1月2日 初風呂
「カイト、カイト。出掛けるぞ」
くわぁ、と大きな欠伸をしながら、マスターはぺたんこのリュックを片手に俺を呼んだ。
「構いませんけど、どこへ行くんです? マスター」
訊ねながら靴を履いて、鍵を手に待つマスターに従ってドアをくぐる。簡素な鍵をかちりと回して、ふらりと歩き出しながらマスターは答えた。
「銭湯にな」
「戦闘に?」
「違う戦わねぇ、風呂だ風呂っ! 公衆浴場!」
畳み掛けてくるマスターに、あぁそっち……と頷きかけて、その首を縦ではなく横に傾ける。
「お風呂? こんな早くからですか?」
思わず見上げる空には、まだ中天には遠い太陽の姿がある。朝というには微妙だけれど昼にも早い、そんな午前。
不思議に思って見つめるけれど、マスターの歩みは鈍らない。俺を促すように半分だけ振り返って、おう、とマスターが口の端を上げた。
「初風呂だ。でっかい風呂でのんびりしようじゃねぇか」
「………………ふわぁ」
初めての銭湯に、つい間の抜けた声が零れた。すごい、広い。
「ぼんやりしてっと足元滑るぞ、気ぃつけろよ」
「あ、はい」
マスターはどことなく面白がるような顔をしながら俺に銭湯の使い方を教え、俺は言われるままに軽く体を流してからマスターについて湯に入る。
「………………ほわぁ」
またもや零れてしまった気の抜けた声に、隣でマスターが遠慮なく噴き出した。
「なっなんですか、もう!」
「いや悪ぃ、……くくっ、そうだよな、お前は初めてだもんなぁ」
「そんな笑いながら言われてもフォローになってませんっ」
恥ずかしくて火照る顔を半分お湯に沈めながら、俺はマスターと距離を取る。早い時間のためか他のお客さんの姿は無くて、ひろびろとしたお風呂は俺とマスターの貸し切り状態だった。大きな湯船の端まで着くと、浴槽に腕を乗せてもたれかかってみる。……ゆったり。
「まぁそう拗ねるな。初風呂で初笑いたぁ、結構じゃねぇか」
こちらは背を預け我が物顔で足を伸ばしたマスターが、まだ治まりきらない笑いを滲ませながら宥めてくる。だから笑いながらじゃあ、と思ったけれど、楽しげなマスターの声もどこか緩んで、ゆらゆらと湯気を上げるお湯が心地良くて、まぁいいか、と俺も足を投げ出した。
「大きいお風呂、気持ち良いですね、マスター」
「そうだろう。陽の高いうちに入る風呂もオツなもんだ」
のんびりと話す声もゆぅらりと反響して、ここで歌ったら面白そうだな、なんて思ううちに、俺の頬もまた緩んでいたのだった。
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