紫陽花の記憶~第4話~
ミクはエレベーターに向かって全力で駆け出す。
レンは困ったように笑いながら、手の中でコーラの缶を転がした。
自分のカバンの場所を聞いたとたん走り出したので、
なにか大事な物でも入っていたんだろう。
でもリンのベットの上だと、なにか都合が悪かったんだろうか?
ベットの下にあったので、見えやすいようにベットの上に置いたんだけどな・・・。
考えても答えは見つからなさそうなので、
ミクの分の飲み物を買おうと自動販売機の前に戻る。
「グミちゃんといい、ミクといい・・・今日はみんなどうしたんだろう?」
何を買うか迷ったが、結局レンはミクの分もコーラを買ってゆっくりと歩き出す。
グミがエレベーターに乗って行ってしまったので、
ミクは諦めて階段で上へ上がっていく。
リンの病室、12階なんだけどな・・・。
――――――――――――――――――――――
グミがリンの病室にはいると、そこには不思議な光景が広がっていた。
体を震わせ、目を見開き、怯えるリン。
視線はベットの上に向けられている。
ベットの上にあるのは、ミクの物と思われるカバン。
そのカバンのチャックは全開になっている。
全開になったカバンから顔を出しているのは、とても可愛らしい子猫。
トテトテとリンのほうに近寄る子猫。
ベットで体を起こしているリン。
グミが入ってきたのには気づいていないらしく、リンは怯えた声を出し続ける。
・・・・・・・・・・え。
なに、なに、なに?
ナニコレ、どういうこと?
・・・・・・・・・いや、本当にどういうこと?
病室に子猫がいる。
おかしい。
そして何よりもおかしいのは・・・。
リンが怯えている。
いや、そうじゃなくて、
・・・怯えた声をだしている。
うん、声聞こえるもんね。
あれ、なんでリンちゃん、声出てるんだろう?
ずっとずっとずーっと、声出なかったんだよね?
小さい頃からそうだったよね?
おかしいよね、この状況はおかしいんだよね?
他人から見ると、ゴスロリのグミが一番奇妙だったのだが。
リンはベットの上で体を捩る。
「こ、ない、でぇ・・・っ」
・・・涙声。
やっとのことでグミは声をだす。
「リンちゃ・・・」
声を出した瞬間、リンの表情が凍りつく。
「あ・・・・・ッ。」
グミは少し考えると、まず、子猫を抱き上げた。
「これが嫌だったんだよね?」
グミが聞くと、リンはこくんと頷いた。
どうしようかと悩んだ末、
結局グミはミクのカバンへ子猫を突っ込んだ。
「にぃ」
猫が小さく鳴くが、グミはカバンをリンのベットから離れた場所へ置いた。
子猫は少々手荒にカバンに突っ込まれたのも気にせずに、
興味津々のキラキラした瞳でこっちを見ている。
「え・・・っと・・・」
なにから突っ込めばいいんだろう。
普段から口の悪いグミは、気の利いた一言など言えるはずもなかった。
「声、出てたよね?」
まず、これから聞くべきだろう。
リンは先ほどよりもさらに怯えた表情を浮かべながら、
小さく首を横に振る。
「いや、今更否定しなくていいから。」
優しさの感じられないその声に、リンは冷や汗をかく。
そして小さく呟いた。
「・・・ごめんなさい。」
グミは困ったように視線を窓の外に向ける。
「謝られても困るんだけどなぁ・・・?
その様子からいくと、声が出るのを隠してたんだよね?
なんで?なんで隠す必要があったの?
まぁ、アタシには分からない事だって、この世にはたくさんあるだろうけど、
それに出会ってしまったからには聞かないワケにはいかないよね?
聞かせてもらってもいいのかな?ミクちゃんには言わないから。」
ミクちゃんには言わないから、という言葉に、何故かリンは希望をもったようだ。
自分でもどうしてミクの名前を出したのか分からないけど、
今はそんなことはどうでもいいと思った。
でも、リンは首を横に振った。
「ごめんなさい・・・。」
「だから、謝られても困るって。」
「・・・・・。」
どうしてもいえないらしい。
リンは目にいっぱい涙を浮かべたまま、俯いてしまった。
はて、どうしたことか。
グミは考えた。
なぜ?リンちゃんは声が出ないのを隠していたのだろうか?
そしてどうしてミクちゃんに言わないでほしい?
レンくんは・・・・レンくんはリンちゃんの声の事は知らないだろう。
だって、さっきあんなに心配していたんだから。
いまのところ、リンちゃんが声が出るということを知っているのは私だけ?
私が誰にも言わなければ、誰にも知られずに終わるのか・・・。
これって言わない方がいいんだよね?
まぁ、ミクちゃんには教える気なんてこれっぽっちもないけど。
でもレン君には言った方がいいんじゃ・・・・・
・・・・・ちょ、ちょっと待って・・・・・巡音先生は・・・?
病院の先生って、そういうの分かってるはずなんじゃない?
どうしてリンちゃんを退院させないの?
まだまだ、疑問はたくさんあるけど・・・
一番の疑問は、やはり、どうしてかくしていたのか、だ。
・・・・・となると、巡音先生も何か隠してる?
いや、待て待て待て。
どうして巡音先生が・・・。
――――考えても仕方ないか。
と、そのときだった。
「あら、リンちゃん、お客さんが来てるのね?」
「「・・・・・!!」」
ピンク色の髪をふわりとなびかせ、巡音先生が病室に入ってきた。
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木のひこ
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ご意見・ご感想
kanpyo
その他
読ませて頂きました。とっくに読んでいたのですが
感想は据え置きにしてしまいました…申し訳ないです。
この物語も四話目と、中々の力作となってきました。
リンがどういう秘密を持っているのか…気になります!私、気になるんです!
そういうわけで、1話から全て読み返して感想を書きます。
キャラクター達の描写も上手に描かれていて
それぞれのシーンを脳内で妄想できます。
グミちゃん、ちょっとサスペンス調!
独特の空気と緊張感があってとても良いです。
じっくりと練られ、丁寧に書き出され
作品を大事にしているのが良くわかります。
ふざけた作品ばかり書く私はこういう姿勢を見習わねばと思うのであります。
さて、続き、凄く楽しみにしてるので、早くお願いしますねww。
2012/08/01 23:00:47
綺羅々
kanryoさん、わざわざ感想ありがとうございます。
小説を書いていて、一番嬉しいのは感想をもらえることですねw
本当にありがとうございますm(__)m
「気になります!」って氷菓のえるちゃんですか?www
リンちゃんの秘密については・・・
私自身、まだよくわかっておりませんので、期待しないでください!!
結末を考えずに書き始めてしまうので・・・。悪い癖ですね。。。
個人的にはグミちゃんのキャラが大好きですw
サスペンスなんて言ってもらえると、ちょっと照れます( *´艸`)
妄想を文字にしているような小説なので、確かにキャラの描写はかなりしているかもしれませんねw
色々妄想できるような作品になっていれば幸いです。
最後に、私はkanpyoさんの書く小説、すごく好きですよ!
ふざけた作品なんかじゃないです!とても面白いです!www
私も「青い草」の続き、楽しみにしているのでお互い頑張りましょう!
2012/08/02 22:49:18