-第二十章-
数分の時が流れた。
ルカの不敵な笑みはそのまま、メイトは凍りついたようになった。手に持ったままの携帯電話の画面が、少し震えたように思えた。
微笑んだまま、ルカが取り出したのは、桃色の小さなポーチだった。中には黒くスタイリッシュな携帯電話がさも当たり前のように、すっぽりと収まっていた。
「忘れたときは、こちらを使うんです」
そういうと、ルカはもう一度微笑んで見せた。
不思議な雰囲気を作り出す手伝いをするかのように、強い風が吹いて沢山の葉が病室に飛び込んできた。
「どうしたらいい」
病室に入ってくるなりレンが言った言葉はそれだった。
数分前に携帯電話に来たメールを見て、レンは足を速めていた。送り主はメイト、内容はルカが目覚めたということで、見舞いにでも来ないか、ということであったがレンはそんなことは関係なしに、病院の前に辿り着いていた。
入っていいものか、顔を少し見てすぐに帰れば大丈夫か、帰ったほうがいいのか――迷っているときに携帯が楽しげに音をかなで始めた。隣りで退屈そうにリンが壁によしかかって髪をいじっていた。
そうして、レンは病室へと駆け上がってきたのだ。勿論、リンもきっちりとついてきている。
顔を上げたメイトとルカに、レンは不安げな顔のままでいた。
「レン、早かったな」
「ちょっと、近くまで来てて…」
「ま、レン、ここ座れ。俺はそのこ連れて昼飯でも行ってくる」
「メイト兄?」
「メイトさん?」
「じゃ。」
言うなりメイトは戸惑うレンに背を向け、少し困ったようなリンの背中を押して病室を早足に出た。その顔に笑顔はなかった。
「…メイトさん?」
「え、あ…どっか、喫茶店とか入ろうか」
のぞきこむようにメイトを表情をうかがうリンにやっと気づいたメイトは、とっさに優しそうな笑顔をつくると、近くにあった緑色の屋根の喫茶店を指差した。それを見ると、リンは少し不安な気持ちはあったものの、おなかが減っていたこともあって、メイトの提案に頷いた。
喫茶店の中はそれなりに人もいて、店員が数名、お盆と空になった食器を片手に店内を歩き回っている。その一人が見せの入り口近くで中を覗き込むようにしているメイトとリンに気がつき、とたとたと大して長くもない足をせわしなく動かしながら営業スマイルで近づいてきて、二人をあいている隅のほうの小さなテーブルに案内した。
「ご注文はお決まりですか?」
決まりきった言葉で問いかけてくる。
「じゃあ、俺はコーヒーで。…何がいい?おごるから、遠慮すんな」
「えっと、じゃあ、オレンジジュースにしようかな」
そういうと、店員が、
「コーヒーはホットとアイス、どちらになさいますか?」
「ホット」
「それでは、ホットコーヒーをお一つ、オレンジジュースをお一つで、よろしいですね?」
メイトが頷くと、店員はまた忙しそうに戻っていった。
喫茶店の中は若い客や親子連れ、老夫婦も見え、この辺りでは人気のある喫茶店のように見える。
「あの、えっと…」
何を話していいのか困っているリンを見て、メイトは口を開いた。
「悪い、いきなりで、困るよな。…理解できなくてもいい。信じられなくてもいいから、わかってやって欲しいんだ。レンのこと。本当はあまり話さないほうがいいのかもしれないけど、君にならわかってもらえそうな気がする。――ちょっと長くなるかもしれないけど、時間、大丈夫か?」
「…はい、大丈夫です。…話、続けてください」
「俺たち守護者は、もとは普通に育ってきた君たちとなんら変わりない。ただ、君のように宝石を集めてかなえたい願いがあり、その宝石を全て集めるだけの能力があったというだけ。力や知恵があった。だけど、可笑しいとは思わないか?レンはまだ幼い。なのに、あの力は異常だ。兄である俺が言うのもなんだが、あれは人とはいえない。あれは、レンが体を鍛えようとしてできたんじゃない。かつて、『人間改造計画』という研究が行われていたのは知っているか。帝国が大きな軍事力を手に入れるために、親がいない子供なんかをひきとって育てながら、少しずつ体に別の動物の遺伝子を組み込む。始めは苦痛らしいが、しばらくするとそんなことが当たり前になって、チーターのようなスピードやライオンのような力を手に入れることができる。…レンは、その研究に使われた。アイツは、あの研究で成功作とされたが、そんな力を子供が扱いきるなんてことは無理だ。いつかは危なくなる。そうわかっていても、それまで帝国に押し込められてきたレンを、今度は俺が部屋に押し込めておくなんて、できなかった。帝国から開放されて、レンは彼女を作り出した。毎日楽しそうにしていたけど、俺は毎日怖かった。何かをやらかすんじゃないかと。そんなことを思っていた矢先のことだった。レンは――暴走を始めた」
「暴走…?どういうこと…ですか?」
メイトはうつむいたまま顔を上げなくなっていた。
途中、コーヒーとオレンジジュースが運ばれてきたとき、メイトは話を一旦やめて笑顔を作っていたが、店員は少し気味悪げに顔をしかめて戻っていった。
「…さり気に傷つくんだよね、ああいうの」
「…そーですね。」
真実のガーネット 21
こんばんはッ!リオンです!!
お久しぶりですね!この間は結局投稿することができませんでした…。
どうにか熱は下がりました!…咳はでますし、鼻水だらだらですけど。
無事学校も始まりましたんで、これからまた投稿始めます。
よろしくお願いしますっ><
それでは、また明日♪
追記。
ちょっと『鏡の悪魔』をみたら、ブクマが多くて大変そうだったので、勝手ですが
『鏡の悪魔』タグを付けさせていただきました。
第一~第三シリーズまですべて『鏡の悪魔』で統一いたしました。
この話とは関係ないので、ここに書くのもどうかと思ったのですが、鏡の悪魔シリーズのどれかを再投稿するのも面倒なので、こちらに書かせていただきました。
コメント1
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ご意見・ご感想
リオン
その他
どうも、みずさん!私も会いたかったです!…て、実際にあったことはないですけど…。
あー。やっぱりみずさんでしたか。特に第三シリーズは長かったので、きっと全部はブクマでつながらないんだろうな、と思って。お疲れ様です(汗)
メ「いやだ!なんかあの人怖い!!」
リ「メイトさん、ヘタレ?」
店「ご注文はお決まりでしょうかー?」
リ「空気読めない人だー」
店「空気読まないんです」
だ、そうです。非難ごうごうですね。ゴーゴーじゃありませんよ。ごうごうです。
だ、大丈夫ですかっ!?痛いですよね、ああいうの。その日に限って荷物が多かったりするんですよね、私の場合は。
う、動いちゃダメなんですか!?(ガビーン)どうしよう!!学校休める!!(←?)
みずさん死んじゃうみたいなこといっちゃ、らめぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!
・・・コホン。テンションを間違いました。それでは、今日の投稿で!
2009/10/14 21:47:15