<Dear My Friends!第2期 第26話 ゾラ・キョウへの受け渡し>

(ヤマト国 オーエド地区 セントラル区 ニンギョーチョウ ギア整備工場“カガ”内 会議室)

 一通りの武器錬成が終わった後、テルは全員に、ある最後の仕上げの仕事があることを告げた。

テル:みな、なんとなくわかっていると思うが、この”マージの構成物質”の残り全部を使って、ルォを復活させる。半生命個体を錬成するためには、全部使わないと成分が足りないのでな。面倒がないように、最初に反対意見は聞いておく。なんでも言ってくれ

 テル以外の全員が、最初の予定だったとはいえ、改めて”さっきまで命を狙っていた敵の復活”という、ある意味”理不尽”なことを言葉で告げられると、考え直せざるを得なかった。

アペンド:う~ん、ルォは確かにかわいそうだったけど、アナタ、やっぱり復活させるの? なんか腑に落ちないんだけど…
学歩:いや、ルォはやはり復活させるべきだと思うでござる。自分の上官からだけでなくマージ本体からも、あんな扱いを受けたのだ、あれではあんまりでござる。漢としても、せめて”復讐”する機会くらい与えるべきでござるよ
レン:でもなぁ、2回も相手したし、強敵だったしなぁ…。ちゃんと復讐する方向に行ってくれればいいけど…
リン:私は復活させてあげていいと思う。きっと仲間になってくれるよ
レン:リンがそういうなら、俺は賛成でいいけど…

 相変わらずリンちゃんには甘々のレンくんでした。

ルカ姫:私は面白ければなんでもいいわ。復活させてむかつく上官連中、ギッタギタにしちゃえばいいと思うよ

 ルカ姫はこんな状況でも、相変わらずのノリですね…。

めぐみ:私は反対なんだけど、立場的に強く言えないから、みんなの総意に従うわ

 めぐみでクリプトン王国側の意見は、テル以外に一人を除いて終わりました。少々内輪で意見交換していた、UTAU側のメンバ-は意見がまとまったようでした。

ミズキ:私たち3人は賛成です。テイマー達の有力情報を持っている仲間は魅力的だわ

ルコ:我々4人も賛成です。理由はミズキ達と同じく、テイマー側の情報は一つでも欲しいからだ。ルォへの同情は多少はあるが、ここはドライな意見を通させてもらう

 そして、最後まで目を閉じて、黙って考え込んでいた人物の意見を聞く時間になったのでした。

テル:・・・・・・イア、気持ちは重々わかる。これからマージの構成成分で行うことは、キミを誕生させた錬成と、ほぼ同じだ。君の意見は正直、かなり大きなウェイトをしめる。その上で、君の意見を聞きたい

 そして、イアは目を開けて、ようやく口を開けたのでした。

イア:正直、複雑です。こういう経緯で体を再び与えるのは、正論ではいけないことだと思います。でも、ルォさんが上官からされたこと、マージから受けたこと、すべてを考えて、やはり復活させて、最低でも復讐はさせてあげた方がいいと思いました。その上で、私たちと行動を共にしてくれれば、それはより最良の展開だと思いますし、それを願っています

ルコ:だが、行動次第では、有事と判断して、我々やミズキ、それとおそらくアペンドさんも、攻撃して破壊する、それは頭に入れておいてください
アペンド:そう、私も攻撃魔法の準備はさせてもらうわ

 イアは深く頷きました。

イア:はい、それは仕方がないことですから…

 意見がまとまったので、テルは、これから行う錬成について、しばし説明することにしました。

***

テル:では、全員賛成ということで、これから行う、ルォ復活について説明させてもらう。まず最初に結論からいうと、体はあの”ルォ”オリジナルには戻せない。別人として復活することになる

テル以外全員:え!?

 これまでの展開から考えても、かなり意外な結論が出てきたので、全員、テルに注目してしまった。

テル:まず、復活の行程はこうだ。1つめ。このマージの組成物に入っている、体ごと取り込まれた別の人物の組成物を錬成で再構成して1つの肉体を作る。2つめ。その肉体にルォの魂を定着させ、残り組成物全部を使って、起動のために必要なエネルギーを与える。最後にイアの時と同じように、私が語りかけて、目覚めさせる

イア:あ、あの、このマージの組成物の中に、そんな”他の人物”なんているんですか?

