「……さてと」
女性は青年の着替えを取りに、リビングへと向かう。
そこに。
「……お母さん」
洗面所前で待っていたサクが呼び止めた。
「ん?どうしたの?サク」
振り返って見てみると、サクは少し俯いて、悪戯が見つかって叱られた子どものような表情を浮かべていた。
「怒らないんですか?私の事」
「どうして」
女性は「何がおかしいのか」と言わんばかりに疑問を疑問で返す。
「だって、私の勝手で連れてきたのに」
それを聞いて、女性はふっと笑った。
「いいよ。サクは優しい子だからね。彼に帰る場所が無いって知って、かわいそうに思ったんでしょ?」
「はい…」
「ここに住まわせてもいいよ。悪い人じゃなさそうだし」
女性の言葉にサクは少し驚きの表情を見せた後、ぱっと笑顔になった。
「ありがとうございます!」
「はいはい」
弾んだ声のサクに、女性は軽く笑って返した。
「まあ、人数が増えすぎるのも考えものだけどね。彼みたいなボーカロイドがそういるとは思えないけど、そこは注意しておくよ」
「はい」
「よし」
じゃあ彼の着替えを取りに行くか、と、女性はリビングのドアを開けた。
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