>>06
このゲームの戦闘はもうあれから二時間は絶対やってる。そのおかげで無駄な動きも少なくなったし、このデザートイーグル・・・銃の扱いにも慣れてきた。まだ多少手が痺れたりバランスを崩して倒れそうになったりするが、まぁそれも戦闘に支障が出るほどではないし大丈夫だろう。
今はレベル上げ・・・じゃなく、もっと戦闘慣れするために、モンスターが多く出現するエリアばかりを通って例のビルが立ち並ぶ場所を目指してるところだ。ところがどっこい、ビルの聳え立つ街はまだ遠い。あとどれぐらいで辿りつくことができるだろうか・・・随分ここにいる気がするんだが。
地道な作業だと思いながらも、こうしてモンスターを倒しつつ進むしかない。徐々に敵の数が少なくなってきてるし、俺たちの頑張りも少しは報われた気がする。
今はそんなことよりも・・・。
「おいこら、ハル。てめぇさっきまでの元気はどーした」
前方をるんるんと進むリンとレンから目を離して後ろを向けば、そこら辺にあった木の枝を杖がわりにして何とか歩いているハルの姿。手を繋ぎながら意気揚々と歩いてるリンレンとどうしてここまで違うのか、と不思議で仕方がない。大体さっきまでリンレンと一緒に先頭を歩いてたのはどこのどいつだ。酷い山道ならまだわかるが、そんなに道は悪くないぞ・・・お前は老人か、こら。 こればっかりは鼻で笑うしかないっつーか、だらしないなって叱咤すべきというか。お前もうちょっと普段からトレーニングなり何なりしとけよなー・・・と呆れるしかない。俺の隣を歩いてるルカまでもが俺みたいに「何してんだお前」的な冷たい視線を浴びせているのが一番笑えない。何ていうか救いようがない。まぁそれでも結局は、友人であるからには助け舟を出すべきというわけのわからない使命感に駆られて助けてしまうわけだが。
一つ大きなため息を吐き出して、どんどん前へ進んで行く二人に向かって息を吸い込む。
「おーいリンレン!
お前らのマスターがへたってるからちょっとここまで引っ張ってやってくれ!」
素直な二人は、同時に「はーいっ!」といい返事を寄越して駆け戻ってくる。
若いっていいな・・・と思ってしまった俺はそろそろおっさんかもしれない。 俺、まだ二十代なんだけどなぁ。
そんなことを思っていたら、「あら、そうでしたの」なんて俺のデータぐらい知ってるくせに今知ったみたいな顔でルカが言った。子供に見えたって顔に書いてあんぞ、こら・・・と思うのは心の中でだけだ。本当に言えるわけがない。
「マスター早くするっスぅ!」
「シュンさんとルカさんが待ってますよ!」
「おー・・・俺はもう駄目だからお前ら先行ってろ・・・」
今にも死にそうな声を出してるハルに、「何やってんだアイツ」と言いながら笑うと、ルカも同意のようで呆れたように息をついていた。実際に、そのうち「死ぬ」とか言い出すだろう。
リンとレンに両手を引っ張られるハルは、随分若い双子の父みたいだった。あの疲れ具合から、兄弟っていうよりは親子って感じなんだよな。
「何でお前ってそんな元気なわけ・・・?」
「いや、お前が体力ねぇだけだろ」
何言ってんだ、と言いながら追いついてきたハルの背中をバシンと強く叩いてやる。その衝撃でよろめきながら、ハルはその場に座り込んだ。
まさかそこに根を張るんじゃないだろうなと思ったが、疲れていても「早くクリアしたいなー」と言っていたから大丈夫だろう。・・・・・・だよな・・・? こいつの今にも死にそうな顔を見てると心配になってくるが。
「・・・だらしないこと」
「・・・言ってやるな、ルカ・・・」
友達のよしみで庇ったはいいが、俺の心の中も頭の中も・・・いや、全身全霊込めてこいつがだらしないって思ってるんだよな・・・。
息を吐こうとしたところで、ルカが「来ますわ」と一言。
ああもう、とさっきとは違う意味でため息が出てきた。
リンとレンは既に手を繋いで歌う気満々だし、ルカは首を横に振って肩にかかっていた髪を後ろへ払いのける。
俺がこめかみの辺りに触れゴーグルをかけてホルスターに手を伸ばした瞬間、ガリガリとコンクリートを擦るような音と共にそれは現れた。人間ならざるもの・・・モンスターだ。
モンスターが現れた場所は、地面がコンクリートに変わっている場所。わかりやすく、ここから少し難しくなりますよってことだろうか。
その証拠にさっきまでのモンスターもいるが、大半がやつらとは全然違う。今まではどれもでかい図体に赤い目をした獣のようなものだった・・・それが今度は、人の姿を模していた。とは言っても人間ってわけじゃなく、目は今までのモンスターと同じ赤で、俺たちでいう皮膚と呼ばれるものは黒光りする鱗のようなもので覆われ、長い尻尾を振り回している。少し開かれたその口の中には鋭い牙が並んでいた。
「ひゅー・・・団体さんでお出迎えってか?」
「冗談言う暇があったらさっさと立ち上がれ、馬鹿」
口笛を吹いたつもりなのか、口を尖らせて声を出すハルに言ってやれば、「へーへー」とめんどくさそうに返事をして立ち上がる。
