《いつか、私のことを見つけ出してね。―――――》
そこで目が覚めた。
桃色ノ旋律~少年少女と独奏歌~
燃えし我城に記憶を捧げる
俺は和ノ国の皇子という地位にいた。
父上が亡くなり、跡を継ぎ、俺は今ではこの和ノ国をまとめるこの国に必要な存在となった。
ただ、やはり皇子ともなると命も狙われやすく、すでに4回程暗殺されかけている。
でも、俺は幼少期から剣術・体術・馬術など、全てにおいて完璧に育てられてきた。
そのおかげでこれまで全ての騒動もやり過ごしてきた。
そんな俺にも、分からないことが1つあった。
幼少時代に誰かとしたであろう約束。
何年も夢に見続けているあの約束。
あれはどういう意味なのか。そして、誰とした約束なのか。
全く分からなかった。
「神威。今日のこの後の予定は?」
神「本日はこれにて公務は終了です。」
「そうか…。」
今日は少しの書類整理以外にすることが何もなく、俺は暇を持て余していた。
折角だから街にでも赴こうか。
神官「た、大変です!!」
神「どうした、何があった!!」
「…?」
突然扉が開かれて、凄い形相の神官が部屋の中に入ってくる。
神官「軍が…攻め込んできました!!」
「!?」
何故軍が?そんなことを考えている場合じゃない。
早く準備しなければ。
「神威!」
神「はっ!よし、お前達は敵に対抗する兵の準備を!」
神威の一言で男は走って仲間の元へ戻っていった。
「軍はどれくらいなんだ?」
神「先ほどの情報が間違いでなければ、多勢に無勢の状況とのことです。」
「何…!?では、我が国の軍でどう対抗するつもりだ…」
神「貴方様を逃がす為の時間稼ぎです。さあ、今のうちにあちらからお逃げ下さい!」
「何を言っているんだ!お前達を置いていくものがあるか!」
神「貴方は生きなければならないのです!」
「!!」
いつも穏やかな神威が大声を出したことに、僅かながらも驚く。
そんな間にも神威は俺が逃げるための準備をしている。
「神威…!」
神「レン様…貴方は、民のためにも…この国のためにも生きなければならないのです。さぁ、早くお逃げ下さいレン様。」
「っ…絶対、生き延びるんだぞ…!」
神「…仰せのままに!」
そういって神威は俺の背中を押して扉を閉めた。
一人になった俺は、神威に言われた道を走る。
そして、森を抜けたとき、後ろから大きな音がした。
後ろを振り向いたとき、自分のいた城が崩れ落ちていく光景が目に入った。
俺はそれを一瞬だけ見て、それ以上は振り向いていてはいけない気がしたから、ただ全力で前へ進んだ。
絶対…また会える日は来る…!
そう信じることで足を動かすしかなかった。
気付いたときには街にいた。足音1つしないこの場所で、俺の呼吸だけが聞こえる。
シャン――――シャン―――――
そのとき、後ろから鈴の音が聴こえた。
俺は腰に着けてた剣の柄に手をかける。
シャン――――シャン―――シャン―――
音が段々大きくなり、すぐ近くで止まった。
ゆっくりと、後ろを振り向く。
そこにいたのは――――
「え…?」
?「……。」
自分と瓜二つの顔。金色の髪に澄んだ水色の瞳、髪は短く頭には大きくて鮮やかな色の布が巻いてあった。そんな、少女がいた。
「き、貴様は誰だ。この国の民ではないな?」
?「……。」
容姿に気を取られた為、敵かもしれないということを危うく忘れるところだった。
俺が「誰だ」と言った時、彼女は少し傷付いた様な顔をした気がしたが、すぐにもとの無表情に戻った。
俺は、やけに悲しそうなあの顔が脳に焼きついて仕方がなかった。
「…俺を殺しに来たのか?」
?「…違う。私は貴方を殺しに来たわけじゃない。」
俺の問いにやっと答えた少女の顔は、やはりどこか悲しそうで、その瞳の奥には何が映っているのか分からなかった。
「では…貴様は何者だ?」
?「…やっぱり、覚えてないのね…。」
「?覚えてないとはどういうことだ?俺と貴様は初対面のはずだ!」
?「…初対面なんかじゃないわ。もっと大事なことを…貴方は忘れてる。」
そう言って彼女は服の中から何かを取り出し、俺にかざした。
「っ…何をするつもりだ!?」
俺は手にかけてた剣を鞘から出す。
?「貴方は、思い出さなきゃいけない…そのために…我慢して…。」
「!?」
彼女が話し終わったところでいきなり強風が吹き、俺の周りに譜陣が現れる。
「なっ…何だこれは!?おい、貴様!!」
?「…。」
「クソ、どこかに飛ばされるのか…!おい!俺は…お前をいつか必ず見つけ出す!」
?「っ!!…私は、お前じゃない。私の名前は…」
リン。
その言葉を最後に俺の姿はそこから消えた。
最後に見せたあの驚いた表情と、どこか嬉しそうな・・・それでいて悲しそうな顔はくっきりと脳裏に焼きついた。
「…【見つける】か…。」
その言葉を復唱して、あの夢を思い出した。
《いつか、私を見つけ出してね。――――》
「見つけ出して」……。
俺はこれからどうしたらいいのか、何も分からないまま意識を手放した。
To be continued...
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