【彼の昔のお話】



人一人は涙を流して、


「また君に会いたい……」


と呟いた。










【コノハの世界事情】









目を覚ますと、そこはどこかの研究所らしく。
目の前の白衣の科学者は、僕についての説明をした。

僕の名前は「コノハ」だということ。
僕は意味と夢と命を集めて造られた──いや、造られてしまったということ。
そして……この身体は、終わった命を蒸し返す機械ということ。


──それから、僕はいろんなものを見てきた。
特に一番印象に残ったのは……ハリボテの町を使って終末実験、かな。

一番印象に残ったといっても、結果は予想通りグダグダ過ぎた。
その時点で諦めたほうがいいというのに。
しかし科学者は、生き残った少女──確かエネといっていたような気がする──を無理矢理研究所に連れ込み、眠る様に心と身体を離したのだった。
そして彼女をある部屋に閉じ込めた。

が。

彼女はどうやったのか、その部屋を抜け出した。
しかし彼女は“電脳体”。
研究室の外に出たのではなく、電脳世界に飛び込んでいったのである。

今エネがどうしているのかは、僕には全然わからない。



***



…まぁ、こんなことはどうでもいいとして。

“次の二人”を、街の隙間で僕はじっと見つめる。

そうしていると、一匹の猫が公園を飛び出してきた。
続いて一人の女の子──ヒヨリが出て、次に男の子──ヒビヤ。

そして──ヒヨリをバッと押しのけると、ヒビヤはバッと通ったトラックにぶち当たり、小さな身体がまた飛び散った。

ヒヨリの方は、蝉の声にかき消されているのか、そもそも声を出していないのか口をパクパクと動かしながら泣き叫ぶ。
しかし秒針が進みだすのを止めた為、ヒヨリの涙はアスファルトを濡らすことはなかった。

……あぁ、世界もろとも眩みだそうとしている。
この夢は、終わらない。





*****





意味と夢と事態を集めて、僕の頭はただただ考えた。
そして、気づいてしまったんだ。

──この世界はどうやら少しヤバイらしい、と。

【これは彼と彼女のお話】
だけど、届かない。
この造られてしまった身体では、言葉さえも届かないんだ……。



──だけど僕は諦めない。

またあの公園にやってきた。
枯れる太陽の音と蒸せる炎天下の目が、「自我」を手に入れた今は少しだけ怖かった。
──突如大切な人が奪われてしまうという「恐怖」が。

蝉の声がもう鳴り響き、「死」の合図がやってきた。
猫が飛び出し、ヒヨリが追いかけて、ヒビヤも後を追う。

そして──ヒヨリのはるか上には、落下してきた鉄柱が。
ヒビヤも気づいたのか、ヒヨリをバッと押しのけた。



だけどこのままじゃヒビヤが……!



僕も急いで手を伸ばし、ヒビヤを押しのけようとした。





が。





そのまま身体が透け──ヒビヤを後ろに退かすことさえできず、僕は前にいった。
あぁ……せっかく、届いたのに……僕は、僕は──!!

背後で「ぐちゃぁ」という肉がつぶれた音。
振り返ればそこには……目に涙を溜めるヒヨリと、鉄柱に串刺しにされているヒビヤ。
秒針はふざけて立ち止まり、僕以外の全てが動くのを止めた。

僕はただ、機械仕掛けの世界を抜けて木の葉の落ちる未来の風景へと、君の『目』で見てほしいんだ。
なのに、なのに!……

嗤う日差しは何処か消えて、病気になりそうなほど暑い8月は何度も過ぎ去って、二人で「また来年だね」と笑い合う。
──例えば、そんな未来なら? それも叶わないというの?

僕はアスファルトに座り込み、ただそんなことを考えていた。



*****



何回繰り返したか分からない、8月15日のこと。
期待ハズレの世界の隙間で、予想ハズレの雨が降ってきた。
嗤う日差しが消えて、これってもしかして……救出、成功?

そのとき、ヒビヤがいきなりバタッと倒れた。
ヒヨリはどこに行ったのだろうか、側にはいなかった。

僕は慌ててヒビヤの元へ駆け寄り、抱き起こす。
幸い、ヒビヤは気絶していた。
そしてあることに気づいた。

──触れられる!!

周りの人が呼んでくれたのか、救急車がサイレンを鳴らしながらやってきた。
今は触れられることに喜びをあげている場合じゃない。
ヒビヤのことに集中しなきゃ。
救急隊員に命令され、僕も救急車に乗り込んだ。





──そのとき、
背後から僕の名前を呼ぶ懐かしい声が聞こえたが、僕は気に留めなかった。





*****










屋上に来た。


風がオレの汗を心地よくし、それと同時に君の髪の色、君の笑顔を嫌でも思い出させる。





彼女の葬式のとき、彼女の父親でもありオレらの先生でもあるケンジロウは言った。


「俺だってあんま気にしてないんだ。お前のあんまり深く思いつめるなよ」と。


嘘だ。そんなことない。


先生だって本当は声を上げて泣きたいに決まってる。


だってたった一人の大事な家族じゃないか。


オレだって幼い頃父親を亡くしたから分かる。


でも「先生」という立場上、「生徒」に心配かけちゃいけないから……!


ごめんなさい。オレの、せいなんだ。


オレがもっと彼女のこと理解してたら。解ってたら──!!





フェンス越しに見える56点の綺麗な折鶴と、ところどころをテープで止めた、若干不恰好な100点の折鶴。


オレはそれを見たとたん、視界がよく見えなくなった。





オレ……泣いてる……?


