駅から離れた
一つ通りを入ったところの
隠れ家のような洋食屋さん

一度前を通りかかっただけ
いつか行ってみようねと
言っていたのだけど

いつも駅前で
用事をすませていたボクたちは
その店にずっと行けないでいた

キミの引っ越し荷物が
運び出されたあとだった
キミの誕生日だと気付いた

ハッピー・バースデー

遅めのランチをすることにして
一緒に行った洋食屋さん
初めてだった

テーブルに着いて
壁に貼られたメニューを見る
おすすめは特製オムライス

お誕生日の方
サービスございます、という
控えめに書かれたメッセージ

ボクたちはおすすめを注文し
お誕生日サービスを
マスターにお願いした

ハッピー・バースデー

やって来たのは
特大の薄焼き卵が乗っかった
超大盛のオムライス

薫り高いデミグラスソースが
たっぷりとかかって
お皿からこぼれ落ちそう

人生で一番美味しい
そして一番悲しくて切ない
オムライスだった

お誕生祝いのミニサンデー
マスターが運んでくれた
チョコレートがほろ苦い

ハッピー・バースデー・トゥー・ユー

キミと過ごした3年
その思い出とともに
部屋の3分の1が空になった

前を向いて生きるのは
簡単なことではなくて
部屋の模様替えすらできず

キミの荷物の跡も
心にポカンと空いた穴も
埋めるものが見つからないまま

そして毎年
キミと別れた日がまたやってくると
キミの幸せを祈った

ハッピー・バースデー

3回目のその日が来た
ボクは偶然その通りに入って
あの店の前に来た

どうしてだろう、ふと足を止めて
扉越しに中を覗いてみた
え? ひょっとして?

ドアベルを鳴らして扉を開けた
キミが座っていた
髪を短くしたキミが

ボクに気付くと
少しはにかんだような笑みを見せる
3つ年を重ねたキミ

ハッピー・バースデー

こちらよろしいですか、と
ボクはキミの前の席を指して言う
どうぞ、とキミが言う

お待ち合わせの方が
やっといらっしゃいましたね、
お水を持ってきたマスターが言う

あの日と同じ
超大盛のオムライスを食べる
3年の歳月があっと言う間

お誕生祝いのミニサンデー
ほろ苦いチョコレート
懐かしくて愛おしい味

ハッピー・バースデー

ハッピー・バースデー・トゥー・ユー

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【曲募集】誕生日のオムライスとチョコサンデー

閲覧数:66

投稿日:2023/08/18 17:11:10

文字数:968文字

カテゴリ:歌詞

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