離陸した時既にレーダーに反応があった。
 遥か前方に、いや、もはやAエリアへの接近を許してしまっている。小型の機影が、数え切れないほどに。
 数十の単位ではない。
 しかも、航空機でもない。
 「こちら司令部。ソード隊、ダガー隊、ブレード隊は、敵アンドロイドから基地を護衛せよ。射出滑走路は既にハッチを閉じてあるが、管制塔は無防備だ。絶対にやつらを基地へ近づけるな。」
 少佐の声がコックピットに響く。
 「ソード1了解。」
 「ダガー1、ラージャ。」
 「ブレード1ラジャー。」
 「ナイフ隊、キャリバー隊、シック隊は、ストラトスフィアへ接近、着艦するゴッドアイの護衛だ。網走博士がストラトスフィアの進路変更を行う。こちらも同じく護り通せ。」
 「ナイフ1了解。」
 「キャリバー1了解!」
 「シック4、了解しました。ワラ、キク、遅れないで。」
 少佐と各部隊の無線が飛び交った。
 「こちら、空母雪峰所属、ロンチ隊、聞こえるか?要請を受け、援護に来た!」
 突然、俺の耳にあの矢野大尉の声が飛び込んできた。
 「大尉!」
 四機のF-18ホーネットが俺達の横に付いた。
 四機だけではない。大勢のホーネットが俺達の部隊の横に並んだ。
 「やあ春瀬君。こんなに頻繁に会うとは、何かの縁かな?」
 「大尉、そんなこと言っている場合ではありません。」
 麻田綺羅も一緒だ。
 「今から我々が君達の援護を行う。」
 「おい綺羅!」
 麻田が急に大声を出した。
 「何ですか。」
 綺羅は不思議そうに応えた。
 「死ぬなよ。」
 「えっ・・・・・・。」
 少し戸惑ったような声が聞こえた。
 「絶対死ぬんじゃねぇぞ!!!」
 それは、麻田が不器用ながらにも妹への応援だった。
 「・・・・・・はい。兄さんこそ!」
 「よし。さすが俺の妹だ!!」
 「はっはっは。私がいる限り、誰も死なせはしない!!おっと、おしゃべりはここまでのようだ。」
 レーダーを確認すると、先頭の敵がもうすぐレーダー照射範囲に入るところだ。
 「皆、準備はいいか?ランチャー、エンゲイジ!」
 大尉の掛け声と共に、俺達も戦闘準備を始める。
 敵がレーダー照射範囲、ミサイルの射程に入る。
 断続的なアラームが鳴り出す。
 シーカーが敵機を捉える。ロックオン。複数。
 アラームが連続のものへ移り変わる。
 額から汗が落ちる。
 親指を押し込む。
 「ソード1、フォックス2!」
 ウェポンベイから四発のミサイルが放たれ、一直線に目標を追尾した。
 ミサイルの先の敵が徐々に視界に現れる。
 その時、けたたましいミサイル接近を表すアラームが鳴り響いた。
 ミサイルか!一体どこから?
 チャフを発射し、レバーを右に切る。
 その瞬間、キャノピー越しの視界に不気味な物体が現れた。
 全身漆黒のアーマーGスーツにカラスのような翼。
 これが・・・・・・量産型アンドロイド!
 その頭部の、赤く光るセンサーは確実に俺を補捉しているだろう。
 アンドロイドを振り切り、バックミラーで後方を確認すると、やつらは群れを成して俺の機体に迫ってきた。既にここまで接近されていたとは!
 右腕の部分に、巨大なカッターのような接近武器らしきものが搭載されている。
 「く・・・そッ・・・・・・!」
 俺はアフターバーナー全開にすると回避機動をし始めた。
 やつらとの距離が離れていく。
 速度では勝るかもしれないが、機動力では劣っている。圧倒的に。
 やつらは自由自在に空を飛びまわり、俺達を追い詰める。
 先ほど撃ったミサイルも回避されたに違いない。
 ミクほどの性能を持っているなら、勝算は・・・・・・。
 そう思った瞬間、俺を追尾していた敵の群れが、蒼い稲妻と共に吹き飛ばされた。
