蒼く輝く月の下には、質素で小さくってみすぼらしい、だけども不思議と足動くサーカスの小屋があるんだ。

やってきた人、口々に言うのは「美しい人だ」と。

テントには真っ赤垂れ幕があるんだ。
サーカスがあることを伝える唯一の目印なのさ。
その色と同じ色のドレスを着るのはこのサーカスの取締役の女の人だ。

「わがテントにようこそ!」

女性なのも不思議なくらいしっかりとした声で、だけどもその妖艶な体で、皆の視線は釘付けだ。
見とれているだけの観客もそろそろ席につかなきゃね。
もうサーカスは準備万端。
開始の合図を待つだけなんだから。

彼女が指をパチンと鳴らせば、サーカスが始まる?
ちょっと違うんだ。

さぁ、今から幕ができるよ。

どこからか蝶々が来たよ。
美しい紫色をしてるね。

舞台を飛び回り、その鱗粉が舞い降りる。
それがすべて落ちた時、それが幕開けだよ。
夢のショーの始まりさ。


始まるショーは動物たちが演じるのさ。
賢いサル、気まぐれネコ、他のいろんな動物の楽しいショーさ。


そろそろ前半も終わるかなぁ?
いやいやまだまだ前半の半分さ。

おっ、あの取締役が出てきたよ

歌っているね、美しい歌声がサーカス小屋の中響き渡っている。
「Hate figure’s princess.」
ふと、彼女には似付かないような言葉が聞こえたよ。

「僕のような姫はお好きかい?」

気付く人はいるんだろうかね?
一瞬の悲しげな表情に。
誰も気付くはず無いさ、すぐに普通の笑顔に戻ったから。
気付いているのはボクだけだ。


この、今までに見たどのショーよりも素晴らしいショーは、いったん休憩。
やっぱりみんな褒め称えるよ。
それほどの出来栄えだからね。

さぁ、後半だね。
彼女のドレスは黒になっていたよ。
「ボクのショーは楽しい?」

ねぇ、みんな驚いちゃうよ。
だって、さっきは、大人の美しさのある声だったのに、今、子供のような可愛らしい声だよ?
まだ、僕が出ていたほうが驚かなかったのにね。


さっきの人じゃないみたいでしょ?
でも、このサーカスには二人もいないんだよ。
だから、同じ人なんだ
でも、そんなことはおかしいって?
振舞いも、特にオーラって言うのかな、全部違うって?
同じなのはその人の体だけだって?
だったら同じでしょ。


信じられなくて、困惑する観客たちは置いといて。
謎だらけのまま、後半のスタート。


始めと同じ、指を鳴らしたよ。
どこからか、白いライオンが現れて咆哮した。
そしてそれと同時に、裏にいる動物たちも声を上げたよ。

そうして再開するとても素晴らしく、とても謎のあるショー。



どんな楽しいショーだって、終わりは絶対に来るんだ。


フィナーレには、もう一度彼女が出てきた。
そしてもう一度歌った。
同じ歌さ、でも違う曲にも聞こえるよ

魅惑する声だしね。

「嫌われ者の姫」

“Hate figure's princess”は“嫌われ者のお姫様”。
「ボクのようなお姫様は好き?」


観客に問いかけるよ。
でも、だぁれも口を開かない。
それはそうさ、だってこの状況を理解している人なんて僕以外いないんだから。

「じゃあ」と、彼女は話し出すよ。
「種明かしでもしようか?」
彼女は怪しく笑うんだ。

「そうさ僕らは二人で一つ。」
最初の時の声だ。
急に声を変えたら驚いちゃうよ。
ほら、みんなもっと戸惑うじゃない。

ちゃんと、説明しなきゃ。
ボクが説明しようか?

「“二種類の顔を持つ女”って言えばわかる?」

そういうこと、二重人格。
観客のみんなもわかってくれたみたい。


最初にでていたのが“僕”で。
途中でていたのが“ボク”。

最初にみんなにお話したのは“ボク”で。
途中からは“僕”だよ。


「嫌われている今は亡き姫さ」


僕らは追い出されたんだ。
ボクらみたいな姫は気味悪いってね。
お城から追い出され、国からも追い出され。
こーんな不安定なところにいるんだ。
逃げちゃったんだ。
死んだことにもされちゃったし。


そんなんだから、動物たちがいっぱいになった。
ボクらみたいなのだったから。
僕らみたいに追い出されたんだよ。
だから動物たちばかりサーカスにいるんだ。



ボクが言うよ。
「ボクらのショーはお気に召したかな?」
僕が言うよ。
「また見に来てね、ずっと待ってるから!!」


待ってるよ。


理想と現実。

その狭間にあるこのテントで。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

Hate figure's princess~嫌われ者のサーカス~

狂サマの歌詞に軽くツボった。
だから書いたんですけど、今更ながら、書く意味ねえなって思いました。
解説のほうで十分じゃね?
だから、書き方変えただけっぽいっす。
てか、わかりにくっ。
自分でもどっちがどっちだか?(←オイ)


で、こっから個人的なこと。
間違ってはないけど英語がすっきりしない気がする。

the) princess of wretch(嫌われ者の姫)とか
the) hated princess(嫌われている姫≒嫌われ者の姫)とか
the) princess of hated(嫌われた者の姫≒嫌われ者の姫)の方がすっきりする気がする。

でも、Hate figure's princessの方がリズムがいいと思う。

閲覧数:224

投稿日:2009/12/23 22:31:23

文字数:1,875文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました