静けさが満ちる部屋の窓辺で小さく吐き出した息のゆくえを見つめています。
全体の構造を組み上げる作業と些細な声を拾い集めて形を与える作業を繰り返してきた私の手のひらには言葉にならない感情の破片がいつも残されています。
机のうえにそっと置かれた木製の箱のなかには空の向こうから落ちてきた欠片たちがひっそりと集められていました。
その小さな欠片は誰かが胸の奥で抱え込みきれずにこぼし落とした孤独や声にならない叫びが固まったもののようでした。
音楽を紡ぐ人や色彩を重ねる人たちが深い思考の底へ潜り込んで作品を生み出す工程もこの冷たい欠片をひとつずつすくいあげて箱へ並べる感覚によく似ていると感じることがあります。
世の中には眩しすぎる答えや分かりやすい情熱の言葉があふれていますが表面的な華やかさだけでは胸の奥にある深くて静かな傷に寄り添うことはできません。
どれほど綺麗に音を重ねてもその下に眠る孤独の輪郭を丁寧にすくいあげなければ本当の意味で誰かの心に届く物語にはならないのです。
そこで必要になるのは焦らずに影のなかに残された小さな光の破片へ静かに指先を伸ばすことです。
誰にも気づかれずに捨てられた想いや揺れる感情の隙間をひとつずつ丁寧に拾いあげて透明な箱のなかに並べていきます。
冷ややかな輝きを放つ欠片たちが箱のなかで静かに寄り添い合った瞬間止まっていた時間の流れが微かな波紋を描いてゆらゆらと揺れ始めます。
生み出された作品は遠い場所でひとり震えている誰かの夜に寄り添いその静かな孤独を優しく包み込んでいきます。
形を作るということは美しい答えを押しつけることではなく言葉にできない感情の居場所をそっと作り出すことなのだと気づかされます。
私たちは誰もが言葉にできない想いを抱えながら自分だけの影のなかで新しい光を探し続けています。
街の灯りがひとつずつ消えて静寂が広がる時間になるとふと自分が箱のなかに集めてきた光の深さを確かめたくなります。
今日あなたが影のなかからすくいあげた小さな欠片はどんな色彩となって誰かの心に寄り添っているでしょうか。
木製の箱の蓋をそっと閉めて深く息を吐き出します。
明日もまた誰も触れたことのない深さへ潜り新しい感情の光を探し求めていくのでしょう。
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