<おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪ 第2話 鏡音レン自慢の技術>

(102号部屋 技術研究部)

そこは大量のフルーツコンテナが置いてある、まるで青果店のような部屋だった。

ステン!

ネル:痛ぁ~
部長の鏡音レン(以下、レン):ネルさん、そこら辺バナナの皮が溜まっているから、歩くの気を付けてね。
ネル:レンさん、もう遅いですぅ・・・・。いい加減、片づけましょうよぉ~。
レン:今、研究している技術の結果が出るまでちょっと待ってね。
ネル:レンさん、格好いいんだけど、研究にのめり込むと他が見えなくなるのよねぇ・・・でも、そんな貴方が好きなのよぉ~♪。

升太:あの~
ネル:まったくもぉ~・・・ん?、何か用ですかぁ?。

升太の後ろからテトが顔を出した。

テト:ネルさん、おひさ~♪。
ネル:あ、テトさん!・・・・ってことは、挑戦者が来たのね。
升太:希望して来たんじゃないけどね。
ネル:レンさ~ん!、挑戦者1名、入りましたぁ~♪。
升太:俺はファーストフードの1万円札か・・・・・。

レン:ん?、挑戦者?、もうこんな忙しいときに・・・・。

レンは持っていた果物をテーブルに置いて、座っていた回転椅子を回して、升太の方を向いた。

レン:僕は“技術研究部”の部長の鏡音レンで、この女の子が部員兼助手の亞北ネルさんだ。
ネル:宜しくですぅ~♪。
升太:あ、挑戦者の“墓火炉 升太”です。宜しく。
テト:でもって、案内役でこの人の“コイビト”のテトでーす!。
升太:なんかグレードアップしているぞ・・・・。

レン:えっと、例のゲームの挑戦者なわけね。僕、忙しいから、勝つなら勝つで、さっさと次進んでよね。まぁ手加減はしないけど。
升太:(な、なんて無愛想な人だ・・・・。だが、こういう人の方が強いんだよな、RPGとかじゃ・・・)
レン:えー、勝負方法だけど、その緑の鍵で来たってことは、ミクさんを突破して来たわけだ。ここは大食いではないから安心してくれ。
升太:理由はなんだか知らないですが、果物なんてもう腹に入りません・・・・。
レン:いや、この果物は僕の研究材料兼勝負道具でもある。でも食べるわけではない。
升太:どういうことですか?。
レン:僕の研究は、「フルーツカッティングと盛りつけの美しさ」だ。研究では多岐に渡る果物を扱うけど、勝負で使うのは、一番の研究対象である“バナナ”だ。
升太:・・・・・・は?。
ネル:“カッティング”技術の事。普通は沢山の果物を使って、1つを作るんだけど、勝負ではバナナのフルーツカッティング技術を競うのよ。
升太:はぁ、それで“技術研究部”なんですか。でもそれって“調理”の範囲なんじゃないの?。

レン:・・・・・・ミクさんは昔はココに在籍していたんだよ。だが“長ネギLOVE”の事で意見が食い違ってね。彼女と助手のプリマさんが出ていって、隣の料理研究部を別に作ったんだよ。
ネル:長ネギのベジタブルカッティングと果物のそれじゃあ、研究対象が違うからね。

升太:あの~、なんかそちらも忙しいみたいだし、そろそろ始めましょうか。で、勝負をするのは誰なんですか?。
レン:ネルさんだ。判定は僕。
ネル:宜しくぅ~♪
レン:ちなみに僕の一番弟子だから、腕はそれなりの物だと思って欲しい。あと、僕は純粋に技術を判定するから、勿論、ひいき無しだ。
升太:つまり、ここの勝負は貴方を満足させないと、勝ちにならないわけだ。
レン:ま、そういうことだ。彼女のフルーツカッティング技術を目で見て参考にしてもいいし、我流でやって貰ってもいいし、そこら辺は自由だ。バナナだけは僕の目利きで選んだ同じ質の物を使って貰うよ。
升太:それでこんなにバナナのコンテナが置いてあるんだ。

レン:じゃあ、始めようか。この調理台と道具を使ってくれ。

ネルと升太はエプロンをして、頭にバンダナを巻き、それぞれ1本の小さなフルーツカッティングナイフを用意した。

レン:TVの勝負番組とかで知っていると思うけど、フルーツカッティングには複数のナイフと場合により“彫刻刀”まで使うこともある。だがこの勝負ではそのカッティングナイフだけで完成させられる作品に限定します。時間は15分と短いから、手際よくやってくれ。
升太:フルーツカッティングなんて、やったことないよ・・・・。
ネル:頑張りますよぉ~♪
レン:では、始め!。
升太:と、とにかく、“アート”な感じにしてみよう・・・。
ネル:(キラーーン☆ イメージがキタわ!。そしてバナナの声が聞こえてきた!)

