント レインボウ
あの声を聴けば 浮かんでくるよ
ペパーミント レインボウ
今日もあなたが 見せてくれる...Peppermint Rainbow/清水藍 with みくばんP(歌詞l)
CBCラジオ『RADIO MIKU』
私の声が届くなら
私の歌が響くなら
この広い世界できっと
それが私の生まれた意味になる
辛いことがあったら
私の歌を聴いてよ
そして少しでも笑えたら
こんな嬉しいことはないよ
上手くいかないことばかり
それでも諦めたくない...アイの歌
sis
知らなくっていいことばかり
思いそうになるのに
知らないって笑うことさえも
危ないってことばかりだね
好きなものも嫌いなものも
ぐちゃぐちゃって混ざったあの日に
あぁ命だけ あるんだね
別に土には居ないのに
水に溶けて 海に流れる
眠ってるの...、、
mikAijiyoshidayo
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想