オリジナルのマスターに力を入れすぎた結果、なんとコラボ(2人)でお互いのマスターのお話を書けることになりました!
コラボ相手は、カッコいい素敵なお姉さんの生みの親、つんばるさんです!
上記の通り、私とつんばるさんのオリジナルキャラ(マスター)が登場します……というか、マスター(♂)×マスター(♀)です。
そして、ところによりカイメイ風味ですので、苦手な方は注意してください。

おk! という方は……。

(つ´ω`)<ゆっくりしていってね!>(・ω・春)




*****




結局、何度も試した後に、USBの中の生テキスト自体が開けない事に気付いた。俺のパソコンからのコピー自体が上手くいっていなかったらしい。
残念だ、確認してもらおうと思っていたのに。
だが、編曲したデータは開く事ができたので、ひとまず「ラ」だけでVOCALOID4人に歌ってもらった。
できれば歌詞付きで歌わせたかったが……それでも、彼らの歌声が合わさった事で、改善点も見つかってくる。
少し物足りない気もするが、作業自体は充実していたと思う。
次は、また来週末に俺の家で。
2人でそう決めて、アキラの家を出た頃には、夕方になっていた。




―Grasp―
悠編 第六話




家への道を歩く間、俺はずっと今日の作業内容を思い返していた。
前奏部分を少し地味にしすぎていたとか、逆にサビの盛り上がりがでしゃばりすぎているように聞こえたとか。
やはりインストだけでは、気付ける事に限りがある。


「ねえ、マスター。 ……マスター、聞いてますか?」

「ん? あ、ああ、悪い、何だ?」


1人で考えにふけっていて、めーちゃんが声をかけてきていた事に、すぐに反応できなかった。
俺の返事を聞いて、めーちゃんとカイトはそろって溜め息を吐いた。


「何だ、じゃないです。……なんだか、ちょっとだけアキラさんの具合が悪そうでしたから、どうしたのか気になって……」

「そうだったか?」

「貴方って人は……」


呆れたような声に、俺は困惑する。
もう一度、アキラの家での事を思い返してみても、特に変わった事は……。


「まさか、本当に覚えていないんですか?」

「だから何を」

「……マスター、貴方アキラさんに腕を振り払われてたでしょう」


めーちゃんに言われてから、やっと思い出した。
アキラの肩越しに、PCを操作しようとして、不意に腕を払われた記憶。


「そういえばそうだったな」

「そういえばって……」

「特に何て事もないだろ。椅子すすめられただけだし」

「でも……」


イマイチ納得がいかないような表情で、2人は顔を見合わせる。
ちょうど自宅にたどり着いたので、鍵を取り出しながらめーちゃんたちに言ってやった。


「考えすぎだ。あいつの事だ、俺をおちょくるつもりだったってとこだろ」

「そうならいいんですが……」


そう言いつつも、まだ渋い表情をしている彼らを残して、ただいま、と言うのもそこそこに、練習部屋へ向かい、PCを立ち上げる。
先ほど考えていた事を試すためだ。思い付いた事は、なるべく早く実行する。それが俺のポリシーだ。
まずは、コピーに失敗していた歌詞のデータをコピーし直す。また今日と同じような事になったら、いつまでたっても前に進まない。
ちゃんとコピーされた事を確認して、ついでに少し書き直してから、曲の手直しにかかる。
こっちは単にデータのコピーで済む事ではない。夕飯と風呂をはさんで、やっと今日の時点で自分で思い当たっていた箇所の修正は終わった。
いざ始めると、とことんやってしまうから余計に時間がかかる。
とりあえずそのデータを保存して、そこで躊躇した。
歌詞、インストのデータはひとまずこれでいいとしよう。残るは……歌声。
「ラ」だけでも解る。アキラに比べ、俺の調声はかなりお粗末なものだ。
後輩に劣っているという悔しさより、実力の釣り合いが取れずに足を引っ張ってしまいかねない、その事に焦っていた。
仮に歌詞も編曲も良かったとしても、バランスが悪ければ曲は崩れる。
が、どこをどうすれば綺麗に聞こえるかなど、さっぱり解らないのが現実だ。
エディターを見ているうちに、何が何だか解らなくなるのが目に見えている。


「……仕方ない、やるか」


誰にともなく呟いて、一旦開いているファイルをすべて閉じる。
代わりに、今までほとんど使ってこなかったフリーソフトを立ち上げた。
……かつて、俺にとって音楽は、逃げ道でしかなかった。
美憂の影響で少しは知識もあるが、本気でやる気はさらさらなく、めーちゃんを購入するまでは、とにかくいろんな物に手を出していた。
このフリーソフトもその1つ。使うのは、随分久しぶりだ。


「カイトー、ちょっといいか?」

「あ、はい!」


ドアを開けてカイトを呼ぶと、彼はすぐに来てくれた。ちょうど今から風呂に入ろうとでもしていたのだろうか、着替えの服を腕に抱えている。


「悪いな、急に呼んで」

「いえ。どうかしました?」

「ちょっと訊きたいんだが、お前らのマイクって、外せたよな?」


俺の問いに、カイトはぽかんとして数回瞬きを繰り返した。


「外せますけど……どうしてですか?」

「いや、できるなら、少し貸してほしいと思って」

「マスター、ご自分のマイク、持ってませんでしたっけ」

「かなり古いのがな。それを使うよりは、お前のを借りた方がいいだろ」

「はぁ……どうせこの後外しますし、別にいいですけど」


何かあったんだろうか、とでも思っているような顔で、カイトはインカムマイクを外して渡してくれた。


「あの、壊さないで下さいね?」

「んな大事なものを壊すか。ありがとうな、カイト」


礼を言うと、カイトは少しだけ笑って、去っていった。
対する俺は部屋へ引っ込んで、渡されたマイクをPCに接続する。こういう使い方をするのは初めてだが、まあ何とも便利なものだ。


