よく晴れた午後。暖かな春の風が頬を優しく撫でる。あぁ、あなたにもそうしてもらいたかった。

視線を見知った町の人たちの方に向ける。純粋に私が殺されるのを楽しんでいる無粋な野次馬もいれば、憎悪に染まった目で私を見てくる者もいる。あぁ、ごめんなさい。私が死んでも被害者は戻ってこないだろうけど、罰を受けないとあなたたちは満足しないと思うから。それに、レンに思い知らせてやる。私は人間として死んだのだと。

処刑人が私の足元に火をつける。パチ、パチと燃え上がる。今回の処刑人は中々悪趣味なやつで私を高い所に吊るして私自身が自然に発火するのを民衆に見せ付けるつもりだ。体が、とても熱い。苦しい、今にも皮膚が燃え上がりそうだ。あぁ、レン思い出して。私はそんなことしない。する訳ないじゃない。ねぇ、レンあなたはどこに行ってたの?レン、レン。

赤、赤。炎の赤。とても眩しくて私の目すら焼いてしまう。しかも熱い、熱くて赤い。
赤、赤。血の赤。生命の色。美しい赤。生きているという証。
赤、赤。林檎の赤。おいしそうな赤。


この世界は美しいもので溢れている。この世界は美しい生命に溢れている。どんなに小賢しい人間だって生きるためにその悪知恵を使う、生きることに一生懸命。あなたは、人間を醜いと言ったが私はとても美しいと思う。

魔女には、寿命というものがない。いや、性格には寿命というものは存在するが人間と比べて老化が極端に遅いため何百年も無駄に生きることになる。いくら魔女といっても、治癒能力が半端なく高いと言う訳でも無く、一般的な人間と同じだ。だから火あぶりなんてされたら確実に死んでしまう。

死まで後少し。

私は顔を上げ、レンを探す。レンは目立つ容姿をしているので見つけるのは容易だった。眩しい金髪が春の暖かな風に揺れる。虚ろな目がこちらを見つめる。どうしてそんな目をするの。

あつい、あつい。火の中へ飛び込んだら一瞬で終わるのにな。残念ながらそれはできない。
なんて意地悪な処刑人なんだ。加虐趣味でもあるのかこいつ。

うららかな春。眠くなりそうな暖かい風。

「熱い、熱いわ。これで私も終わりね。」

私の体が発火した。燃え上がる燃え上がる、赤。とても眩しい赤が私の体を焼く。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

私は魔女。人間ではなく魔女。

リン視点は終わりです。ここで一応完結ですね。

閲覧数:161

投稿日:2012/04/14 18:43:57

文字数:939文字

カテゴリ:小説

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  • 瓶底眼鏡

    瓶底眼鏡

    ご意見・ご感想

    お久しぶりです。ここしばらくピアプロにアクセスしていなかった瓶底です。陰謀の続きが書けなくて現実へ逃亡していました←

    わざわざ自分のリクエストにお答え下さりありがとうございます。本当なら一話ずつ感想を残すのが正しいのでしょうが、失礼ながらここでまとめて感想とさせていただきます。

    いやあ、ルカさんの思考が恐ろしいですね。しかし、この話の中で彼女が最も、リンちゃんが美しいと評した『目的の為に手段を選ばない』人間の姿を体現していたのは何かの皮肉でしょうか。
    しかし、レン君もリンちゃんが血を見たことないと判断した癖に、リンちゃんがこんな猟奇的殺人事件を起こしたとすぐに信じるなよ……いや、これが人間に刷り込まれた『常識』の恐ろしさか。

    改めて、リクエストにお答え下さりありがとうございました。また更新されたら見に行きます。

    2012/04/17 07:36:32

    • なのこ

      なのこ

      こちらこそお久しぶりです。返信遅れてしまってすみません。私はついったの方に逃亡していました。

      いえいえ!そんな!見てくれただけでもうれしいです///ありがとうございます///
      そんな深いところまで読んでくださって・・・なのこ光栄です!!!!

      常識っていうのは恐ろしいですからね・・・・・・・・・・・・ガクブル差別や偏見も常識から生まれるのではないでしょうか、と私はおもいます・・・!(マジレス)

      一本更新しました!

      2012/05/20 21:29:03

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