意識はどこから生まれるのか。
視覚聴覚嗅覚触覚味覚──五感を通してつながる生きた電気信号は、髄を駆けぬけ脳を揺らす。
私達の頭に収まったあの脆くも繊細な肉のスポンジが、笑顔や涙や苛立ちなんて複雑なものを生むのならばお前の中では一体何がその感情を生み出しているのだろうか。
生命体の境界線とは何だろう。
私はその線を引きかねる。私だけでなく、恐らく、この世の誰もが確固とした一本の太い線を引くことはできないのであろう。曖昧なラインは確かにあるだけのような気がしているだけだ。電子の世界が広がり続けている今、我々もいつかは1と0とで代替の利く日がくる。きっと。
そうなった時、お前と私達は今より近い存在になる。──否、私達がお前に近付くのか。
もしこの血が通う細胞と、お前を作る1と0とが結果として同一のものを作り上げる時が来たならば、そこで私とお前を隔てるものは何になるのだろうか。
──愛らしさのある顔立ちも徐々に感情の使い方を知っていった。パーソナリティを獲得し、ぎこちないその喉も柔らかく伸びやな声を育んだ。私の目の前で1と0の少女はゆるやかに成長を重ねていく。
しかしパターンや能力の成長は出来ても、簡単な思考能力しか持たせることの出来なかったお前は、やはり人とはまだ離れるものがあった。
いずれ自身の存在に疑問をもつ程、精巧になりすぎた思考を持て余す日がお前にもくるだろうか。外の世界では、もう来ているのかもしれない。
ただ歌うだけで十分だったのかもしれないが、お前はもう本来の用途の軌道を大きく外れてしまっている。機体の発熱でつくられるムラのある不自然な温かさと、皮膚の張りを作るためだけの赤いオイルが循環し続けるお前。私の技術ではこれが精一杯だった。
それでも──人と言うにはまだ遠く、機械と言うには進み過ぎたこの不器用な存在を、私はとても愛している。
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