 「隊長!危なかった!」
 「ミク、すまない!!」
 ミクなら、やつらに対抗できるが、俺達は・・・・・・。
 「ブレード2被弾!コントロールが利かない!!!」
 「ブレード2、エジェクト!エジェクト!!レバーを引け!!!」
 「うおぁあぁぁあ―――――――。」
 視界に爆発四散する味方機の姿が見えた。
 「くそぉぉぉおッ!!!なんでロックオンもできねえんだ!!!」
 「確実に、僕達の機動力を上回っている!」
 「なんで?なんでぇ?」
 部下達も手古摺っている
 俺はミサイルが回避されることを理解し、バルカン砲で何とか照準に入れた敵を撃墜した。
 必死に敵を捕捉しようとするが、照準が合わない。速すぎる。
 次々と、目の前を敵が飛び回る。
 敵の主武装である小型ミサイルが、途絶えることなく俺を追い回す。
 まるで狩りの獲物になった気分だ。
 これが、アンドロイドの力・・・・・・。
 ミクは次々とレールガンと高周波ブレードで敵を葬り去っていく。
 だが俺達はこいつらになす術はない。
 既に戦場は泥沼へと化していた。
 味方のパイロットの断末魔が耐えることなく無線から押し寄せた。
 次々と同じ空を飛んだ仲間が無残にも死んでいく。
 俺は、生き残るのに必死だ。
 気付いたときには、敵が基地の方向へと向かっていた。
 「チッ!!」
 すぐに撃墜しようとしたが、すぐに他の敵に行く手を阻まれる。
 緊急回避。一瞬天と地が逆転する。
 どうすればいい。どうすれば・・・・・・。
 「敵アンドロイド、基地へ接近!」
 そういえば、ミクオがいない。何故だ?
 そうか、高みの見物か。
 腹が立つ・・・・・・。 
 「止むを得ん、シック2、シック3を呼び戻せ!!やつらに対抗できるのはシック隊だけだ。シック4はそのままゴッドアイの護衛を続行せよ。」
 司令部からの無線が聞こえた。
 馬鹿な。シック隊を呼び戻したらゴッドアイは・・・・・・。
 そんなことを考えている余裕はなかった。
 後方からはまだ敵アンドロイドが押し寄せてくる。 
 旋回し、引き離し、それらを何とかして撃墜する。
 敵は?あとどれくらいなのだ。
 次から次へと押し寄せてくる・・・・・・。
 そのとき、アンドロイドの群れの中に、二機の航空機が目に入った。 
 あれは、ゲノムパイロット用の・・・・・・。
 くそッ!!
 その二機から数発のミサイルが放たれ、俺に襲い掛かった。
 前方にはミサイル、後方には漆黒の量産型アンドロイド。
 ここまでか・・・・・・!
 その瞬間、俺の隣を三発のミサイルがすり抜けた。
 そのミサイルは、俺に襲い来るミサイルを迎撃した。
 後方から俺を追いかけていたアンドロイドが、炎を上げ、吹き飛んだ。
 「なんだ?!」
 振り返ると、そこには翠のラインが入った、白い機体がいた。
 「だい・・・じょう、ぶ・・・・・・!」
 「お前は・・・!」 
 「GP-1!」
 思いがけない助っ人だが、果たしてこの状態が逆転するだろうか。
 何よりも基地と、博士の乗っているゴッドアイが心配だ。
 そして俺は、生き残れるのだろうか。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Sky of Black Angel 第四十三話「泥沼」

次で死人が出ます。
うわ、どうなるんだろこの話・・・・・・。

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投稿日:2009/12/24 21:34:36

文字数:2,879文字

カテゴリ:小説

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