15 ゲームでは高嶺の花 その1
どうやらミスティさんがようやく会場に来たらしい。
ミスティさん・・。今この傷つき、やつれた私の心を救ってくれるのはミスティさんしかいない。この人はmisakiと違って正真正銘女だ。詐欺師でもない。このオフ会に来て初めての恋が砕け散り、大好きだと思っていた友人は実は男でしかも詐欺師。今後misakiには危険だから関わるなとターナカさんに言われる始末。ついでにここで2回もブチ切れ、周りの人からはそれが私にとって喜びの感情表現と勘違いされている。
もう耐えられない。もう嫌。こんなの嫌。私が何をしたって言うの?
「んふっ、どうしたの?照れてるのかな?」
あぁ・・なんてミスティさんの声は色っぽく優しく聞こえるのだろう。私は涙が出てきた。そして立ち上がって振り返りミスティさんの胸に泣きつこうとした。が、私はミスティさんの顔を見て動きが止まった。
!!・・まゆげ太!それにノーメイク?・・いや、微妙に軽くメイクはしている・・のだろうか?あまり私が化粧なんてしたことないからよくわからない・・・。えぇ!!この人が、み、ミスティさん?
「んふっ、こんばんわリンちゃん。」
「・・・・・。」
私は口を開けたままぼーぜんとしていた。
「あら?どうしたのかしら?実物はイメージと違って驚いた?」
「は!あ、いえ、べ、別に・・。あ!こんばんわ、リンです。」
「んふっ、こんばんわ~。あら、かわいいわねー。お姉さんリンちゃん見てびっくりしちゃった。」
えぇ、私のほうこそびっくりしましたよあなたを見て。イメージと違うって・・。違いすぎる・・。
「おーー、姉さん来ましたよーー。」
「おそかったですねーー。」
「でも来てくれてよかったよーー。姉さんどんどん飲んでよー。」
遅れて登場したミスティさんに声がかかっている。誰もミスティさんを見て驚いてはいない。私だけがミスティさんの顔と眉毛を見て驚いている。
「んふっ、リンちゃんの隣座っていい?」
「え?あ、はい!どうぞ。」
「ふふっ、ホントかわいいわねー。どうオフ会楽しんでる?」
「は、はい!もちろんです。」
「そう、よかったー。ちょっとね、私仕事で遅れちゃったの。あ、リンちゃんよかったら一緒に乾杯してくれる?」
「は、はい、もちろんです。」
ミスティさんはビール、私はオレンジジュースで乾杯をした。
「あら、ずいぶん空のジュースビンがあるのね。結構ここのテーブルの人、ジュース好きな人多いのね。」
よく見ると私以外にオレンジジュースを飲んでいる人はいない。あまり覚えてはいないがたくさん飲んだ気はする。
「でも、どうしてリンちゃんここの席にいるの?いつも一緒にいるギルドの人は向こうにいるわよ。」
「あ、いや、他の知らない人とも話して交流を深めようかなーと思いまして・・はい・・・。」
「あぁ、そうなんだー。それはいいことよね。」
セシルさんという現実を直視できないということと、レンがまだ私に怯えているから離れて座っていますとは言えない。
それにしても相変わらず色っぽい声と話し方をする人だ。
ミスティさんは高そうなシャネルの鞄からメンソールの細長いタバコを取り出した。私はそのミスティさんのしぐさをじーーっと見ていた。
「んふっ、どうしたのリンちゃん?珍しいもの見るような目して。あら、タバコが吸ってみたいの?」
「い、いえ!違います。」
「ふふっ、まだちょっとタバコは早いわよね。でもちょっとどんな味がするかぐらい吸ってみる?」
「い、いえ!いいです。タバコの煙は苦手なんです。」
「あら、やだ、そうだったの。ごめんなさいね。お姉さんうっかりだわ。」
そう言うとミスティさんはタバコの火を消した。ミスティさんは笑顔のまま楽しそうにしている。
「あ、いえ、そんな、消してなんて、私は別に・・。」
「んふっ、もうかわいい。いいのよ、そんなにかしこまらなくても。」
「は、はい・・。ありがとうございます。」
そう言いつつもかしこまった状態でミスティさんの顔を見た。・・・まゆげが濃い・・。
15 ゲームでは高嶺の花 その2へ続く
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