プチリ。
ゆっくりと手の爪を切る。
プチリ。
爪はティッシュの上にポトリと落ちる。
残り7本。
プチリ。
爪は指から分離されて、白い未知の世界へ飛び込んでいった。
きっとどの爪も待っているのだ。
まだ成長しきらないピンクの爪は夢見るのだろう。
成熟しきった白い爪は、そのときを今か今かと期待するのだ。
プチリ。
残り4本。
足の爪も同じように白い世界へ飛び込んでいった。
彼らもまた、希望に満ちてそこへ飛び込んだのだろう。
そこで何を見たのかは分からない。きっと、誰にも理解できないのだ。
プチリ。
残り3本。
ふと、そこに飛び込んでみたい衝動に駆られた。
僕も彼らと同じようにその世界へと飛び込むのだ。
何が見えるのだろう。あぁ、きっと、見えるのは真っ白な世界。
僕は着地したショックで気を失うかもしれない。
プチリ。
残り2本。
切れば切るほどこの世界から分離される気がした。
このまま何もかもと切り離されて、白い世界へ行きたいと願った。
きっと仲間は驚くだろう。爪を切りながら気を失うなんて。
そのまま目覚めなくなっただなんて。
プチリ。
残り1本。
この世界に残したいものなんて無い。残さなければいけないものも無い。
ならばこの世界と分離したところで何も変わらない。
このまま、真っ白な世界へ・・・
『いつまで爪を切ってるんだ?
もう電気を消したいんだが』
ルームメイトの声がして、現実に引き戻される。
彼は不思議そうに僕を見ていた。
『すまない』
プチリ。
最後の1本を切り終える。
爪を片付けて布団にもぐりこむと、電気が消えた。
僕は布団を顔まで上げて目を閉じた。
またいきそこねたのだ。
僕はまた、この世界と繋がっていなければいけない。
『まったく明日も早朝から射撃訓練だと言われただろう?』
『覚えていない』
また決定した。明日、僕はまた人を殺すことに決まりだ。
僕はいつか、分離できる日がやってくるのだろうか?
優しい眠りが訪れる。
真っ暗な部屋には、もう彼の寝息しか聞こえなかった。
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