ミク(ミ):
彼は、生まれて此の方
生粋の詩人、というものではない。
…彼の口癖があった。
カイト(カ):
「僕は、自分自身がなんなのか、まったくもって分からない。」
ミ:褒めてもけなしても、なんなのだ。まったくもって変わらない。
カ:「僕は、理解不能がなんであれ、嫌で嫌で堪らない。
まして自分自身がそうだから。まったく嫌でたまらない。」
ミ:
ところで、昔から人は。嫌なことなんかすぐ忘れてしまう。
彼は、彼を忘れぬように、歌っているに違いない。
さあさあ、歌が始まるようだ。一体何を歌うものやら。
カ:
「この悲しみが誰かを 救うだなんて思えない
唐突に湧き上がるこの歌を 歌ったところで誰が聞く?
カ:歌は歌で音を奪い 声は声で色を攫う
ミ:嘘は嘘を消し去り(unis):影は影と泣く
静寂を踏み躙るその歌を 歌った報いはどこに来る?…」
ミ:
彼は、生まれて此の方
無類の旅人…というものでもない。
…彼が荒れた日があった。
カ:
「僕は、生きる意味がなんなのか、まったくもって分からない。」
ミ:褒めても煽てても、なんだかな。まったくもって効きゃしない。
カ:
「僕に、生きる意味は、あるのかな。まったくもって分からない。
僕に、生きる価値は、ないのかな。まったくもって分からない。」
ミ:
そのあと、歌を聞いた。滑稽な歌を彼は歌ってバカ笑いしてた。
彼は、彼を忘れるように、歌っているに違いない。
さあまた、歌が始まるようだ。同情したならお聞きなすって。
カ:
「この悲しみが誰かを 心の底から救えたら
誘惑は沸々とこの歌を 歌ってみせろと駆り立てる
カ:歌は歌で意思を宿し 声は声で歌を勾引う
ミ:嘘の嘘を紛らせ (unis):影の影を知る
情欲に抗えぬその歌を 歌った始末は誰がする?…」
カ:「この悲しみを
ミ:知らぬまま
カ:いられたならば
ミ:幸せだろう
(unis):声をなくした声で
カ:絶望を
ミ:踏み被る
カ:この歌が
(u)貫く御許に尊き光あれ
カ:この悲しみが誰かを 心の底から救えたら
歌でさえ見放したこの歌を 歌った心は報われる
歌は歌で息を宿し 声は声で歌を歌う
ミ:嘘と嘘を消し去り (u):影は影を抱く
深く深く忘れ得ぬその歌が―
―貫く御許に光あれ
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