日付が誕生日に変わり18歳を迎えると、さあ寝ようとベッドに潜り込んだ瞬間、突然部屋のドアがバーンと開け放たれた。
普段ポーカーフェイスに定評のあるのが嘘のように目を見開いている私に、開いたドアの前で悠然とシャフ度を決め、幼馴染のミクは目を輝かせながらこう言った。

「──肝試し、行こう!」
「……は?」



「せっかくのユリちゃんの誕生日なんだし肝試し行こう!」「いやそれ理由になってないからむしろそれこっちの理由だから。何でわざわざ自分の誕生日に肝試ししなきゃいけないわけ」「えー……だって肝試しだし……」「だっての使い方間違ってるよ? っていうか今から出掛けるとかうちの親が許すと思ってるの?」「大丈夫! そう思って、合鍵使って入ったときに、ユリちゃんパパとユリちゃんママに麻酔銃打っておいたから!」「待ってつまり不法侵入ってこと⁉︎ アンタマジ人ん家で何してんの⁉︎」「ユリちゃんと肝試ししにきました」「キリッとした顔で言うな!」「えー。肝試し楽しいよー?」「楽しいか楽しくないかの問題じゃなくて……!」「あ! もしかしてユリちゃん……怖いの?」「! ……何言ってるの? 怖いわけないじゃん」「それじゃあ肝試し行くよねー?」「ええ行ってあげましょうじゃないの」という安い挑発に眠かったこともあってか簡単に乗ってしまった私は、ミクと共に私の家をこっそり抜け出して(両親はホントにリビングで眠っていた)、肝試しと言ったら定番の学校に不法侵入した。
これがバレたら退学なんだろうなーと思いながら、持ってきた懐中電灯で辺りを照らしながら歩く。

さすがに0時をとっくに過ぎて見張りの人も帰っているのか、私とミク以外の誰もいない。

「私たちの誰もいないねー」
「いたらいたで、肝試し出来なくなるけど?」
「それは嫌だ」
「オイ」
「ねえねえ何か歌おうよ! あまりにも静かすぎて、私つまんない」
「はあ?」

言い出しっぺが何言ってんの……と幼馴染のマイペースさに今更呆れて──そこで重大なことに気がついた。
外を歩いていたときに聞こえていた静かに鳴く蝉の声や時々通る車の音も、学校に入った途端パッタリと聞こえなくなっていたのだ。
まるで、この学校自体が外と空間を切り離されたかのように……。

「…………」

…………いやいやいやそんなまさか。
窓を閉めているから聞こえにくくなっただけでしょ、と思ってよく耳を澄ますと、代わりに私の耳に、望んでいたのとは全く別の音が聞こえてきた。

ズルッ……ズルッ……

「…………え」

何かが這いずっている音が聞こえただけでもポーカーフェイスryが嘘のようにサッと顔が青くなったというのに、しかもその音は徐々に大きくなっているではないか。
やがて耳を澄まさなくても聞こえるほどに大きくなった音に、さっきまでぺちゃくちゃと喋っていたミクも気づいたようで、

「……あれっ? なんかズルッて音が聞こえない? ユリちゃん何か引きずってるの?」

と、何とも馬鹿らしい発言をした。
一体どうしたらそのような考えに辿り着くのだろうか。

それについても非常に気になるが、今はこの這いずる音のほうが先決だ。
そう判断して、馬鹿な幼馴染の発言を全力でスルーして音の正体を探る。

ズルッ……ズルッ……

大きくなっていく音は後ろから聞こえてくる。
そこで私は足を止めて、恐る恐る後ろを振り向いた。

ズルッ……ズルッ……ピタッ

すると同タイミングで這いずる音も止まり、

「ア……アソビマショ……アハハッ」

そこには、腰から下がない、上半身だけの少女が、口角をニタァと吊り上げていた。
しかも目がないというオプション付きで。

化物──テケテケは、私と目が合った(向こうは目がないけれども)瞬間、壊れたおしゃべり人形みたいに不気味な笑い声を上げながら追いかけてきた。
いつもはクールビューティーと囃される私は、突然のホラー展開にたまらず悲鳴を上げ、先を呑気に歩いていたミクの手を取り学校の廊下を走る。

