アヤトリ

[A]
希薄な世界に目もくれず
するりと指の間を抜けていく
私の手から貴方の指へ
[A]
暗く軋んだ雨で満たす
一人の夜は紫煙を燻らせて
螺旋さえも塞ぎ止まる
[B]
檻に囲われた獣も　飼い慣らされて褒められ
水槽へ消える魚は　愛に堕ちて海を捨てた
[S]
青糸指と絡ませて
捕るのは貴方の涙でしょうか
雁字搦めの鎖月
絡まる先は私の番かしら。
[A]
濃密な空気にあてられて
どろりと指から零れおち
貴方の手から私の指へ
[A]
温く緩んだ涙浸す
二人の宵は指へと誘われて
離れる頃思い埋める
[B]
井戸に囚われた蛙も　底で幸せを見つけ
籠に閉じ込めた蝶は　狂いながら羽ばたく
[S]
黒糸指に揺蕩わせ
斬るのは貴方の縁でしょうか
彷徨い歩く宵時雨
揺蕩う先は貴方の番でしょう。
[C]
縛られているのは　貴方だと思っていたわ
繋がれているのは　同じだと信じていた
この糸は扉へ　続いていて動けないわ
どこにいても貴方が　鍵を開けてくれること
待っていてもいいでしょう？
[S]
弄んでは辿りゆき
括った私を繋ぎとめてよ
せめて　閉じた　この糸を
貴方の手に掛けてほしい
[S]
赤糸指で縒り合せ
手繰るは貴方の心でしょうか
捩れ　解れ　狂い糸
縒逢う先は私の番かしら。