やつらの尻尾がゆらゆら揺れ、俺たちの動きに反応するようにキョロキョロと爬虫類を思わせる目が動いていた。
獲物を狙う肉食獣ってこんな感じだろうか。銃を構えながらそんなことをのんびり考えている俺は、きっと感覚がどうかしてしまったんだろう。
もう、敵を倒すことに躊躇いなどなかった。
この引き金を引くのも簡単で・・・命を奪うことすら、たったの一瞬。
「・・・・・・シュン様、銃は抜かなくて結構ですわ」
ルカの優しさも、この数時間でよくわかった。足手まといだとか口では文句言うが、ルカが俺の気持ちを誰よりも理解してくれてるってのはわかってる。だが俺は、作られた命のないキャラクターだとしても、女にだけ戦わすなんてできない。いや、男でも女でもそれは関係ない。パートナーなら、一緒に戦って当然のことだろ。
デザートイーグルを一撫でして、ターゲットに向かって構える。それ以上、ルカは何も言わずに悲しげな目をしたままモンスターの方を見据えた。
こいつと話しててわかったこと。口も態度も悪く見えるが、その端々の棘は折られていて、本当に人を傷つけるためのもんじゃないってこと。本当は人間が好きでパートナーが好きで、それを素直に出せない可愛いヤツだってこと。だからルカは、俺が普通の感覚ってヤツを忘れないようにいろいろと配慮してくれてる・・・らしい。
もしかしたら昔、ルカはパートナーに殺されたことがあるかもしれない。何故かそんなことを思った。確証はないしそんなことは聞かないが。それは今のルカのことではなくて過去のルカ・・・つまり別人のこと・・・俺には関係ないことだしな。
悲鳴のような甲高いモンスターの鳴き声。一斉に襲ってくるモンスターたちの数はおおよそ30ってとこだろう。戦闘に慣れてきた証拠か、視野が広くなった気がする。
ルカの援助やハルとリンレンの援助で向かってくるモンスターたちを右に左に避けながら、着地したままの体勢で何度も引き金を引いた。ゴーグルのおかげで、少しぐらい起動が外れていてもあたるようになっているし、俺も随分上達したらしくてほとんどはずれない。
銃声とモンスターたちの甲高い鳴き声と呻き声と、後は俺が地面を蹴る音とルカやリンレンの歌声、それからハルの声。
息つく間もなく、向かってくるモンスターを足蹴にして開かれたでかい口に銃口を向ける。腕を走る衝撃と共に跳んで後退、横から向かってくるモンスターの頭部に一発。その頭がぶちまけた黒い血を浴びながら、ゲーム用である銃に銃弾が装填されるような音を聞いた。
弾はこの世界じゃ全部オートで、弾の数はモンスターを倒すにつれて減るが、倒した報酬としていくらか増えていく。だからまぁ・・・銃の種類はあんま関係ないってことらしい。
前方のモンスターを撃った瞬間、後ろから「シュン様!」というルカの声がしてばっと振り返れば、そこにはいつの間にこんなに近付いてきていたのか、一匹のモンスターが牙をむき出して顔面に迫ってきていた。
考える時間などわるわけがない。
咄嗟に、銃を持ったままだった右手を思い切り横に振った。刹那、ゴキッと骨の折れるような音が響いて、モンスターの顔面が凹む・・・が、それで動きを止めるわけもなく、モンスターは俺の肩に鋭い歯を立て・・・ようとした。
ヤバイとかまずいとか、そういうことを考えて閉じた目。
そこにびしゃびしゃと何かがかかる感触がして、目を開くと・・・そこにはぱっくり割れた首があった。流石に首がなくなってしまえば動きを止め、それは首から黒い血を噴出しながら俺の方へと倒れてくる。モンスターは既に事切れていた。
「もう、油断しちゃダメっスよ」
「シュンさんもマスターも世話が焼けるんですから・・・」
思わず抱きとめてしまったモンスターの死体を弾くと、そこには返り血を浴びながらいつもの無邪気な笑顔を浮かべる二人がいた。二人の手には、何か糸のようなものがついているらしく、二人の間でその糸を伝って黒い血がポタポタと落ちていく。
手が今更カタカタと震えてくる。俺が恐ろしいと感じたのは、今モンスターに殺されるということじゃなかった。双子の目が鋭い光を宿していたようで・・・そのことが俺を震えさせたのだ。まぁ、その後の二人はやっぱりいつも通りで俺の見間違いだったんだが。
どうにかこうにかモンスターを一掃した時、リンとレンとルカの三人は何故か空を見上げていた。やっと終わったって顔してるハルと俺に見向きもせずに、ただ澄み渡る空を見つめていた。
今だから俺はわかる。それが予兆だったんだと。
・・・今更思い返してこれだったなんて気付いても、遅すぎるんだけどな。
俺もハルも、本当ならその時気付くべきだった。時折ルカが見せる悲しそうで寂しそうで・・・どこか儚いそんな笑顔の理由を・・・・・・そして周りの変化を、俺たちは気付くべきだったんだ。
全てはそう、多分ここから始まっていた。俺たちは悪夢が始まっていたことを知らず、作られたこのElysianという名のゲームを何の疑いもなくプレイしていたんだ。
>>07
Elysian 06
最後の方読んでて姫騎士とE・B思い出しました。あ、E・Bも早く修正せねば・・・!