「よし」


ドアが閉まっているのを確認してから、ヘッドホンをして、マイクを手に握ってインストを再生する。
そのタイミングに合わせて、息を吸った。

自分の書いてきた歌詞を1つ1つ拾い上げて、旋律に乗せていく。
難しい事は何も考えずに、自分の思うように、詞を紡ぎ続ける。
明るくて元気、とは言えないような詞だろうが、それ故に、俺は歌にのめり込んでいた。

思い出されるのは、やはりあの日の……忘れてくれ、と口にした彼女。酒に酔って、その後泣きながら、泣いていないと、必死に言い張っていた。
……悔しい。
彼女の事を、何1つ理解してやれていない自分が、悔しくてならない。
いや、理解してやるという考え自体が、思い上がりなのかもしれないが……。
それでも……たとえ僅かな力だったとしても構わない、俺はアキラの支えになりたい。
アキラだって20歳の女の子だ、辛い時だってあるだろうに……それを口にする事など、滅多にない。
そんな事をしたら、自分が余計に辛いだけだと、俺は身をもって知っている。
……1から10まで、ことこまかに教えてくれとは言わない。だがせめて、その辛さの末端だけでも、背負わせてほしい。
背負っているものの重みで、潰れてしまう彼女は見たくない。

俺はここに、お前が手を伸ばせば届くところに、いてやるから。
だから……。

どんどん強くなっていく感情を、ただひたすら詞に込めて、俺は歌っていた。


「……ふぅ」


歌が終わり、思わず息をつく。
それほど激しい曲調ではないはずなのに、疲労感すら感じる。
ヘッドホンを外して顔を上げると、閉まっていたはずのドアが開いていて、ぽつんと、ミクが佇んでいた。


「聴いてたのか」

「すみません……歌が聞こえたから、つい、気になって」


ミクはそう言うだけで、その場から動こうとしない。
仕方なしに、こちらから寄っていくと、ミクはおずおずと俺を見上げた。


「謝らなくていい。うるさかったか?」

「いえ、まさか、そんな事ないです! ……あの、さっきの歌……コラボの曲ですよね」

「ああ。少し……参考にしようかと思ってな」


元々そのつもりでソフトを引っ張り出したというのに、とっさに言葉が出なかった。
当初の目的を忘れるほど、歌っている時の思いが強かったのか……そう思うと、少しだけ顔が熱くなる。
それに気付いているのかいないのか、ミクはほんの少し首をかしげて、訊き返してきた。


「参考、ですか?」

「どこをどう歌ってほしくて、こういう編曲にしたのか……エディターを見ながら考えるより、自分で歌ってみて、それを聴いた方が手っ取り早く理解できるだろ?」


曖昧な感覚ではなく、はっきりと確信を持って、掴めるように。
俺の説明に、ミクは何か考えていたようだが、すぐににこりと笑った。


「やっぱり……今回のコラボ、力を入れてるんですね」

「そうか?」

「はい。あ、あの、ひがんでるわけではなくてですね、その……最近のマスター、生き生きしてて……かっこいいな、って」


その言葉に、俺はチクリとしたものを感じた。
ミクと付き合う事はできない……その事は、以前彼女に告白されて断った時から、変わっていない。
だが、俺にとってミクが大切な存在である事もそれと同じだ。
俺の真意を、ミクにはまだ言うことができない。無闇に彼女を苦しめたくはない。
いずれ、知られてしまう事だとしても……俺はどうしても、ミクにだけは、と思ってしまっている。


「歌、すごく上手でした。聴き入っちゃうくらい」

「……お前らにはかなわないよ」

「でも、やっぱり上手ですよ。……あの、マスター」


見上げてきた笑顔は、穏やかで。


「……頑張って下さいね」


少しだけ、苦しかった。
ミクが廊下を歩いていってしまってから、俺は、彼女にマイクを預ければよかったかもしれないと、ぼんやりと思っていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【オリジナルマスター】 ―Grasp― 第六話 【悠編】

実は前からこっそりそういう事を考えていたんですが、なんとコラボで書ける事になってしまった。
コラボ相手の方とそのオリキャラさんが素敵すぎて、緊張しております……!



わっふー! どうも、桜宮です。
悠さん、自分なりに努力してみる、の巻。
今回歌ってくれてますけど、これはかなり前にですが、実際に夢で見た内容だったりします。
いつか使いたいと思ってはいましたが、ここで使えてよかったです^^
でも夢の中の声にまったく心当たりがないんですよね……自分の夢なんだから、どこかで聞いたことがあるはずだとは思うんですが。

前回のアキラ編にて、つんばるさんもおっしゃってましたが、ピアプロトップの注目の作品、つんばるさんに教えてもらって、見た瞬間すごくびっくりしました。
これだけ、私の文章を見てくださってる人がいるのかと、びっくりと同時に嬉しかったです。
そして今回で、テキストの投稿がちょうど100件目。とうとうここまできたと思うと、ちょっと感慨深いです。
これからもまだまだがんばりますよー!


アキラ編では、意外な方が出演されているようですので、そちらもぜひ!


東雲晶さんの生みの親で、アキラ編を担当しているつんばるさんのページはこちらです。
http://piapro.jp/thmbal

閲覧数:250

投稿日:2009/10/17 12:33:34

文字数:4,110文字

カテゴリ:小説

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