プロットの中心となる素材です。

『初音ミクは警視庁の刑事である。
 ある女子高生失踪事件を担当している。
 まったく手掛かりが無く、捜査は難航している。
 そのような時、ミクの幼な馴染みの友達Aが
 バイト先の人間二人組に拉致されかけた。
 その友達Aの拉致未遂事件の性質や経緯から、
 ミクは新しいタイプの事件の始まりを感じた。』

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昨年、投稿したテキストです。
その時は、Aの出来事のプロットと、
ミクの出来事のプロットと、
2つに分けて投稿していました。

今回、Aの出来事のプロットは破棄しました。
何時か書き直そうと思います。

その破棄したAのプロットについて。
悪役の手口は、夏目漱石の「坊ちゃん」の
生徒の悪戯や赤シャツの悪行の手口を意識しました。
つまり「監視、詮索、暴露、中傷」です。
また悪役のイメージとしては、
映画「踊る大捜査線 THE MOVIE」に登場する
警視庁の吉田副総監を身代金目的で誘拐した
幼稚な少年グループや、仮想殺人サイトを開設していた
殺人マニアの日向真奈美を意識しました。

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初音ミクについての出来事のプロット。

1)初音ミクは大学卒業後、警視庁に入る。

2)安部公房の「燃えつきた地図」という小説がある。
  何度も読み返したこの小説が、初音ミクには
  家出や失踪を装った完全犯罪を予見しているように思える。

  「燃えつきた地図」の解説では、この小説を、
  『厳密な意味では探偵小説である』と説明している。
  
  一般的に探偵小説は、
  その登場人物のキャラクターに読者を惹きつける
  個性があり、
  また犯罪のトリックに現実性があって優れているとき、
  その小説は何時までも読み継がれるのだと、
  初音ミクは考える。

  『厳密な意味では探偵小説』である
  「燃えつきた地図」には、
  犯罪のトリックなどの描写は無いのだが、
  新たな深刻な犯罪を予見しているからこそ、
  現代日本文学有数の傑作になったのではないかと、
  初音ミクは考える。
 
3)初音ミクは女子高生B失踪事件を担当することになる。
 
4)初音ミク達警察関係者、女子高生Bの家庭を訪ねる。
  そしてBの近況を伺う。
  女子高生Bは快活で、友人から好かれ、
  悩みなど無かったとのことである。

5)女子高生Bの捜査が始まる。
  失踪当日の最後の目撃証言の状況、
  平日の通学帰宅通路、平日によく寄り道する場所と交通、
  休日によく行く場所と交通、
  それらでの目撃証言、それらでの交通監視カメラや
  防犯カメラ、
  Bの交友関係、Bの家族や親戚にトラブルは無かったか、
  Bの携帯の記録や銀行カードの記録、等など。
  しかし手掛かりは全く無い。

6)初音ミク、「燃えつきた地図」を読み返し、
  人間が忽然と消える事の意味を探ろうとする。

  僅か5日程の間で「消失」を連想させる人間が
  6人もいる。
  ぞっとする急なストーリー展開である。
  行方不明者の根室。
  根室の妻の弟(組長)は殺される。
  根室の部下の田代君は自殺する。
  探偵は(最後には探偵を辞め)精神に変調をきたす。
  探偵の同僚によって自殺に追い込まれた依頼者がいる。
  その探偵の同僚は精神病院に逆戻りする。

  探偵は根室の通常の生活範囲だけでなく、
  いくつかの裏社会周辺も調査する。
  それらは「組織、稼ぎ」という事と関連がある。
  燃料店の不正ブレンド油販売か水増し請求の可能性。
  珈琲店つばきの違法職業斡旋。
  根室の妻の弟のゆすりとマイクロバスでの稼ぎ。

  こういう設定にした作者の意図は?

7)初音ミクら警察関係者が捜査したのは、
  女子高生Bの生活範囲内のみである。
  つまり健全な一般市民の生活圏と同じ重なるところである。

  B、そして家族や親戚には裏社会の人間との関わりは無い。
  もしBの失踪が裏社会の人間が関わっているのなら、
  裏社会の人間が一方的にBに接近してきたのか?
  それはどのような裏社会の組織なのか?

  初音ミク達、再度、
  女子高生B、Bの家族や親戚の交友関係を中心に捜査する。
  しかし手掛かりは無い。

8)初音ミク、再度、
  「燃えつきた地図」を読み返し、
  人間が忽然と消える事の意味を探ろうとする。

  「燃えつきた地図」の暴力シーンは2回ある。
  いずれも「車」が重要な小道具である。
  また探偵が図書館で女子学生の弱みを握るシーンがある。
  ここでも「車」による演出がある。
  「誘拐」の手口のひとつを暗示するシーンでもある。

9)全く健康な生活をしていた女子高生Bが、
  自ら失踪したとは考えられない。
  何者かがBに接近し、何かを仕掛けた可能性が高い。

  女子高生Bを素手で連れ去るのは、
  当たりまえだが不可能である。
  初音ミク、「車」をキーワードに、
  捜査資料を精読する。
  しかし手掛かりは無い。

10)初音ミク、再度、
   「燃えつきた地図」を読み返し、
   人間が忽然と消える事の意味を探ろうとする。

   「誘拐」と「暴力」について。
   「燃えつきた地図」には暴力シーンは2回ある。
   2回目の暴力シーンの描写は1ページにも満たない。
   何らかの面白さは、無い。
   この2回目の暴力シーンでは探偵が被害にあう。