君がいなくなって……オレは……。





……こんな。


こんな、馬鹿なオレだけど……


君のこと解っていたようで、何一つ解ってなかったオレだけど……





いなくなった君の笑顔を例え誰かが忘れても、オレは絶対忘れないから。










***










息が、できない。





目を開けたら塩水がドッと目に染み込んできて痛くなった。


再び目を閉じ、何故自分がこんなことになったかを思い出す。





……そうだ、たしかお父さんと海の深いほうに泳ぎに行ったら、波が……。





私は必死にもがくが、逆に沈んでいく。


私、このまま死んじゃうのかな?


嫌だよ、死にたくないよ!?





ねぇ、誰か気づいてよ。


私に気づいてよ。


私を見てよ──!!





──そのとき、





「大丈夫かい?!」


突如知らない人に抱かれ、海の青から空の青に変わった。


オレンジっぽい、そして暑そうな服装……あ、この人「かいじょーほあんかん」って人かな?





私は安心したのか、スッと意識を失った──。





そして、そのときの私はまだ知らない。


──その日から、私の体は、私の日常がおかしくなってしまったことに。










***










「このままじゃ私消えちゃうよぉ~誰か助けて~」


誰にも見てもらえない。誰にも気づいてもらえない。


こんな自分、嫌だよ~……。


皆、私のこと嫌いなの?


ねぇ、誰か答えてよ!……──





「つぼみちゃん!」「つぼみっ!」


「僕らと遊ぼう!」「俺らと遊ぶっす!」






しゅうやくん、こうすけくん。


私のこと、見えるの?





「「うん!」」





…………





「ねぇねぇ、僕らがその『体質』、治してあげようよ!」





……え?





「あ、それイイアイディアっすね!」





「……二人とも、」


「「?」」





「ありがとう」





そのときの二人の顔は、照れ笑っていたような気がした。










***










あぁ、だめだ。もう体が……


崩れていく、私の身体。そんな私をただ呆然と見つめる、愛する君。





せめてもの「ごめんね」も言えなくて、「愛してる」って言いたいな。





でもお願い。


この世界を憎んじゃダメ。





──いつかこの世界をその目で愛して。










***










何回、この日を繰り返しただろう。


でも、そんなこともはやどうでもいいんだ。





君とこの公園でお話しすることが、私の幸せ。


君の悲しい顔はもう、見たくないから。





──バイバイ、ヒビヤ。










***





「ねぇ、遥? 遥はこの化学式解った? 私はよく解んないんだぁー」


「本当貴音って、何をやっても中途半端で終わらせるよね」


「遥が何でも完璧にやってるんでしょ? ──なぁーんて、結局は遥のこと言えやしないんだよね、私」


「?」


私はいつだってそう。


惰性で学校に通って、家に帰ってはひたすらゲーム……でも、その生活が止められないわけで。





結局課題は遥に写させてもらい、家に帰って再びゲームをする。


ついでにラジオをつけた──そのとき。





『非常に残念なことですが、本日地球は終わります』










***





──少年少女、前を向け。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コノハの世界事情【自己解釈】

前書いてたものの再チャレンジです。
コノハかわいいよコノh(((

若干っていうかもろネタバレ要素含んでおります。
ご注意ください。


素敵なコノハが見れます[http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763]

閲覧数:1,827

投稿日:2012/08/18 15:04:30

文字数:3,820文字

カテゴリ:小説

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  • 友愛@in不可

    友愛@in不可

    ご意見・ご感想

    初回限定版の冊子、だと…ッ
    今はもはや裏での取り扱いがされ始めている初回限定の冊子d((殴
    ・・・死角がないなんてすごくうらやましい、なんて思ってねーぞッ(ぷいっ)

    分かった、著作権侵害しちゃっても大・丈・夫☆だからプロフィール全部載せて?www
    それが無理ならせめて今までの作品に正式名入れて、関係図的なのズバっと書いて?www

    …少年少女、前を向け!www

    2012/08/20 21:38:49

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      ふふ、全然買えたぜぇ??(杉○ゃんww
      もう一回言ってやるぜぇ?。冊子を手に入れたウチに死角はないぜぇ?!!(やm

      ダイジョブだ。
      最近ウチカゲプロの曲全部自己解釈しようかなとか思ってるからww
      とりあえずねww如月アテンションとかwww

      ……少年少女、前を向け!www

      2012/08/21 00:23:27

  • 友愛@in不可

    友愛@in不可

    ご意見・ご感想

    ちょ、ちょっとまったああああああああああああああ!!!!!!!!

    ちょいちょい出てくる見ず知らず?の名前はまさか!?
    まさかのまさかなのか!?!?!?
    まさかのまさかのまs((現在若干のウザキャラ現象です←

    コホン、そんなことよりもやはり素晴らしい文章力だ…
    改行の仕方とか「―」の使い方とか、全力でお勉強させていただきます!


    …少年少女、前を向け!((合言葉化w

    2012/08/20 00:10:07

    • 雪りんご*イン率低下

      雪りんご*イン率低下

      な、なんだあああああああああああ!!!???

      ふふふ、初回限定版の冊子を手に入れたウチに死角はねぇ!!
      冊子を手に入れたウチに死角はねぇ!!!(大事なことなので2回言いましt←

      コホン、お褒めの言葉ありがとうございます?
      ちょ、勉強って……ウチのなんかで勉強なりますか?!

      …少年少女、前を向け!((合言葉ww

      2012/08/20 09:56:00

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