朝目覚めると、今日も隣に彼がいた。
「・・・おはようさん」
少し照れくさそうに、彼はそう言って笑った。
私はベッドから起き上がらず、ヘラヘラと笑う。
「何がそんなに嬉しいねんボケ」
彼必殺チョップを食らった。それでもヘラヘラ笑う。
だって、愛が痛いけど嬉しいんだもん。
眠たい目をこすっていたら、気づいたことがある。
「なにこれ?」
私の手首から、ジャラリと伸びた鎖。それは、彼の首についている、首輪から伸びている。
「・・・束縛プレイ?」と、わざと変な風に聞いてみた。
「・・・離れへんためや」
あらまなんだか否定はしないってことは・・・そういうプレイと考えていいのかしらこれ。
とかまあ思っていたら、コーヒーの飲む彼。お目覚めコーヒーってやつかしら?
別の場所を見たすきに、そのコーヒーを拝借する。と、またチョップ。
「いいじゃん美味しそうなんだしー」
「アホぬかすなまボケ」
なんだか、別の人が見たら、「イチャイチャするな!」って言われそう。
「あ、そういえば今日はどこへ行く?」
「・・・は?」
とても驚いたような顔をしている彼。
「もう、引きこもりはよくないぞ!それとも、私とイチャイチャしたいなら別のはな・・」
「よし、どっか行くで」
「んもー!あ、でも・・・」
「なんや?」
「鎖、どうしよう」
「そんなの見せつけたったらええやないの」
あら、なんだか俺様な感じでかっこいい。
「・・・えへへへへ」
「気持ち悪い笑い方やめれまボケ!」
本日3度目のチョップをくらい、痛む頭を抑えつつ、商店街へとデート。
とは言っても、彼が私以外の人間が嫌い、いわゆる対人恐怖症者なので、人気のない公園でまったりのんびりデート。
特にこれといった会話はないけれど、それでも2人でいられることが、何よりの幸せだからそれでいい。
「ねぇ、あの雲美味しそうに見えない?」
「しらん」
「むー・・・」
そんなこんなで日が沈み、デート終了。
デートが終わればそのあとは・・・と、ピンク色の妄想を膨らませつつ、家に帰ってシャワーを浴びた。
鎖?なんとかなった!
「お風呂上がったよ」
「ほうか」
「そっちは?」
「別にええ」
「そっか」
ベッドに座る二人、無言の時間、ドキドキ、ジリジリ、2人の距離は詰まっていき・・・。
そして、私は押し倒された。
ジャラリと鎖の、音が響く。顔が近い。うーん、やっぱりつり目だけど、そこが素敵よね。
「・・・なあ」
「・・・何?」
「はよう、俺の・・・俺の体どこに隠したか言えまクソストーカー女」
「ん?」
きょとんとする私の首に、彼の冷たい手が触れる。
「・・・やっぱ触れられへんか。まあお前と同じことしたってしゃあないしな」
やれやれ、といった感じで私から少し離れた。
「なぁに?いつもの発作?」
「お前がな」
「・・・?」
そしてその後は特にイチャイチャもできずに、私は眠りについた。

あのクソ女が眠りについたあと、俺は気に食わんけども、あいつの隣に座る。
「なんでこんな鎖が付いとんねん・・・」
ぽそりとつぶやく。
こんな体になってからは、ろくに眠ってへん。いや、眠るということが、出来ないということが正しいんやろか。
俺ん中にあるのは、不安と苛立ちと焦り。
「いつになったら終わるんやろかなぁ」
ポツリポツリと、独り言が増えていく。
「ウジウジ考えるんはしょうに合わんけどな」
目を閉じて、あの日のことを考える。
そもそも、俺が大学生になったさかいに一人暮らししたんやなくて、元々ストーカーの存在に気づいとって、家族を危ない目に遭わせんためや。
特に妹という女は、ストーカーが勘違いするには十分すぎるやろからな。
けれども、慣れへん大学と一人暮らし、それにストーカー。俺は疲れていた。
せやさかいに、あの日気づかんかったんや。冷蔵庫にはいっとる、昨日買った未開封の飲みもんが、開封済みになっとったことに。
それに気づかずアホな俺は、ごくごく飲んでしもうたわけや。
で、なんや薬はいっとったんかはしらんけど、なんや気持ち悪い、体が歪んでバラバラになりそうな感覚がして、その場で倒れてしもうたんや。
「これはあかんやつや」と思っても、もう時すでに遅し。
ぼんやりとした意識の中、ストーカーの姿を見た。なにげに初めて見たんやけど、もう雰囲気でそいつやとわかったわ。
そいつはうつ伏せに倒れとった俺を仰向けにして、俺の上に馬乗りになった。
どうせならエロい方でとか、アホな期待虚しく、そのままロープで首しめられた。
ロープ使っとっても女の力やからな、なかなか死ねんかったわ。抵抗しようにも、体動かんかったし。
けれどなんや、侵入しやすい格好で来ましたよって感じの服装やったけど、もうそれでよかったわ。ウエディングドレスで来たら逆に怖いやん。せやからそれよかまし。
目が覚めたらびっくりしたわ。俺は幽霊になっとって、あいつと鎖でつながっとった。
どうやら、俺はほかのやつに見えんし触ることもできん。もちろんこいつもやけど、さわれると勘違いしとる。
そして、その状況が嬉しくて調子に乗ったんか、あのクソソトーカー女は妄想して、俺にドSで束縛プレイが好きやけど、対人恐怖症で案外メンタル弱い、とかなんとか、自分勝手な設定を盛りだくさんにした。俺の言うことは、自分の都合のいいように妄想変換されてしまうしな。
何が束縛プレイや、俺はどちらかというとコスプレプ・・・いや、この話はやめとこか。
よおある話や、死体は案外近くに隠すもの。多分、それを見つければ俺は成仏できるん・・・やろか?
まあわからんけども、俺の知り合いとかに危害がいかん用に気いつけて、また今日もそない変わらん一日を過ごすとするか。
「・・・ん・・・んー!っと。・・・あれ?」
ちょうどあいつも起きたとこやしな。
「・・・おはようさん」
さてさて、同じことを繰り返すとすっか。
何か変化が起きる、その日まで。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

束縛彼氏と妄想女子

タイトル詐欺的なやつで自由に方言使えるやつを書いてみたかった

数人、数日に分けて書いているので、話繋がってなかったらすみません。
歌詞化などご自由に

閲覧数:361

投稿日:2018/01/24 20:13:01

文字数:2,444文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

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