ザッザッザッザッザ!

ネルはいかにもアーティストのような手さばきで、バナナの皮をアートにカッティングしていった。

升太:ええっと・・・・こ、こんな感じか?。

ザックリ・・・・ザックリ・・・・

升太のバナナは、バナナの原型を止めているとは言い難い、“よくわからない何か“に変形していった。

テト:あっちゃ~、レンには悪いけど、こりゃ、当分ここで足止めかな・・・・。

~15分後~

レン:終了、それぞれの作品を、まな板の上に置いてくれ。

ダン ダン

テト:うっわ~、ネルさんの作品、凄い!。ナイフ1本でここまでやれるの!?。

確かにネルの作品は、様々な技術を盛り込んだ、15分で作ったとは思えない物だった。

テト:それに比べてカレシのは・・・・どうしてそうなった?。

升太のまな板には、“異形の物体”が乗っかっていた。最後はヤケなのか、一番上にナイフが刺さっていた。

升太:仕方ないだろ!、フルーツカッティングなんて、今回が初めてなんだから!。
テト:このゲームでは、それは言いっこなしよ。
升太:あぅぅぅ。

レン:では公平に審査させて貰う。まずネルさんのから。

レンはまな板の上を360度、じっと見つめ、いろいろ評価していった。

レン:うん、ここは網目で、ここが花模様。うん、皮の“黄色”を良く織り交ぜていて、非常に綺麗だね。上達したものだ。
ネル:てへへ♪
レン:でもって、升太君の方だが・・・・・・・・作品、どれ?。
升太:そのまな板の上に乗っかっているものです・・・・。
レン:え?、これ?。こ、これねぇ・・・・・。な、なんというか、凄く“前衛的”だね。最後のナイフ刺しって、なんか意味あるの?。
升太:“食べ物のバナナを殺した“って意味です・・・・・。
レン:なるほど。でも、これはちょっと外させて貰うよ。
升太:はい・・・。

レン:うーん、ジグザグな感じが荒いけど、頑張った感はあるよ。他は・・・うーん・・・・。

レンは見終わって1分考えて、結果を下すことにした。

レン:えっと、ひいきを抜きにしているのは前もって言ったけど、これはネルさんの勝ちかな。一応“選評“を語ろうか?。
升太:いえ、解っているので、いいです。
レン:わかりました。えっと、負けちゃったワケだけど、そういう場合の事はテトさんに聞いてある?。
升太:た、確か勝てるまで挑戦するんですよね。死ぬまで。
レン:まぁそう言うことだ。でもここは技術系の部活だから、100回位、ネルさんの技術を目で盗んで学習すれば、勝てると思うよ、たぶん。
升太:うぅぅ、たぶん100回でも勝てないと思います・・・。
テト:まぁそれがルールだから、あきらめて次頑張ろう!。
升太:ところでテト、ここの突破者はいるのか?。

テトは例の手帳をパラパラ読みして、閉じてしまって、升太の方を向いた。

テト:そうね、代表的な人だったら、鯵善庸一って料理人が一発で通過しているな。他の突破者もおおむね料理人ね。珍しい所では刀鍛冶の息子さんの座苦霊炉さんってのも、3回で突破しているよ。
升太:俺の命もここまでか・・・・。

ガチャ

???:おじゃまするよ~。

テト:え!?、ミクさん!。
升太:ミクさん!?、え?、あれ?、これってもしかして!?。

レン:久しぶりですね、ミクさん。
ミク:こちらこそ、おひさミク。
レン:長ネギ料理の腕は上達しましたか?。
ミク:おかげさまでレシピも3桁行ったミク。
レン:それは良かった。だが、大食いの腕は落ちたようだが?。
ミク:こっちにもいろいろ事情があるミク。
レン:で、何をしに古巣に来たのかな?。戻ってくるつもりなら、お引き取り願いたいが。
ミク:残念ながら出戻りに来たんじゃないミク。升太さんを助けに来たミク。
升太:!!!。
テト:ちょ!、ちょっと!、そんなことダメよ!。
ミク:テトさん、確かあのゲームのルールでは、“本人が勝たないとダメ“とは書いてなかったはずだけど?。
テト:うっ・・・確かに“部活に勝つ”としか・・・。でも今までこんな事、無かったんだから・・・。
ミク:テトさんにしても、レンさんにしても、さっさと成功者が出てくれた方がいいんじゃないミクか?。

