第十章
どの位の時間、彼に手を握られていたかは覚えていない。
数分だったかもしれないし、数時間だったかもしれない。
思う存分泣いた彼は「ありがとう」と私の手を離した。
その時に私はまた、「私は利用されているのかもしれない」とふと思い
彼に「私はあなたを愛していたよ」とだけ伝え、その日彼には帰って貰う事にしたのだ。
人を傷付ける事が出来なかった。只、それだけの事。
私は次の日、新しい部屋を探しに出ていた。
彼から離れなければ私の心はボロボロになってしまう、そう昨夜思ったのである。
事実、リスカをまたしてしまっていた。
彼に家を知られてしまった以上、私は咄嗟に「逃げなければ」そう思ったから。
彼から連絡が来る前に、早くここを立ち去らなければ。そう、感じたのだ。
私は早急に家を決め、引っ越す事にしたのである。
彼からの連絡は来ていたが、私は恐怖心で何も返せずにいた。
連絡には決まって「また、会いに行っても良いかな?」そういった内容が含まれていた。
返事が出来ないまま、2週間が過ぎようとしていた。
私はその間に引っ越しをし、荷解きをしていた。
彼には、「もう、会えないよ、ごめん」と返し、音信不通となった。
それから、私はもう2度と会う事のない彼に思いを馳せる事はなくなった。
私はやっと彼に「さよなら」を言う事が出来たのだ。
私にとっては一生涯のたった3ヶ月程の「愛」に。
「さようなら」
月と赤い糸
彼と会う事を決め、顔を見て話す間に彼に対して色んな感情を抱きながら、
「恐怖心」を抱いた主人公は…。
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