ピノキオPの恋するミュータントが好き過ぎて小説にしてしまいました。台詞無し、自分妄想ですみません。


*

君に出逢ったのは何時だっただろう。
嗚呼、確か雪が降る夜だった。目が三つあって、手足が六つある、異形な身体をした私は当然世間に非難の目を浴びせられた。自分は人間だ、とそう主張しても誰も聞く耳を持ってはくれず。人目に付かないような狭い路上に一人で生きてきた。やろうとすれば、動物だって殺せるし、物を盗むのも容易い。だけれど、寂しい気持ちを消す事は出来ずに、重い尻尾を引きずりながら暗い路地裏で汚いゴミ箱に寄りかかり泣いてた。季節は真冬で、一枚のぼろ切れのような服を着ていた私は寒さで震えていた。でも、それ以上に悲しくて辛くて。そしたら、不意に君の声が聞こえたのだ。

君は、三つもある私の目を見ても驚きもせずに笑顔でいてくれた。それどころか、私の不自然に尖った頭を撫でてウチにこないか?と云ってくれた。それが、どんな意味を持つのか、私は気付かない振りをして頷いた。どんな理由があれ、初めて触れた優しさに私は夢中ですがりついた。だから、君が真っ白の白衣を着ていた事も、その後ろに檻がある事も、気付かない振りをしたのだ。

それから私は檻に詰め込まれ、真っ白な窓もない真四角の部屋に入れられた。あるのは部屋同様に白いドア一つとその上にある丸い時計のみ。そして君は決まって、針が三時を差すとやってきた。逢えるのはそれから針が一周するまでの、一時間。あっという間に終わってしまうけれど、それだけで私は幸せだった。君は逢う度に君が笑って頭を撫でてくれる。幸せだから、その後に待っている質問攻めも、身体検査も全然気にならなかった。

そんな日々を、何十回か繰り返してから私は何時しか君を好きになっていった。言葉を喋れない私だけどテレパシーを使う事が出来る。だけど、君にこの気持ちを伝えると迷惑がかかるから、それは自分の胸深くに留めた。君の頭を覗く事もできたけど、君の想いなんてわかってるからそんな事しなくても良かった。嘘、分かるのが怖かった。だから、時折見せる君の瞳の冷たさにも気付かない振りをした。

君が優しいのは実験の一環だって事も、それ以上の感情もない事も知っていた。だけど、初めて貰った君の優しさにしか、もう生きる意味を見いだす事ができなかった。好きで、好きで、大好きで。だから、君の笑顔なら私はなんでもするよ。


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ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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【書かせて頂きました】恋するミュータント【小説】

ピノキオP、恋するミュータント【初音ミク】の歌に感動して衝動書きした小説。前半。

閲覧数:238

投稿日:2010/09/02 22:42:15

文字数:1,016文字

カテゴリ:小説

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