第十四章    

今朝も気怠いな、と感じつつも起き上がって洗顔を済ませた。
「友人」に近しい彼からの連絡が思いもよらない形で来ていた。
とても元気良さそうに「おはよ!」なんて私が笑ってしまう程楽しそうに。
彼とはそろそろ2か月程は連絡も途切れることなく、今の所続いている。
楽しそうな彼だな、と思い私は「通話とかしてみない?」そんな事を伝えていた。
今夜初めての彼との通話の約束をし、私はいつもと変わらない一日を過ごした。
一人の時間を存分に楽しんでいた頃に、パートナーの帰宅の時間になろうとしていた。
帰宅して早々にパートナーは「飯作ってねぇの?」と言い虫の居所が悪かったのだろう。
機嫌の悪そうな、私に悪態しか付けない様な態度で接して来た。
私は「ごめんね?ちゃちゃっと作るからお風呂にでも入ってて」
そんな風に少し心に傷みを感じたが平然とした態度で答えていた。
笑顔のないパートナーは無表情で風呂へと向かっていった。
私は急いで食事を作り、自室へと籠った。
「言葉がキツイな」なんて思ってみても、私は涙を流す事無く
唯々笑って居る事しか出来ずにいた。
所謂「自分の感情に無になる事」しか出来なかったのである。
段々と夜も更けてくる頃に、「友人」からdmが来ていて、
「何時頃話すー?」なんて今の私にとっては有難い連絡が来ていた。
「もう少しだけ待ってくれる?」と私は返事をし、承諾を得た。
パートナーはそろそろ寝る様子で、相変わらずの「おやすみ」だけを交わし
30分程で深い眠りに付いた様子だった。
私は煙草を咥えゆっくりと吸いながら、「友人」へと「今から通話は可能?」と
尋ねると、「大丈夫だよ!」と言ってくれた。
彼と通話をするのは初めての事だが、何の感情もないまま通話ボタンを押した。
何度鳴らす事もなく、彼は通話を取ってくれた。
「こんばんは」私の第一声は一応年相応の対応をした。
彼はほんの少し高めの声のトーンで「こんばんは」と返してくれた。
「ちょっと堅いね」なんて私は彼に告げ、「軽く軽く楽しく話そう」と伝えた。
「そうだね(笑)」そんな会話から始まった彼との通話は有意義な一時間を過ごす事になる。
どちらからだったか、「恋人ごっこ」でもしてみようか、と言う話題になっていた。
お互いに「好き」だと想える人が居なかった為、「良いね(笑)」
そんな良く分からない関係性が始まったのである。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月は嗤い、雨は鳴く

いつものように気怠く起きた主人公。冷たい態度のパートナー。
ネット上の友人になった彼との通話の約束。
「恋人ごっこ」をしてみようという話になる二人。

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投稿日:2024/06/14 01:47:09

文字数:1,004文字

カテゴリ:小説

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