オイ止めろ上半身しかない奴とかトラウマなんだぞ主に赤い△の女とか青い服の△とかエ○ンちゃんとかさっていうか目玉がないとか何? リアルエレ○ちゃん目指してるの? それなら髪色も紫にしろよ馬鹿あと○レンちゃんは※ネタバレのため自主規制※に騙されたせいで声が枯れてんだよだからちゃんと言葉が喋れないんだよなのにフツーに喋ってんじゃねーよ笑ってんじゃねーよそもそもエ○ンちゃんはギリギリまで生きてたんだぞどうみたってお前死んでんじゃねーか。

頭の中で駆け巡る台詞は実際に口にすることは出来ず、足を緩めないようにしながら後ろをチラリと見る。

下半身がないため両腕だけで床に這いずっているというのに、テケテケは走っている私たちと同じ速さでついてきていた。

──やっぱりコイツ、エレ○ちゃん目指してるのかよ!!

幸い、コイツには魔女の力がないのか、追いかけてくるだけで様々な(プレイヤーにとっての)邪魔をしたりはしてこない。
ブルー□リーみたいな色をした巨人みたいにBGMがなくなったら消え去るのだろうか、というか消え去ってほしい。

だが、現実は残酷で、必死に走っていた私たちの前に、ついに行き止まりの壁が現れた。

「しまっ……!」

壁の前で立ち止まって辺りを見渡す。
右側には学校用の大きな窓があるが、ここは4階なため窓を突き破って飛び降りる──なんて真似は出来ない。
左側は音楽室があるが、音楽室からピアノの音が聞こえるので正直入りたくない。

テケテケも余裕で私たちを捕まえられると思ったのか、口元をニヤつかせながらゆっくりと一歩一歩こちらに近づいてくる。

……私、コイツに喰べられちゃうのかな……。
そんなことなら、昨日お父さんに加齢臭が臭いとか言ったり、晩御飯のチャーハンの中に人参が入ってただけで残さなきゃよかったな……。

完全に諦め、過去に後悔し始める私。

だがミクはそんな私の前に出て、テケテケと対峙した。
その右手に何かを持っているようだが、彼女の背中でよく見えない。

そして──それは唐突に始まった。





「雪だるまつくーろー」\シュッシュッ/





……は?

「ギャアァァァァァァ」
「ドアを開けてー」\シュシュッ/
「ァァァァァァ」
「一緒に遊ぼう」\シュッ/
「ギャッ」
「どうして」\シュッ/
「ギィッ」
「出てこないのー?」\シュシュッ/
「ウァ」
「前は仲良くしてたーのにー。なぜ会ーえないのー?」\シュシュッ/
「ウゥッ」
「雪だるま作ろー」\シュッ/
「ァ……」
「おっきな雪だるまー」
「アッチイッテ、アナ」
「分かったよ──なーんて言うと思ったか!!」

このホラー展開に場違いな歌とスプレーの音に、さっきとは違う意味で目を疑った。

あの有名なディ◇ニー映画の歌を歌いながら、テケテケにファ◎リーズを吹きかけ、それにテケテケが悶絶をしているというカオス空間が、そこにはあった。
しかも音楽室から聞こえる音楽も何故かその曲になっていて、ますますカオス。

最後に盛大に歌詞を無視して、弱り切ったテケテケに大量の塩水が入ったペットボトルをぶっかけた。
断末魔を上げながら溶けていくテケテケを気にせず、今季アニメの東▽喰種の主題歌のサビを歌い始めるミク。

どうせなら歌い切れよ。
確かにそのアニメにも幼少期のアナの中の人が出てくるけどさ。

っていうか音楽室のピアノもミクに合わせなくていいよ。
お前ら打ち合わせしたみたいに息ピッタリだな。

やがて断末魔も消え去り、一瞬だけぐにゃりと視界が歪んだかと思ったら、すぐに元の学校に戻った。
だがさっきまで聞こえていた音楽室のピアノはピッタリと鳴り止み、代わりに蝉の声や車が時々走る音がする。

