火の女神
此処ではない場所、今ではない時、始まりと終わりの舞台
少女ナジカとニズキの物語
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其れは或る暑さの残る日、祭りの前日
村外れの貧しい集落に住む14歳の少女那慈迦(ナジカ)は、村の中心火の神を祀る阿国(アグニ)神社に来ていた。昨年の暮れ没した父に変わり、「火の神の舞」を奉納する為であった。
那慈迦の父、玖彌羅(クビラ)は舞踊の名手であり、年に一度、葉月に執り行われるこの祭りで「火の神の舞」を奉納する事で、僅かな施しを受けていた。
幼少の頃から父の舞踊を見て育ち、父の代まで引き継いできた舞踊を今年からは那慈迦が奉納する役を受けたのだった。
普段村人が立ち入ることの許されぬ阿国神社の境内、米や野菜など、村人からの奉納品が明日の祭りを前に雑多に並べられている社務所、祈祷師の老婆に自分が玖彌羅の娘であり、今年の舞は自分が奉納すると伝える。
老婆はしばらく那慈迦の顔をまじまじと見つめゆっくりと、どこか不穏に
「そうか、、、」
と一言だけ応えた。
その後、簡単な誓約、清めの祈祷を受け那慈迦は帰路についた。だが、普段入ることの出来ない境内をもう少し見てみたいという好奇心に勝てず、忙しそうに祭りの準備をする村人の目を盗み、気づけば奥の院に続く朱色の鳥居の前まで来ていた。
村人はくぐる事は愚か、近づくだけでも禁忌とされるこの鳥居の奥には、現人神とされる阿国神社の神主の一族が居ると父から聞いていた。
鳥居を挟んだ向こう側、そこはもう神の世界、そう考えると那慈迦はなんとも幻想的な気分になった。
突如、那慈迦は鳥居の向こうの人影に気づき茂みに飛び込んだ。距離もだいぶ離れていたし何より暗かったから良くは見えなかった。逆に向こうからも見えていないだろうと、そう自分に言い聞かせ那慈迦は家へ向かった。
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其れは或る暑さの残る日、祭りの前日
火の神を祀る阿国神社の一人娘として育てられた14歳の少女爾月(ニヅキ)は、明日行われる祭りで火の神として祭壇に立ち、五穀豊穣を祈る祈祷の唄をうたう役目を与えられていた。
爾月は昨年の祭りを思い出した。幼い頃から見ていた玖彌羅という男の見事な演舞が、昨年は、それは鬼気迫るものがあり、呆然としてしまった記憶が鮮やかに思い出された。
その後、年の暮れに玖彌羅が病で亡くなったという話を父親から聞き、あの時の演舞は死期を悟っている者特有の激しさであったのであろうと納得した。
日暮れ頃、爾月は神具殿に納められている仮面を取りに来ていた。樫の木を削り出して作るその仮面は無論、神として振舞う為の仮面だが、それ以上に爾月の不安な表情を群集から隠す事が出来る。
仮面を取り、神具殿を後にしようとした時、爾月の足元に何かがあるのに気づく、古い書の束であり、「玖彌羅」という署名がある所をみると、これは玖彌羅からの何らかの手紙であることが用意に想像できた。
死者の残した手紙を見るなどほめられた事ではないが、爾月は好奇心に勝てず、いくつかの書を開いてみた。
それは、神主、すなわち爾月の父に向けての嘆願書のような物で、神職に戻りたいといった内容であった。
日付を追い、最後の日付は昨年の祭りの日になっていた。そこには自分は病に侵されている為、火の神の舞を自分が踊れるのは最後になるであろう、という内容と「那慈迦」という名前がでて来ていた。
「那慈迦様は何も知らず、嘘の世界で生きております、ならばどうか、火の神よ、どうか那慈迦様がせめて、演舞を奉げることをお許し下さい。」
そんな内容が書き綴られていた。
爾月は何のことかわからなかず、ただ玖彌羅が最期の時に懇願した那慈迦様と呼ばれる人物についてぼんやりと考え歩いていた。
奥の院の入り口である鳥居の近くまで来たとき、ふと見ると、鳥居の向こう側に人影があるのが見えた。村人も好んで近づかない場所に珍しいなと思い、目をこらしてみてみて爾月は驚いた。
そこには自分と瓜二つ、まるで鏡写しの姿をした少女が居たからだ。
「那慈迦・・・・・・?」
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爾月は境内に戻り、奉納物の受け取りをしている祈祷師の老婆に問いかけた。
「那慈迦とは一体誰?」
14年前、阿国神社に双子の女の子が生まれた。祈祷師達は双子は片方は神、片方は悪魔の子として、凶事の前兆として片方を殺すべきだと忠告した。しかし双子の両親である当時の神主の息子夫妻はそれがどうしても出来ず、村八分にされた侠漢、玖彌羅に預け、神社に近づけぬよう育て上げれば神職につかせるという条件の取引を交わした。
その結果、神の子が爾月、侠漢の子が那慈迦だと。
先ほどその那慈迦がここに来ており、明日火の神の舞を奉納すると。
爾月は困惑した。
翌日、祭りの当日
村の男集の太鼓の音を浴び、那慈迦は火の神の舞を見事に奉納していた。その表情は心から楽しそうで、そして美しかった。
仮面で顔を隠し、その舞を見ている爾月は、祈祷の唄を歌った。
その見事な歌声に村人達は聞き惚れた。
それが役目なのだと、爾月は自分に言い聞かせた。
出来ることならこの場でこの仮面を脱ぎさり、那慈迦と自分が姉妹だと言いたい。しかし、それをすれば村人は困惑するだろう、那慈迦は悪魔といわれ殺されてしまうかもしれない。
この場所、この時間という舞台では、これ以上近づくことは出来ない。
爾月は唄った。火の神という存在が本当にあるのならば、
この小さく秘めた願いを叶えてと
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火の女神
オリジナル楽曲【火の女神】のためのショートストーリー。
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