私は、地底探検隊の一員だ。
 ……が、他にメンバーはいない。
 地下……五十二キロというとてつもない地下空洞で孤立してしまった私だが、頭を打ってしまったらしくここ数時間の記憶がなかった。

「……どうしようかな」

 ……奥の手だ。
 反重力発生装置で、帰るとしよう。






≪地底人が見せた抜群の生活感【二次創作】≫





 そこに現れたのは、

「あーいいお風呂だった、やっぱり風呂上がりはコーヒー牛乳だぜ」

 頭にドリルをつけた地底人がそこにはいた。
 なんだよあいつら……帰ったらリーダーに報告しよう。

「おっ、あんなところにいいタオルがあるじゃねえか」
「……へ?」

 そう言ってその地底人は装置を奪い取った。待てよ! 私が帰れなくなるだろーが!! なんでタオル代わりに使うし!! ってかそれたぶんあまり水吸わないと思うんですけど!?

「いやーありがとさん。これあげるよ」
「え、は、どうも……え?」

 渡されたのは……ハンガーだった。てか、よくその手で持てるよね。その手ドリルでしょ?

 ぐるるるる……

 うにゅ?
 嫌な予感しかしないだけど。
 ……ってまてよ! なんでそこに犬がいるんだよ! まさか五十二キロ掘ってきたの?! 骨に対する執着心半端ないんですけど!!

 わうん!

 え、まさか……狙ってる?

 わおおおおおん!!

 ちょ、待てやあああ!! こいつ一瞬二足歩行しよったで!! なんでやねん!! 進化退化放射線源でも使ったの!? ワンニャン時空伝なの?!
 まあ、そんなわけで犬から首輪代わりにハンガーを奪われてしまった。でもそれ金属だから首絞まっちゃうと思うよ? 強烈な襟みたいになっちゃうよ?

 わおん♪

 なんか犬は喜んだようで、ある物を差し出してくれた。
 ……ドリアン?!
 すっげえくさいやつじゃん!! なんで持ってんの?! しかも六個!!

「やあ、君、靴下をとってはくれんかね」
「へ?」
「ああ、いい靴下だ。もらっていくよ」

 待て、それドリアンだぞいいのか。

「ああ……いいはき心地だ。ありがとうよ」

 ほんとにいいのか。すごい臭うし、刺が靴を貫くけど!

「お礼だ。高枝バサミ。大事に使いたまえ」
「あ……どうも」
「おい」

 またかよ誰だ今度は……っては?! 幼稚園児がなんでここに?! 此処本当に地下五十二キロだよな?!

「ちょっと爪きりたいからそれちょーだい」
「は?」
「いやあ、ちょうど爪伸びててさ」

 いいのか、指持ってかれるぞいいのか?

「代わりにあげるよ。イモ煮るための」
「土鍋?」

 ……なんだか物々交換みたいだなあ。
 でもこれ、よく考えると奪還?
 もしかして、これどんどんやっていけば……あの装置取り返せるかも?

「井戸をほっていたらこんな空間にたどり着くとは!」
「エコロジストにも程があるわい」
「ちょっとスコップぶっ壊れたから土鍋もらってもいいかい?」
「へ?」

 ありえない速さで土鍋が奪われていった。いったいこんどはなにをくれるというんだ……。というか普通に桶代わりに使えよ……。

「いやあ、掘り心地がいいねえ。かわりにこいつをやろう」
「……かぼちゃ?」

 しかも顔がある。ぶっちゃけきもい。

「……って、なんじゃこりゃ、剣?」

 不意に上を見ると――剣先が浮かんでいた。まさか五十二キロも刺してたのかエクスカリバーって。そりゃ抜けないじゃん。どんな勇者なら引き抜けるんだよこれ。
 もうちょい近づいてみてみようかな……ってえ?






 気付くと私はモグラに躓いていた。
 それは――装置と引き換えに貰った、残ったカボチャなのに。
 エクスカリバーにまっぷたつにされていた。
 その、かぼちゃの横顔は笑ってるような気がした。まさかこっからループとかしませんよね?








 地底の世界はすごいけど、恐ろしい。
 ……私、地上に帰れるのかな?


 ……フッフッフ、こうなれば。
 奪え返すしかあるまい!!











-Fight 1-

「また会ったな!」
「おお君か……使いやすいねこの土鍋は」

 エコロジストにはこれだ!
 かぼちゃを丁寧に裏ごしして井戸水をかぼちゃスープにしてやる! 夏はレストランにいかなくても冷たいパンプキンスープの飲み放題だ! よかったな!
 そして――土鍋、奪還!!









-Fight 2-

「また会ったな!」
「あ、あのはさみのおかげで爪切れたよ」

 幼稚園児にはこれだ!
 土鍋をさっきエコロジストが使ってたようにスコップ代わりにして――お前が五十二キロ分掘った芋を埋めてやる! よかったな! また掘れるぞ!
 こうして――高枝バサミ、奪還!!








-Fight 3-

「また会ったな!」
「おお、この靴下くせになるねえ」

 足が長すぎるお前にはこれだ!
 高枝バサミをきれいに使って――めったにきれいに切れない小指の爪を綺麗に切ってやる! よかったな! 高枝バサミに感謝しろ!
 こうして――ドリアン(うち二個はあいつが使ったので四個)、奪還!!








-Fight 4-

「また会ったな!」

 わおーん。

 犬、てめえにはこれだ!
 ドリアンを靴下代わりにして――てめえの人間の何倍もあるという臭細胞を殲滅したる! もうこんな掘らなくていいんだぞ! 感謝しろ!
 こうして――ハンガー、奪還!!





-Fight 5-

「また会ったな!」
「やあ、あげたハンガーの様子はどうだい?」

 地底人にはこうだ!
 ハンガーを首輪代わりにして――地上で貴重なサンプルとして大事に飼育してやる! よかったな! 日の目を見られるんだぞ! 感謝しろ!
 こうして――反重力発生装置、奪還!!











「……ふう、こんなもんでいいかな」

 ひとまず私は持っていたタオルで装置を手入れしていた。まったく水吸わないんだから、タオル代わりにするなよな……。
 どうやら、正常に動きそうだな。
 さて、地上に戻ろう。
 唯一の気がかりは、はぐれた隊員たちなんだけど……







-Fight 6-


 隊員たちはバーベキューを楽しんでいた。待て! 怪しげな茸焼いてるぞあいつ! 先に戻って肉焼いてて、しかもこの穴をゴミ箱代わりに使いやがって!

「……ごめん。ほんとごめんってば……」

 とりあえず地底での報告を済ませ、カボチャを切って焼いて食べながら、すっげーきゃっきゃうふうふしていた部下をつかまえて、




「てやああああああああああああああ!!」



 一本、背負い投げを決め込んで穴に突き落とした。

















……






 
 私は、地底探検隊の一員だ。
 ……が、他にメンバーはいない。
 地下……五十二キロというとてつもない地下空洞で孤立してしまった私だが、頭を打ってしまったらしくここ数時間の記憶がなかった。



End……?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

地底人が見せた抜群の生活感【二次創作】

書いてみました。

本家
タカハシヨウ(家の裏でマンボウが死んでるP)様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm18691732

閲覧数:353

投稿日:2012/08/23 20:52:12

文字数:2,931文字

カテゴリ:小説

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