レン:ま、まぁ確かに僕も研究が忙しいからな。
テト:確かに成功者が出てくれたほうが、いろいろ助かるけど・・・。でも、案内役の私だって手伝った事、1回もないんですよ!。
ミク:慣習は変化してなんぼミク。私に大食いで勝ち、隣のモニターでここの様子を見た限りで、升太さんはここを突破できそうもないと判断したから、来たミク。
テト:ちょ!、だって、これまでこういうケース、何度もあったじゃないの!。でも挑戦者が続行不能になるまで、1回も手助けしたことないのに、なんで今回だけ手助けするの!?。

ミク:それは・・・・ミクが・・・・升太さんを好きになったからミク!!。
升太:!!!!!!!
テト:ちょ!、この人のカノジョはテトだけよ!。
ミク:会話を聞いている上では、升太さんはあなたをカノジョとは認めてないみたいミクよ?。
テト:うっ・・・・

升太:(おおお・・・・これはもしかして、両手に華モード、恋愛フラグ2つ立った・・・・・あ、片方は死神だっけ・・・)

ミク:まぁ、具体的に言うと、さっきの勝負で見せた、フードファイト、そして、長ネギ料理を抵抗無く、しっかり食べてくれた姿に惚れたミクよ。

升太:(がっくー、惚れたのはフードファイトの姿だけだったのね・・・まぁいいや)

レン:・・・・まぁいいだろう。で、手助けって言うと、この人の代わりに勝負を受けるわけだね。
ミク:いえ、こちらから、もっと難易度の高い方法を提案するミク。
テト:ああああああ、慣習が・・・・慣習が・・・・
レン:“もっと難易度の高い方法”?。
ミク:ミクと勝負をするのは、“レン”ミクよ。ここにある果物のどれでも自由に使ってフルーツカッティングして、ここの大皿1つに盛りつけるミク。そしてジャッジはここの3人ミク。3人に見て貰って食べて貰って、“引き分け無し”で選ぶミク。2つを取った方が勝ちミク。
レン:・・・・ほぉ、昔の勝負のリバイバルってわけか。いいだろう。一度雌雄を決しておきたいと思っていたところだ。今やっている研究にも役に立ちそうだし。ちなみに本気でやるぞ、いいな。
ミク:こっちも本気モードミク!。

升太:あああ、ミクさん、すみません。
ミク:気にしないでいいミク。個人的な事も介入しているミクからね。
レン:では、大きい方のキッチンに移動しよう。どの道具も2セット分以上はある。好きな物を使うといい。

一行は部屋の奥にあった、大きいキッチンに移動した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪ 第2話 鏡音レン自慢の技術

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投稿日:2010/03/02 21:18:16

文字数:4,674文字

カテゴリ:小説

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  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    nai☆様、今晩は!

    > シュガースポット付き

    この黒い部分が一番美味しい箇所なんですよね。私は苦手です・・・・。

    > 料理の盛り付けの技術ね

    今回の”対決”は、主に文化部の”部活でやっていそうな事”をネタにしてます。まぁ大食いとかカッティングが、ではそうか、というと、ちと自信ないですけどね。というか部活の物そのままでは対決にならないので、そこら辺はアレンジしてます。

    > よくわからない何か…ですか

    この言葉が”出来上がった物”の表現に最適だったので、これにしました。なんというか、バナナの原形をとどめていないというか・・・。

    > 主人公君に一目惚れしたミクさんの乱入だぁ~!!!

    食べっぷりに惚れたミクさんが助けてくれました。というかこの部室棟の方々はちょっと変わった設定にしてあるボカロ達が活動してます。カッティング研究のレン以上に変な、大食いでネギ料理に固執するミクさん。さて、これからどんなボカロが出てくるのでしょうか?。

    > 私の記憶が確かならば

    はい、もろにあの鉄人でございます。やはり楽しい題材です。(28号ではないです~)。

    > 本当にそれでいいのかい

    片方が死神で、片方は変な大食い料理人。うーむ、本当にいいのだろうか・・・・。あ、死神の方は終盤の伏線です。お楽しみに~♪。

    > まぁ、だいたい合ってるよねw

    はい、だいたい合ってると思います。というか、もろにそれですね。鍵とかそう言う物で次に進むシチュ。出来るだけ毎回使うことのないようにしますね。

    > 事態はいつのまにかテトの制御が及ばないものになっていた!?

