リンレンが家に来てから丁度1年が経つ。そしてこの子たちが発売日してからも丁度1年だ。
初音ミクの発売の後、ネットを騒がせそれに私もついて行った。その中また新しくボーカロイドが出ると聞いて、頑張って買ったのだ。
学生の身では金銭的に苦しい。だからこそ、1年前にバイトに明け暮れ発売日に間に合って買ったあの時が懐かしい。
その上…
「はじめまして、マスター!」
インストール後、科学の限界を超えて飛び出して来たあの瞬間は、一生忘れないだろう…

「ねーねーマスター!おやつまだー!?」
「おれ、バナナチップスがいい。むしろバナナチップスじゃないとやだ」
「わたしはドーナツ!」
「え、今日用意してあるのはかりんとうなんだけど…」
「えー!やだよそんな堅いやつ!!」
「しかも古い!ダサい!」
「…………お前ら…」

いや、なんか、もう、忘れたいかもしれない。




―――鏡音記念日―――




かりんとうだっていいじゃないか。
今時の子供は硬いものを食べないから顎が小さく…そうじゃなくて!私は一体何なんだ!奴隷ですか?マスターですか?奴隷ですかそうですか。
悶々とする中に、結局はおやつと夕飯の買い出しに出かけている自分がいる。
空のカートを押しながら、重い足どりでスーパー内を歩く。
おやつ売り場の前に差し掛かり、目に入る売れ残り商品。なんとなく近寄って見てみると、そこには30円引きのスポンジケーキがあった。
クリスマス商品の売れ残りか…
手に取って見ると賞味期限が今日までだ。
12月27日。
この日付、ふたりの顔が浮かんでくる。
少しわがままになっちゃったけど、本当は憎めない。
ネット内の初音ミクに刺激されて、私もふたりに歌わせたくて…。
そしてふたりも一生懸命作った曲をなんだかんだ言いながらもちゃんと歌ってくれる。

「マスター!この曲変だ!」
「変ってどこが?」
「ららら~、らら~の辺り」
「………そう?」
「メロディーがコードから外れてるの」
「うそ…!」
「ほらこの画面見て?」
「あー、本当だ…」
「「これだから、マスターは」」
「ふ、ふたりして…」

……あれ、なんか立場なくね?私。

とは言え、ちゃんとだめ出ししてくれたり、真剣に歌ってくれているのだ。
しかもそこから投稿した曲や動画は、それなりに再生数を伸ばしている。
記念日として、感謝の意を表すか。
スポンジケーキをカゴに放り込む。
そしてフルーツ缶、バナナとイチゴ、生クリームを探した。



「ただいまー…」
「わっ、マスター帰って来ちゃった!」
「リン!早く隠せ!」
「ちょっと待って、無理!」
「………何してるのかな?」
ドアを開けて早々、ふたりは慌てた様子でリビングに広げた何かを片付けていた。
かまわず廊下を進みリビングへ行くと、リンが体を張って何かを隠し、レンが私の前に立ってとおせんぼする。
「通してくれないとおやつ出せないよ?」
「ちょっとでいいから、待ってて!」
珍しくレンが焦った様子で私を見る。
そして私の体を押して、リビングから追い出した。
「良いって言うまで来ちゃダメだよ!」
そう言うと、レンはさっとリビングに戻る。
耳をすませて様子をうかがうと、リンとレンはこそこそ話ながら何かをしているようだ。
家の中なのに廊下は寒くて、吐いた息が白くなる。その中、手元の袋を見ながらぼんやりと待った。
しばらくして…
「「マスター、いいよ!」」
ふたりの声が聞こえた。
恐る恐る入ると…大きな模造紙に『ありがとう』の文字とカラフルな絵を広げるふたり。
予想外のそれに、言葉が出ない。
思わず買い物袋を放り投げ絵に近づく。
近くで見ると、絵の全部が千切った折り紙で彩られていた。ちぎり絵なのだろう。しかもそれなりに大きな絵だ。きっと作るのは大変だったんじゃないか。
うまく言葉が出なくてふたりを見ると、照れくさそうに顔をそらされてしまう。
「どうしよう、うれしくて泣きそう」
「…泣いちゃえば?」
「はい、ティッシュあるよ」
「うええ…なんだそれっ…可愛いけど可愛いくないよふたりっ!」
リンに渡されたティッシュを受け取り、素直に出て来た涙を拭く。
すると、リンがレンの方を向いて言う。
「ね、今日こそは」
「素直になる、だろ?」
ふたりは頷いて、私に抱きついて…

マスター、大好きっ!
これからもよろしくね!







「実は私も記念日を祝おうと思ってケーキの材料買ってきたの」
「え、材料を買ってきたの?」
「コージーコーナーのじゃないの?」
「しかもこのスポンジ30円引き…」
「…う、いいじゃないか!だからねっ」
「みんなで作ろうって?」
「………うん」
「「これだから、マスターは」」

“大好き”って言ってくれるんでしょ?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

鏡音記念日

えっと…
ここに投稿する小説はマスターが出てきても大丈夫ですよね…?

書いてみたら気に入ったので投稿しちゃいます(^^)
楽しんでいただけたら幸いです。
リンレン、発売おめでと!

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投稿日:2009/01/14 11:01:21

文字数:1,974文字

カテゴリ:小説

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