「おい、おい、そんな事言ってていいのか?お前は囚われの身なんだぞ」
私にはそのコンブが張ったりで其れを言っているのだと判った。
何となく判った。
でも、取り合えず静かにする。
「…」
「大人しくしろ!」
私は内心笑った。
そんな無理しちゃって…。
後から思えば、その他人の心が手に取るように感じられるその事自体が私の魔力の高さであった。
そして、もう1張のコンブは言った。
「これからお前を脱がせる!」
私は、その言葉を聞いてビックリした。
「えっ」
私ともう片方の一張のコンブが同時に言った。
「あ、違うお前の拘束を解く!」
彼は自分が言った言葉の意味が分かったらしく、顔を黒らめた。
「馬鹿か!お前は!」
脱がせるって、正かそんな事。
言葉の言い間違えには注意して欲しい。

 そんな下らない事等今はどうでも良いのだ。
とにかく、私は事務所に行かなくてはならない。
で無ければ私の就職は取り消しに成ってしまうかも知れない。
いくら知り合いと言っても、初日から約束を破ってしまうのはヤバイ。
ただでさえコンブの妖精は固いのだ。

「ココから出して!私を出して!あんた等が本当は私をどうのこうのするつもりが無いのは分かってんの!」
「やはり、そうか。そうだと思った。あんたは魔力が備わっている」
何かが別のコンブの声だ。
別の何かこの部屋に入ってきた。
今までの2張の声と違う、別の声がする。
「おい、拘束魔法を解いてやれ」
「うぇい」
2張のコンブが応えた。
変にイカにも「手下です」みたいな感じで応えているのが私には少し、笑えた。
この2張はそんな性格では絶対に無い。
「お前か、魔力が強いという田舎娘は」
「は?私はただの田舎娘です!」
何を変な事を言っているのやら。
「ん?」
そのちょっと変わったコンブが私を覗き込んできた。
そのコンブは、何だかヨーロッパ貴族みたいな服装をしている。
ダサい。
基本的にコンブの国の妖精はダサい。
私もだが…。
「お主私たちの心を読めるのだな」
「は?」
「お前は私達に大きな悪意が無い事をもう見抜いている」
何を言っているんだ此の変な格好のコンブは。
「御前はこいつ等2張が御前を縛り付ける事はしても、殺す積もり(つもり)が無い事を察知している!だからそうやって強気に振舞えるのだ!」
変な格好の彼はそう怒る様に、又、探偵が犯人を言い当てるかの様に言った。
そんな突然怒鳴られても困る…。
大体、私は何も悪い事はして居無い(いない)。
 …まあ、何と無く、其れは…其の通りだ。
私は、彼らに悪意が無い事を感じ取っていた。
確信していたと言っても良い。
其の通りだが、其れが
「だから何だって言うの?」
私は、喧嘩腰に言った。
其れも其の筈私は無理に捕まえられて、何も悪い事をして居無いのに、訳の分からない状況の中に居させられているのだ。
知らない部屋に入れられて居るのだ。
そしたらダサい格好の奴はコウ言った。
「だから、御前には強力な魔力が備わって居ると言っているのだ。」
 私は、其の日、自分に魔力が備わっている事を教えられた。
それからと言う物、特訓の日々が始まった。
しかし、私は其れ程苦労する事も無く、一人前の其れも一流のいや、超一流の占い師になった。
私には、妖精や人を占う力が大きいらしく、未来の事も分かった。
私は、終に(ついに)占い師の中で最も位が高い、国家専属の占い師になった。
実は、あの日スカウトされて拘束された日のダサい格好をしていた昆布は国の内閣で有る五閣(五閣僚)別名トップ五張集の一張だった。
名前は、ミロク。
可也(かなり)強力な魔術師だ。
 コンブの国の妖精達は一般には知らないが、五閣僚のミロクはマコミットの会員だ。
大体、マコミットとコンブの国が関わっている事を知らない。
私は、政界の裏を知れた気がして嬉しかった。
其れがヤバイ事に発展するなんて事を知らずに。
 私のマコミットでの生活は順風満帆だった。
他の占い師見習いを追い越して、飛び級の飛び級でどんどんと上に上がった。
勿論、私の母の知り合いのおばさんの事務所にも勤めている。
昼間は事務所で妖精界で最も侮辱的な仕事をして、夜はマコミットの占い師の金の卵として、
修行する。此のギャップに私は私自身に酔っていた。
自己陶酔していた。
 私は何時の間にか(いつのまにか)政府のトップに迄上り詰めていた。
本当に気が付いたら沿う為っていた。
まさかただの田舎に住んでいる妖精がコンブの国のトップに成るなんて、
以前の私が考えたらえ!ありえないとか、そんな風にしか思わなかった。
でも、成ってしまってからは何の違和感も無く私は、毎日忙しく占いの仕事をしていた。
もはや私が有名な占い師で有ると言う事は事務所の、母知り合いのおばさんにも知れてしまい、
私は、占い師専門になった。
 母には此の事は伝えていない。
所以(だから)母は今でも私が会計事務所で働いて居ると思っている。
テレビの露出は控えた。
妖精の国のテレビは、誰の元に其の番組を届けるか出演者が決められるので、
私は、母の住んでいる地域には流さないでくれと妖精の世界のテレビ局のコンブに頼んでおいた。
テレビに出る位(くらい)私は有名で有能な占い師になった。
 まあ、何て言うか簡単に言ってしまうと、天狗に成っていた。
天狗は神道の一部だ。
真面目な人の集う、神道。
コンブの国では、真面目な妖精が多いが、しかし真面目である分いい気に成った時の踏ん反り返り振りは目に見張る物が有る。
私も結局は其の一部だったのだ。
コンブで有るが故の真面目さと、いい気に成った時の偉がりっぷりを持ち合わせていた。
やはり私はコンブの妖精だった。
隣国のワカメの国の妖精とは違って、昆布の国の民はお堅い。
 私は、妖精で有りながら天狗にも成っていた。
コンブの姿をした天狗何て見た事も聞いた事も触った事も匂いを嗅いだ事も無かろう。
ああ、ああ、沿うだろう。
私も自分の鏡の姿を見た時に驚いた。
今日も一仕事終えてと、或る日チョビット時間が出来た。
いつも、占いの申し込み者の占いで大忙しなのだ。
でも、其の日は何故か少し時間が出来た。
其仕て、ふといつも被って居る、顔を覆い隠す真紅の黄色い飾りが付いた布を捲って(捲って)鏡を見た。
すると、其処に居たのはコンブの姿をした鼻の長い天狗だった。
丸でカリントウの如く、其の鼻を私の顔にくっ付いていた。
若しかして取れるのでは無いかと思って手で少し力を入れて外そうとした位だ。
外れる筈も無い。
 私は心が完全に病んでいた。
心が病むと言うのは自分でも分かっているのに、其れでも尚且つ病んでしまう物である。
自分が心が病んでしまうから、そっちに行かない様にと努力しなければならない。
私は、其れに気付かずに悪い方へと流されてしまった。
私は悪魔に取り付かれていた。
私ばかりでなく、私の周りの人も取り付かれていた。
コンブの国全体が悪魔に取り付かれていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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「若芽の国」第8章_スカウトされた昆布_マコア・ペディグリンの物語_2ページ

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投稿日:2012/08/07 23:25:04

文字数:2,892文字

カテゴリ:小説

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