aty ryuir.
彼女は唯涙する
手紙が一通。わたしの前に置かれていた。それは国外から届いたもので、東の国から届いた。
家来たちは部屋の外へ出している。つまりは、わたし1人という事。ゆっくりと、封を開ける。本当は、そんな動作すら惜しい。だが、意思に反して腕はのろのろとしか動かないのだ。腹立たしいことこの上ない。
「……………………。」
だが、それはこの結果がわかっていたから、なのだろうか。
否定。だった。
断られた。
歌姫を、助けるための、頼みを。
「……我々には、どうしようもない。だと。」
最初にわたしが話したときは、一応病状などを伝えていた。その内容を聞いて、後日連絡を出すといっていたのだが……。
わかってはいた。原因も、処方のしようもない不治の病ときいて、手を出しだすような国ではないと。
彼女に、言われるでもなく。わかりきっていた。
それでも、ほとんど零の確率であったとしても。もしかしたら……。
「本当にどうしようもないかはわからないじゃないか…!」
説得するしかないのだ。頼み込んでる側として、こちらが弱いのははっきりしているのだから。
それに、1度目では……無い。最初に断られて、もう何度目だったか。
「何度でも。何度でもわたしは問うて見せるぞ……ッ!!」
だが、これ以上やっても価値は無いのではないだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。何度も断られて、あきらめた方がいいのでは。いや、あきらめたりなどしないが。
「絶対に…。絶対にあるはずなんだ…。」
治す方法が。ただ、それを教えようとしてないだけで。
間違った考えだと気付いていても、確信していても、とめられない。そうとでも思わないと、こちらが壊れそうだった。
「っく…。まだ、カードがなくなったわけじゃない。こちらにはまだ、切り札が……。残っているんだ。」
そろそろ、それを切らなければならなくなるのだと思う。
切るためには、準備が必要だ。あれをすれば、こちらも痛くない傷なんて負わないのだから。もっと、酷いもの。
確実なカードとするには、あの夫婦の協力が不可欠だ。
わたしが直接はいけないが、雪菫に行かせるとする。十分、その重要さは伝わるはずだ。」
aty ryuir.
彼女は唯涙する
next→雪菫の少女
或る詩謡い人形の記録 8 -賢帝の愛玩-
※この小説は青磁(即興電P)様の或る詩謡い人形の記録(http://tokusa.lix.jp/vocalo/menu.htm)を題材にした小説です。
ヤリタイホーダイ(http://blog.livedoor.jp/the_atogaki/)というブログでも同じものが公開されています。
こちらの方が多少公開が早いです。
始 http://piapro.jp/content/0ro2gtkntudm2ea8
前 http://piapro.jp/t/N7Uj
次 http://piapro.jp/t/RiI6
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