 テルは少し気持ちを落ち着かせた後、はっきりとこういった。

テル:いる。名前は、『ゾラ・キョウ』、というらしい。マージに生きたまま、飲み込まれて組成物の1つにされたらしい。飲み込まれたショックで死亡してしまったので、成仏して魂は組成物から消えてなくなっているが肉体の構成情報はしっかり残っている。これと正反対なのがルォだ。肉体は食い破られたので構成情報は残っていないのだが、よほど怨恨が強かったのだろう。魂はしっかり組成物の中にそのまま残っている。おそらく、今、この光景を組成物の中で、意識として感じ取っているだろう

アペンド:そ、そんな残酷なことを・・・・マージはやってきたっていうの!?

 テルはゆっくり頷いた。

テル:正直信じられないことだが、ルォの上官達は、そういうことをマージの機能として取り付けたのだろうな。まぁ、そのおかげで、ルォはこの『ゾラ・キョウ』として、復活できるわけだが…

 イアは青ざめていたが、首をぶんぶん振って気を取り直し、テルに告げた。

イア:これ以上聞いていると、気が変になりそうです。さっさと復活させてあげてください
テル:その方がいいようだな。では、錬成に取りかかる

 こういうことに慣れているテルがいてくれたのは、まさに好条件だった。アペンドではとても正気を保っていられないだろう。

***

 テル以外は、攻撃準備を整えた上で、部屋の隅に避難していた。そして、テルは先ほどから使っている錬成陣が描かれているテーブルの上に浮かんでいる『マージの組成物』に向かって、先ほどできあがったばかりの新調した”錬成陣が描かれた白い手袋”を装着し、両手のひらを組成物に向け、錬成命令を唱え始めた。

テル:我、汝に命令する。汝より、肉体構成成分『ゾラ・キョウ』を分離し、”ゾラ・キョウの器”を構成せよ!

 すると、テーブルの上の錬成陣が回転し始め、浮いているマージの組成物が輝きだし、そして、組成物から人型の一人の”少年の器”が分離してきて、そして、軽くなったマージの組成物が、より上に移動して、その下に分離した『少年』が頭を垂れたまま、輝いて浮いていたのでした。

リン:こ、これが、ゾラ・キョウ、って人なの?
レン:そういうことになるけど、この男の子、なんでマージにそのまま取り込まれたのかな?
アペンド:それは・・・・これからルォに聞いてみることで、わかると思うけど…

 さらに錬成は続いたのでした。

テル:では、次に、マージの組成物、汝に命令する。ルォの魂を分離させ、そのままこの『器』に定着させなさい!

 すると、少年の上に浮いているマージの組成物から、霧状のモヤモヤした気体が分離し、そしてそのまま少年の頭部の後方から頭部に侵入し、そして、すべて頭部に吸い込まれた。どうやらこれが、『魂の定着』、なのだろう。

テル:よし! では残りのマージの組成物、すべてに命令する! この新たな人物『ゾラ・キョウ』の動力エネルギーに変化し、その物理存在の終焉を迎えよ!

 これまでの錬成命令の中で最も強い口調で唱えたテルの声に呼応し、マージの組成物は、”赤い光”、にすべて変化し、新たな人物”ゾラ・キョウ”の周りを取り囲み、そして体に吸い込まれ、マージの組成物はすべて、ゾラ・キョウ、という存在に変わり、消滅したのでした。

***

イグゾウ:こ・・・・・こんな罰当たりなことで・・・人間が作れちまうなんて・・・・。我々、機械屋の常識なんて、一つも通用しないぞ・・・・
ルコ:すまんな、イグゾウさん、この人達のやることは、我々の想像を超えたことばかりなんだ。私はなんかもう慣れてしまったがな

 テルはそんな会話に向かって、口に人差し指をかざして、制止した。

テル:ちょい黙って! 最後の行程が残っている。これから私がこの”ゾラ・キョウ”に、起動の命令をする
ルコ:す、すまん

 テルは、左手でゾラ・キョウを指さし、そしてさらに強い口調で、最後の”起動命令”を唱えた!

テル:汝、ルォの新たな器として、新たな道を歩むが良い! 目覚めよ!!!!!

ゾラ・キョウ:・・・・・・・・・・(コクッ)

 その声に呼応し、ゾラ・キョウは目をつむったまま頷き、そして、テーブルの上にしっかりと立つと、ゆっくりと目を開けた。

ゾラ・キョウ:・・・・・・・・・ふぅ・・・・・・・・

 ゾラ・キョウは、一呼吸ついた。アペンド達はできるだけ目立たないように、準備していた武器を構えていた。しかし、テルは無視して、優しく語りかけた。

テル:どうだ? ルォ、新しい体の具合は?

