――その日はずいぶんと平凡で、当たり障りない一日だった。


『――ベニ鮭ちゃんストラップがなんと期間限定でゲットできちゃう?! ××商店街フェア開催中!』

「センスないストラップ……期間限定って癖には毎年配ってるよね」

 暇つぶしに聞いてたラジオだった。地域の情報も結構教えてくれるものなので、楽である。

「……あー、明日から学校かー……」

 ふと、思い浮かべるのは、あいつの顔だった。

「――さてと、勉強片付けちゃおうか……」

 本音を言えば、早くゲームがしたいだけなのだが。

 ラジオを消そうと、立ち上がった時だった。

『――ここで、緊急ニュースです』

「は?」




 そして――私は、榎本貴音は、

 その言葉に目を疑ったのだ。





『非常に残念なことです。今まで伝えられなかった――突然なことですが、地球は本日をもって終了します』






≪A headphone actor [1st anniversary]≫


-prologue-



 窓の外は、飛行機がまるで大きな鳥のように空を覆い尽くしていた。

 どこに向かっているんだろう。

 急がなきゃ。

 私はやりかけていたゲームに手つかずの参考書を残して――

「……忘れ物」

 ――震える身体をいなすようにヘッドフォンを装備した。








「ねえ」













「……だれ?」

 おかしい。まだヘッドフォンに接続したiPodは電源も入れてないはずなのに。

 声が聞こえる。

 しかもこの声は――疑いたい。

 自分の声だった。

 そしてその声ははっきりと耳元に流れ出した。












「――生き残りたいでしょう?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

A headphone actor[1st anniversary]-prologue-

閲覧数:172

投稿日:2012/12/06 00:42:24

文字数:740文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました