そのあと、ルカが大学をあとにして、
「…ユウ先輩、ちょっと聞きたいことがありマース」
「マイク、何かしら?」
「なぜ、ユウ先輩はルカさんのことが好きなのデースか」
マイケルがそう思うのも無理は無い。永井のルカ好きは、少々常軌をいっしているように見えるからだ。もっとも、質問したマイケルのミク好きも少々常軌をいっしているが。
「ああ、それね。それはね、私が小学生の頃にさかのぼるの」
懐かしそうにいう永井。
「あれは私が小学生の時よ。父に連れられて近くのコンサートホールで行われたボーカロイドのライブにいったことが始まりよ。そこでルカお姉様を間近で見たわ。その時見たルカのお姉様の姿がとても印象的だったの。その時のことはよく覚えているわ。あの時のルカお姉様は、とてもスタイリッシュで、女神のようで、言葉では形容できないほど素晴らしく感じたの」
「それがファーストコンタクトデスか」
「そうよ、そして、そのライブの次の日から、ルカお姉様に近づけるにはどうすれば良いかを必死で情報収集したわ。そうして、ルカお姉様に近づくためには、ここ、安田研究室に入ることが一番の近道だと知った時は、私は大山北大学に入学して、安田研究室に入るんだって決心したわ」
「そうデスか」
「それから私は必死で勉強したわ。私はお世辞にも成績が良い方じゃなかったけど、ルカお姉様に会うためだと思って、どんなに苦手な科目も必死でやったわ。それで何とか大山北大学に入れた訳」
「努力が実った訳デスね」
「ところが、話はそこで終わりじゃないの。大学に入って色々な人の話を聞いてからしったのだけど、安田研究室は研究室の中でも、かなり人気の研究室で、さらに研究室の選択権は成績順に上位から割り振られる仕組みに決まっていたから、安田研究室に入るためには成績上位であることが必要だって分かったの。だから、大学に入ってからも必死で勉強したわ。大変だったけど、私の心の中には、いつもルカお姉様と会えることだけしかなかったから、全然苦じゃなかったわ。それで、何とか安田研究室に入って、ルカお姉様と初めてお目にかけた時は、余りの感激に泣いてしまって、ルカお姉様を困惑させてしまいましたわ」
「そこまで想われるというのは、ルカさんもきっと感激されたでショウね?」
「いえ、その想いはルカお姉様にいっていないわ。私の想いを口にしたら、きっとルカお姉様は私が初めて出会った時以上に困惑されると思うの。ルカお姉様を困惑させるのは、私の本意ではないから、その想いは口にしないつもり」
「それは僕には理解できないデスね。僕がやったみたいに初めてミクと会った時のように抱きついたりして、思いのたけをぶつけるようなことをすれば、きっと良い経験になりマスよ」
「そうかしら…?」
そのマイケルからの助言を考える永井。確かにミクに初めて会ったマイケルのように、その思いのたけをぶつければ、一生に一度の良い経験にはなるだろう。しかし、そのような自己満足ともとらええられかねない想いをルカにぶつけることは果たして良いことだろうか?その時永井は初めてマイケルの自由奔放な性格を羨ましがった。彼のような性格なら、迷うことなど無いと思われるからだ。
「じっくり考えることデスね。ユウ先輩が安田研究室を離れるまでまだ時間はありマス。時間は有効に使うべきデス」
「…マイク、ありがとう」
そういって話を打ち切る永井。永井はそれからマイケルの提案についてずっと考えていた。
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