夢の中、プレイ中にリロードした覚えがないのですよね・・・というかゴーグルに文字が出ていて勝手にリロードされてた気がします。
そんな感じを書きたかったのですが、終わって読んだら何だか違う感じになっていたという・・・。
戦闘に関するところの描写は普通のシーンとかより難しいなぁ・・・(涙
手が進むのが止まってゆっくりペースになる割にはちゃんと書けてないよねっていう・・・すみませんorz
できるだけいつも通り書くつもりではいますが、これから書くペースが少し落ちると思います。
楽しみにしてくださってる方がいたらすみません。
最後までちゃんと書きますので余裕をください・・・。
作業用BGM、皆様の助言通りいろいろ詰め込んでリピートしたら、何と作業時間3分の1に!
書き終わって時計見たらものの30分で書き終わっていたという・・・素晴らしい!
こんなんだったら最初から助言いただいた方がよかったなと思いました。
ありがとうございます!
07書くまでにはまた新しい曲を探して加えたいと思います。
コメント4
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ご意見・ご感想
+KK
その他
>>C.C.さん
挨拶省略します。
いよいよ本格的・・・でしょうか・・・これからも戦闘シーン書いていくのかな・・・?
リアルと感じていただけるとニヤリです。ありがとうございます。
現実味ない、ということはやっぱりゲームだと認識できるということで・・・それはいいところのような・・・。
いまいち上手く表現しきれてない感じがあって、首を傾げる思いなのですが。
とりあえず続きも早く書けるようにしたいと思います。それでは。
2009/04/18 22:34:27
まにょ
ご意見・ご感想
こんばんは!!いょぃよ本格的な戦いになって来ましたね。。
リンレンの不適な笑みとぃぅか・・。冷たい感じが伝わってきて、なんだか怖いです。
戦闘シーンとか、めちゃくちゃリアルで。。私がこぅぃう夢みたら、なんか悪い予兆なのか>とか思っちゃぃますw
でも読んでる私は、もぅワクワクですww でも、不穏な影が・・・・。
銃弾は勝手に装備されるんですね!なんか、ちょっと怖いですょね。現実味なくなっちゃって。。
人を殺すことに慣れちゃダメですよね・・。(ルカ様はやさしぃですなぁ・・w)
話、それましたね!! では。07の展開がさらに楽しみですーー!
2009/04/18 21:53:19
+KK
その他
>>FOX2様
こんばんは、FOX2様。
戦闘シーンの描写、高水準とか・・・もう泣いていいですか・・・!
小説を読むと確かに書き方が変わったり成長したなという感覚があったりはするのですが、影響されすぎてストーリーが似てしまわないかと不安になりもします。・・・まぁ、そう言わずにしっかり勉強したいと思います。
確かに、自分もエアガンではリロードする時が一番楽しいです。
FOX2様の言う通りだと思いますよ。リロードは書くべきところだったと思います。ですが、今回は夢のまま進んでいること+ゲームの中の話ということで多めに見ていただけるとありがたいです・・・もしまた戦闘ありで銃を使うような小説を書くようならちゃんと描写したいと思います。その表現力があればの話ですが。
BGMの件は本当にありがとうございました。おかげさまで次の話もすぐ終わりそうです。ただあげる時間がないかもしれないのですが・・・。
自分は朝家のことしてる時と仕事場行き帰りと・・・あとはこの作業中ですかね。PC付けてる時は大抵聞いてますが。
カールマイヤーというと・・・あのホラー苦手な人には無理そうなアレですよね。
でも、言われてみればElysianの戦闘とかにはいいかもしれません・・・精神破壊される感じというか欝になりそうな感じというか無性に何かに謝りたくなるというか・・・(褒め言葉です
ちょっと最終話に向けて検討しておきます。ただ感情移入しすぎて自分が壊れないか不安ですが・・・。
長々と失礼しました。
2009/04/15 23:16:13
FOX2
ご意見・ご感想
こんばんは。
戦闘シーンの描写ですがかなり高水準だと思います。表現方法などは小説を書いていくうちに上がっていきますし、他の小説を読むことで一気に上がります。
リロードが自動ですか。やっぱりゲームの中だから便利ですね。
しかしリロードとは銃に命を吹き込む神聖な操作の一つ、決しておろそかにしては・・・・・・というのは僕の考えです。
実はエアガンはリロードするときが一番楽しいと思ってたり。
BGMで作業時間が早くなりましたか!やりましたね。
やはり作業するときは音楽ほしいですね。僕は机の前にいるときは遊びも勉強も全てBGMつきです。
ちなみにカールマイヤーの曲を(ヘッドフォン&大音量で)かけるとある種の集中力が高まると思います。
2009/04/15 22:51:35