   早朝、
   探偵が根室を知る人がいるかどうか調査するため、
   珈琲店つばきに入ったとたん、
   先客は根室を「新しい客」か「新しい同業者」か
   何も確かめず、
   一言も声をかけず、
   ほとんど一瞬のうちに、
   探偵を襲い、
   叩きのめし、
   店の外に連れだし、
   外の車に荒々しく放り込む。
   誘拐馴れしてるのか?
   誰もそれを止めない。
   相当の玄人じみた手口。
   探偵は相手の顔すら確認不可。

   この2回目の暴力シーンでは、
   普通の人間では絶対に不可能な敏捷な暴力が
   描かれている。
   つばきに居たのは、職を求める普通の運転手では
   ないことの可能性を示す作者の描写である。
   主義や言葉、既成の裏社会の組織には
   落ち着くことのできない人間の群れか?
  
   一回目の暴力シーン、
   つまり河原での労務者の暴動騒ぎの描写に見える
   「悪魔の殺人儀式」めいた文章。
   この事と関連付けると、
   早朝のつばきで探偵に暴力で襲ったのは、
   人間の血と肉のなかでしか存在できない
   未知の邪悪な集団?

11)初音ミク、
   一人で女子高生Bの生活圏の道を歩き続ける。
   次第に街は闇に染まっていく。

   初音ミクの不安。 
   「女子高生Bは、
    防犯カメラ等が無い場所で、
    偶然の人通りの途切れた一瞬のときに、
    神業のような素早さで、
    何者かに拐われたのか?」 

12)初音ミク、
   「燃えつきた地図」の最終場面を読み返す。

   主人公の元探偵がトラックに轢かれて
   紙のように薄くなった
   猫の死骸に名前をつける場面がある。
   これは何のメタファーなのか?
   猫や犬は人間によく懐く動物である。
   人間の伴侶になりうる動物である。
   そこから猫や犬は「無垢な命」の象徴と
   言えるかもしれない。
   例えば「明暗」の解説(岩波文庫)には、
   そのような記述があることを、初音ミクは知っている。

   またそのような無垢な命が破壊される例を、
   初音ミクはいくつか知っている。
   例えば「カラマーゾフの兄弟」では、
   スメルジャコフは殺人を犯す前段階として、
   猫や犬を虐待する。
   例えば三島由紀夫の「午後の曳航」では、
   少年たちが子猫を殺し解剖する場面が
   生々しく描かれている。

   これらのことを考慮すると、
   トラックに轢かれて紙のように薄くなった猫の死骸は、
   考えられる限りの残虐な暴力で破壊された無垢な命と体の
   暗喩と言えるかもしれない。
   「燃えつきた地図」の解釈のひとつとして、
   そのように破壊されたかもしれない行方不明者
   根室の暗喩かもしれない。

13)また初音ミクは、
   これらの物語の描写と共通するところのある
   現実に起こった殺人事件、誘拐事件を顧みる。

14)初音ミクは現在担当している女子高生B失踪事件を思う。
   これまでの捜査の経緯を顧みる。
   初音ミクの深い悲しみ。

15)警視庁内のある部屋にて。
   初音ミク、Aを取り調べた先輩の刑事から、
   Aの事件を聞く。
   Aを拉致しようとしたワル1号2号には、
   女子高生Bとの接点は、いまのところ全く認められない。
   しかしこれまでにない新たな形の誘拐事件の
   可能性を意識する。

16)Aの話を元に、ミクたちは未知の犯罪組織Xについて、
   仮説を立てる。

   ・宗教、歴史、哲学、法律に詳しい
    一部の知性の高い精鋭集団と、
    平均的な知能を持つ多数の実行メンバーから
    組織Xは構成されるかもしれないこと。
   ・ワル3号4号の中傷とその後の自作自演から、
    メンバーの連帯感が極めて強いこと。
   ・ワル3号4号の幼稚な手口から、
    世間知らずの者が多く、また組織の悪行の
    マニュアルどおりに動いている可能性が高いこと。
   ・Aがインターネットに匿名で発表している文章が、
    組織の都合悪い所に触れているかもしれないこと。
   ・Aのもとにワルの1号2号を差し向けた理由は2つ
    考えられる。ひとつは、単にAの監視と観察である。
    もうひとつは実行メンバーの力量を見るためである
    (これは常識の無い無様さを示しただけである)。
   ・組織Xがワル1号2号を助けなかった理由は、
    2つ考えられる。ひとつは、
    他のメンバーが多数動けば、
    組織Xが暴かれる可能性が増えるからである。
    もうひとつは、Aは単独か仲間がいるのか、
    それを最後の最後まで見届けるためである。

   ワル1号2号は組織Xの『捨て駒』の可能性がある。
    
   もしも組織Xの全貌が解明されれば、
   女子高生B失踪事件の解決の手掛かりに、
   極めて僅かなかもしれないが、
   繋がるかもしれない。

   (未完、次のバージョンへ続く)
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ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

プロット「失踪、仮題、初音ミクの出来事、未完」

失踪(仮題、初音ミクの出来事)

閲覧数:258

投稿日:2015/12/28 02:23:00

文字数:4,492文字

カテゴリ:その他

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