    これも終盤の伏線です。というかテトさん、さっさとこのゲームの成功者を出したいとか言っているのに、このセリフでは”そう簡単に先へは進ませない”って言っているんですよね。これはいったいどういうことなのか?。お楽しみに~♪

    このたびのご閲覧、コメント、有り難うございます。

    2009/10/20 16:56:51

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    nonta様、今晩は!

    > 座苦霊炉・・・ひょっとしてガ、ガンオt…

    いやー、さらっと書いちゃったんですが、考えてみれば”凄い名前”でしたね。”座苦”って名字は漢字違いであるかもしれませんが、”霊炉”(れいろ)はちょっと・・・・。この人の親父、やっぱりガンオt…


    > 美味しくて普通じゃ有り得ないインパクトある料理を作りそうですね

    ”巨大かき揚げ丼”とか”パイナップルの器のカレー”とかから想像するに、レンを思いっきりうならせるカッティングフルーツを作ったんでしょうね (^o^)/

    > もうどうしようもない絶望的状況かとおもいきや、かっこよく救世主登場!

    ここら辺は、某”怪傑なズバッtさん”風に、

    ミク:ボロン~♪、お前も相当の腕だが、世界で2番だ
    レン:なに!、では世界で1番は誰だ!
    ミク:(親指で顔をさして) わたし。

    な感じをイメージしました。凄い助っ人風です。

    > 今回はミクさんに救ってもらったということでラッキーでした♪

    そうですね。今回の運は、あり得ない所からやってきた助っ人に勝ってもらった運ですね。

    > 私の記憶が確かならば・・・

    ”キッチンスタ○アムへようこそ! 主宰の・・・”な感じです。もろにそこからネタ出ししました♪

    > 両手に華といっても

    これは実は後々の伏線です。それがなんなのかは、最終回をお楽しみに。まだ7回くらい部活バトルは続きますが、最後は・・・・・

    このたびのご閲覧、コメント、有り難うございます!

    2009/10/20 16:37:01

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    ayuu様、今晩は!

    > 新作読ませていただきました

    毎度有り難うございます!。励みになります!

    > カッティング勝負面白かったです!!

    有り難うございます!。今回の対決は初めに”生死をかけた”なんて書いてしまいましたが、ほのぼの対決をモットーにしてます。なので、大食いだったり料理対決だったり、これからも”部活でありそうな物”を題材にしようと思ってます。

    > まさかミクが助っ人に来てくれるなんて・・・

    これは2回同じパターンで”自分の運だけで勝つ”というのもあれだな、と思ったので、同じ運でも助けて貰う方を選びました。ミクさんもちょっと事情があったようですし。

    > しかも一緒に来てくれるなんて思いませんでした

    最初はテトと自分だけで、ドンドン先に進む感じにしようかとも思ったのですが、ミクの協力ネタがきっかけとなって、仲間システムにしました。なにせ主人公がマスターなので、ボカロを活躍させるためにも、仲間システムの方がいいと思いまして・・・

    > 次の話が楽しみです

    有り難うございます!。実は現段階で、最終話のストーリーの骨部分が先に頭に浮かんで来てますので、それに繋がるように、これからの話を作っていきます。

    ご閲覧、コメント、有り難うございます!

    2009/10/20 16:25:16

  • nai☆

    nai☆

    ご意見・ご感想

    なんという偶然。思わず手にしたバナナ(シュガースポット付き)をまじまじと見詰めてしまった。
    まぁ、そんなことはさて置きまして。

    『技術研究』というから何の技術かと思ったら…、料理の盛り付けの技術ね。
    そして、健闘したけど、よくわからない何か…ですか。あぁ、これで ~Fin~ か…。
    と思いきや、なんだかよくわからない何かの理由で、主人公君に一目惚れしたミクさんの乱入だぁ~!!!
    しかし、この料理のガチ勝負、私の記憶が確かならば、料理の鉄j…、あ、先にコメントされちゃってましたねw

    ミクさんが味方になって、両手に華&恋愛フラグとホクホクの主人公君ですが、本当にそれでいいのかい、君は!?
    そうこうしているうちに、レンも加わり、徐々に賑やかなパーティーとなって、次の中ボスを倒すべく、次のダンジョンへ意気揚々と乗り込むのであった。…アレ? (まぁ、だいたい合ってるよねw)
    それよりも、テトの最後のつぶやき…。事態はいつのまにかテトの制御が及ばないものになっていた!?

    2009/10/18 20:04:04

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