ゾラ・キョウ:・・・・・悪くない。なかなかポテンシャルの高い肉体だ。マージの野郎がそのまま壊さずに取り込んだ理由、なんとなくわかるぞ

テル:その答えからすると、どうやら”我々の敵”には、ならないようだな。で、どっちの名前で統一するか? さっきはルォにしたが…

ゾラ・キョウ(以降、キョウ):・・・・そうだな、ルォも悪くないが、前の名前は捨てることにする。この肉体に敬意を表し、『キョウ』、でいくことにする。いいか?

テル:わかった、キョウ。コンゴトモヨロシク。他のみなも、新しい名前で呼んであげてくれ

 すると、他のメンツも一同に、キョウに挨拶した。

イア:無事誕生してくれて安心したわ。キョウ君、これからもヨロシクね?
アペンド:キョウ・・・くん? これからヨロシクね
レン:キョウ、ヨロシク頼むぜ!
リン:キョウさん、よろしくね?
学歩:キョウ殿、ヨロシク頼むでござるよ?
めぐみ:キョ・・・キョウさん? お手柔らかに・・・・
ルカ姫:なんか、格好いいんだけど・・・キョウ、ヨロシク!

イグゾウ:キョウ君、ヨロシク頼む。というか、機械屋として、その体の構造、調べてみt・・・いや、なんでもない

ミズキ:これからの活躍、楽しみにしているわよ? キョウ?
ゆうま:キョウ、わかっているとおもうけど、テイマーの情報、頼むよ?
りおん:これから、アチシがバリバリ鍛えるのだ! キョウ!

ルコ:すばらしい戦力だ!キョウ! 活躍、楽しみにしているぞ!
デフォ子:どんな体の構造、してるんだろ・・・・キョウ、興味ある・・・・なんちゃって
モモ:デフォ子ェ・・・・・・
ユフ:・・・・プッ・・クフフ・・・

 どうやらユフだけはツボったようだった。

キョウ:おぅ! ルォ改め、キョウ様が仲間についたんだ! 泥船に乗ったつもりで、安心してくれや!

イア:だめじゃないの・・・・それ・・・・・

 こうして、イア達に新たな仲間が加わったのでした。

(続く)

CAST

イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI

ヤマト国からの旅人三人組
瑞樹(ミズキ):VY1
勇馬(ゆうま):VY2
兎眠りおん(りおん):兎眠りおん

ミゥ:Mew

欲音ルコ(ルコ):欲音ルコ

唄音ウタ(デフォ子):唄音ウタ
桃音モモ(モモ):桃音モモ
雪歌ユフ(ユフ):雪歌ユフ

義 井具蔵(ヨシ イグゾウ)(イグゾウ):某演歌歌手

ゾラ・キョウ(キョウ)=生まれ変わったルォ:ZOLA PROJECT (KYO)

(ルォ:オリジナル男性中華ボカロ(オリジナルボカロになります))

チンシャン:某女性中華ボカロ
マカ:某少年中華ボカロ
ティエンイ:某女性中華ボカロ(ルォの姉(こちらが本家“ルォ・ティエンイ”で、女性中華ボカロになります))

その他:エキストラの皆さん

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Dear My Friends!第2期 第26話 ゾラ・キョウへの受け渡し

☆オリジナル作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の第26話です。

☆今回で、マージ組成物編は終わりです。まぁ、なんというか、まぁ、あのルォだからね?

***

私がここに投稿したボカロ小説のシリーズ目次の第1回目です。第1作目の“きのこ研究所”~第8作目の“部室棟”+番外編1作目です。
作品目次(2009/12/25時点):http://piapro.jp/t/5Qsh

同じく、目次の第2回目です。第9作目“鏡音伝”~第15作目“ルカの受難”の途中までです。
作品目次(2010年1月6日~2012年2月7日):http://piapro.jp/t/9GY1

更に、完結した『Dear My Friends! ルカの受難』のみの目次も作りました。
作品目次(Dear My Friends! ルカの受難):http://piapro.jp/t/qj6A

閲覧数:233

投稿日:2014/01/29 21:47:51

文字数:5,012文字

カテゴリ:小説

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