イルヴァルス大陸の北部には、もう一つの巨大な国が存在する。その国の名は魔導国家ジャッロ。魔導師の帽子と杖を装備した、華麗なる魔術師たちが集うジャッロには、その頂点にイルヴァルスの規律を守りし女王が君臨する。
魔導国家ジャッロの国内は箒に乗った魔術師たちが空を飛び交い、路上には道路に線路が敷かれた上を路面列車が走っている。南部へ位置する国、フォレスタ・キングダムに比べるとジャッロのほうが文明的に発展しているのがわかる。
ジャッロには他にも、魔導列車と呼ばれる王族用の蒸気機関車がある。これは、このセカイとは別のセカイに存在する【Nelson Steam Works】と云う蒸気機関で動く、乗り物造りを得意とする会社から購入したモノ。魔導列車はジャッロが、独自に走らせるための線路を魔法の力で生成できるよう改良を施している。
さらにもう一つ、存在する乗り物は魔導飛空艇と言う名の飛空艇である。これもまた、Nelson Steam Worksから購入した蒸気機関で動く乗り物。こちらは多数の魔導兵たちが乗り込んで、空を効率良く移動するために使う。
簡単な紹介が終わった処で、女王が居住する城へと視点を移すとしよう。この国、唯一の教会と併設するジャッロ城の内部に女王の間と云う部屋がある。
その女王の間のなかで、玉座に座る人物が居た。彼女の名はリアーナ・インテルノ・リザイア=ジャッロ。ジョンブリアンカラーのマーメイドドレスに身を包み、頭には女王の証である王冠を被っているのだ。
彼女は華麗さを求める性格のため、自身のプラチナブロンド色の長髪へ華やかさを追求したフレンチロールヘアでセットし、前髪の右の分け目をマスカットのヘアピンで止めている。
まだ、あどけなさが残るリアーナの齢は18歳になったばかり。彼女が若くして女王を勤めるのも理由(わけ)があった。リアーナが14歳のとき、先代の国王と女王である者、即ち両親が病で他界してしまい、それにより王位継承をしたからである。
女王リアーナは部下の魔術師たち数名に左右へ囲まれながらも、数へ臆することなく堂々と威厳を放ち玉座へと座っていた。そんなリアーナの元へ、白いコック服を着た一人の男が二人の魔術師に肩を抱えられ、女王の間へと連れられている。
そして……男を連れてきた魔術師2人のうち、一人が報告をする。
「リアーナ女王陛下、料理長のトスカーナを連行して参りました」
「よし……2人は下がってよい……。妾(わらわ)の前には、トスカーナ独りにせよ……」
「はっ! 畏まりました!」
2人の魔術師は女王の命令に従い、トスカーナと言う料理長の男を残して、同僚の居る左右の列へと加わった。
リアーナ女王は、料理長であるトスカーナを玉座から鋭い視線を持って見下しながら言葉を発した。
「料理長トスカーナよ……何故、そちが妾に呼ばれたか解っておるか……?」
料理長のトスカーナは、自分を上から目線で見下してくる女王の前で両膝を着いて跪き、質問に答えていく。怒りに満ちた女王からの問い掛けは、重苦しく緊迫した空気が辺りに流れ、男を見つめる他の魔術師たちを俯かせていた。
「はっはい……私っ、トスカーナ・マニアーコは女王陛下の3時のおやつである、ブリオッシュに焦げ目をつけてしまったが故、その失態について説明に参りました」
両膝を着いているがトスカーナは、その身をガタガタと小刻みに震わせている。これから起こる“ナニか”に怯えて……? いるのかも知れない。
G clef Link 魔導国家の頂点1
次話
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ジャッロ城のイメージ↓
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a6/Palazzo_Ducale%2C_Urbino_%28Marche%29_02.JPG
ジャッロはイタリア語で【黄色】を意味します。
ジャッロの単語には、イタリア文学と映画のジャンルの意味を持っていたりもしてました。
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