思わずその場にへたり込み、唖然とする私に、ミクは無邪気な笑みを浮かべて手を差し伸べた。

「──用も済んだし、帰ろうか!」



その後、私の家に帰るまでの間、ミクにさっきの超常現象について問い詰めたところ、彼女は全て答えてくれた。

まず一つはあのテケテケについて。
お察しの通り幽霊だったのだが、つい最近私がそれに取り憑かれていたらしい。
つまりあのテケテケは私とミクではなく私だけを狙っていて、私がミクの手を引っ張って走らなければ彼女が追いかけられることもなかったということだ。

二つ目はあの謎の空間は何だったのか。
アレはテケテケが私を捕食するために作った異世界とのこと。
だとすれば音楽室のアレは何? と聞いたら、彼女曰く「音楽室のピアノなんかは学校の七不思議の定番だし、多分七不思議がフツーに目視出来る異世界もあの学校にあったんだよ。だけどそこにテケテケがもう一つ異世界を作っちゃったせいで、七不思議の異世界とごっちゃになっちゃったんだと思う。まあ実のところ、私もあんまり分かんない!」とドヤ顔で言われた。
私のほうが全然分かんねーよ。

そして三つ目。
あんなことが出来たミクは一体何者か。
それに対しミクは、

「えー? 私はただの見えるだけの人だよー」
「いやいやいや。見えるだけの人がテケテケを退治出来るわけないでしょ」
「そんなの、ファ◎リーズと塩があれば、ホイホイのユリちゃんでもある程度の霊を駆除出来るよー?」
「へえ、ファブリー◎って除霊出来るんだ──ってエエエエエェェェェェ⁉︎ ホイホイ⁉︎ 私が⁉︎」
「うん。ユリちゃん重度のホイホイだもん。害のない奴とかは基本無視してるけど、ユリちゃんのこと食べようとしてる奴は毎回祓ってるんだからね! だけど毎度切りがないから、いっそのことユリちゃんにホイホイの自覚を持ってもらおうと思って、捕食される直前まで放置していたんだー」

そういえば、何度かミクからお守りを渡されてたことがあったことを思い出した。
当時の私は何故お守りを渡されるのかも分からずに、数日したら机の上に放置していたが。

私の家の前に着くと、ミクはポケットの中から浅葱色のお守りを取り出し、それを私に差し出した。

「はい、これ新しいお守り! 当分はこれで超常現象に巻き込まれるなんてことはないと思うから、なくさないようにね? なくしても次のを渡すときまでは新しく作ったりしないから」

ピシャリと言い放つ幼馴染に、私は自分の手の中で夜風に小さく揺れるお守りを見つめながら最後に訊いた。

「何で除霊するときにわざわざ歌ったの?」

そんな素朴な疑問に対し、彼女は不敵な笑みを浮かべて、

「──特に意味はないよ」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【Lily誕】このあと滅茶苦茶お守り大事にした

不法侵入はダメだよって話。
誕生日のカケラもないハチャメチャなコメディです。
見たところリリィちゃんの誕プレ小説がなかったので彼女を主人公にしました。
正直配役が逆でも別に良かったという(((

フ◎ブリーズは霊に効くって聞いたことがあります。
きっとユリちゃんは今度からファブリ◎ズをたくさんバッグの中に忍ばせるようになるんでしょうね。

時間帯から察してくれると助かります。
今滅茶苦茶眠いですおやすみなさい。

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閲覧数:253

投稿日:2014/08/31 05:07:28

文字数:4,354文字

カテゴリ:小説

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  • ゆるりー

    ゆるりー

    その他

    ちょwwwwww
    ミクさんwwwwww

    まさかのエレ○ちゃんで吹き、追い詰められてファ◎リーズを吹きかけ、アナ○の歌を歌ってたらピアノもそこに合わせたとなんというコンボで大爆笑。

    さすがりんご、発想がすごいね(褒め言葉)

    2014/08/31 15:58:53

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      返事遅くなってサーセェェェェェン!!(スライディング土下座)

      うん、君ならきっとエ○ンちゃんに突っ込んでくれると思った!
      ファブリーズなら生身の人間相手に追い詰められても目にシュッシュすればいいもんね!←
      音楽室のピアノは流行に敏感だからね!←

      ふふふ、もっと褒めてもいいんだぜ?←
      それと最優秀賞に選ばれて内心超荒ぶってるよ!!

      2014/10/19 13:27:06

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